第三十一話 魔法?の名前かなんかか?
「はい、いいよー!」
「お邪魔します。」
部屋に特に変わった様子はなかったと思う。
今泉さんの家のいい匂いがしたくらい。
友達の家っていい匂いに感じる気がする。
それより僕は気になったことがあった。
「変なこと聞いてもいい?」
「ん?何?」
「んーと、お風呂上がりだよね?」
「うん、そうだけど」
「着替えってそれで完成?」
僕はかなり遠回しめに質問をした。
それは今泉さんの髪がびちょびちょで白い大きめのTシャツに素足というかパンツというか、中途半端な格好をしていた。僕はてっきり短パンを履いていると思っていたから、一応遠回しに聞いたのだが反応を見るとどうやらそうゆうことらしい。
「ちょっと、後ろ向いて」
「はい」
顔を真っ赤にしてというか元々風呂上がりで赤かったが、僕に後ろを向いて目を閉じるように言ってゴソゴソし出した。
「はい、もう大丈夫!」
「はい」
僕はドキドキというか今泉さんママが入ってこないかの方が不安だった。
「じゃ、とっと終わらせちゃお!」
「うん」
今泉さんは早く話題を進めたいからか、すぐに僕を座らせ問題集を開いた。
机は四つ足の折り畳めるタイプで2人が限界くらいのサイズだ。
宿題を始めると思いきや、髪を乾かすと言って部屋を出ていってしまった。
僕は女の子の部屋で1人残されているこの状況がシュールだなと思っていた。
ガチャ
ドアが開き入ってきたのは今泉さんママだった。飲み物を持ってきてくれた。
「はいこれ、お茶ね。」
「ありがとうございます!」
「はーい、ごゆっくりー。ご飯は19時すぎくらいかな」
今は16時半。夕飯までに終わるかな?
その後今泉さんが戻ってきて僕たちはサクサクと進めた。
僕は後ろから、今泉さんは前から進めてわからないところを一緒に解いていった。
幸い今泉さんは1/4くらい元々終わっていたため思いの外早く終わった。
「終わったー」
今泉さんが天井を見上げるように仰向けになり脱力した。
「一気に集中してやったから疲れたわ」
「それなー」
「今何時?」
「52分」
「もう夕飯か」
「そうだね、お腹空いた。ご飯まで休憩しよ」
「うん」
僕たちはぼんやりと天井を見つめていた。
頭を使いすぎて何も考えたくないモードだ。
しばらく、その状態で固まっているとドアがゆっくり開いた。
カッチャン。
ドアの隙間から今泉さんの弟くんがジーと僕を見ている。
何か言いたげな顔で見ていた。
そういう動物に見えてきた。
僕はなんとなく弟くんに向かって仰向けのまま手を伸ばしてみた。
すると弟は小さな声で
「ごはん」
と言って去っていった。
夕飯を伝えにきてくれたんだと思う。どこか妖精っぽさがあって癖になる。
僕は半分寝ようとしていた今泉さんを起こして、リビングへ向かった。
「いただきます!」
食卓には美味しそうな料理がずらりと並んでいた。
この日の献立は塩レモンパスタ、マルゲリータ、クワトロフォルマッジだった。
今泉さんママはワインを片手に食事を楽しんでいた。
そう、今泉さんママは料理がうまい。
こだわりが強くなんでも自分で作ってしまう人だ。
小学校の時遊びに来た時も、本格派中華料理や韓国料理、エスニック料理ともう料理マスターなのだ。
「どう、あきくん美味しい?」
「はい、いつも本当に美味しいです!うちではみた事ない料理ばっかりで」
「ありがと、アキくん」
今泉さんママは僕のことを名前で呼ぶ数少ないうちの1人だ。
「やっぱ、クワトロフォルマッジだよね〜」
今泉さんがハチミツをかけながらニコニコしていた。
好物なんだろう。
「今泉さん、これ何ですか?」
「クワトロフォルマッジ?これは4種類くらいのチーズのピザだよ!これが一番うまい」
自慢げに口に頬張る今泉さんは無邪気だった。
「梵食べたことないの?」
「うん、ない」
「ゴルゴンゾーラの癖が強いけど多分気にいると思う」
僕は何を言っているかわからなかった。魔法?の名前かなんかか?
「あれーゆっちゃん、もうあきくんって呼んでいないの?」
「え?だって中学生だし?」
「いいじゃんはあきくんはあきくん何だし」
「まあそうだけど」
中学に入って苗字が定着していたけど、
僕も昔はゆっちゃんと呼んでいたように、今泉さんもあきくんと呼んでいた。
「ねえ〜あきくん。あきくんもその方がいいよね?」
「え、僕はど」
「ママは黙ってて」
「んもう。恥ずかしがっちゃって」
「全然違うから」
なんか今泉さん親子の会話を見ていると昔に戻った気分になった。
妙に居心地のいいこの家の人たちが僕は好きなんだな。
「確かに僕もゆっちゃんって呼びたいです!」
僕は2人の会話に切り込むように言ってみた。
少し今泉さんをからかってみようかなって。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




