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賢者の石の副作用

作者: Sillywalker

かなりお下品なので、下ネタが苦手な方はご遠慮ください。

なお、下品ですが猥褻は一切ありません。

その1


剣と魔法が支配し、魔物が闊歩する世界。


あるパーティーが、ある村に迫る魔物の群れと村近郊の森で戦っていた。


配下の魔物はあらかた倒し、残るは魔物を率いていた魔将軍を残すのみとなっていた。


パーティーは四人構成。勇者、戦士、僧侶、魔法使いである。いずれも若い。


僧侶と魔法使いは少女であった。


美貌で儚げな印象すら与える彼女たちであったが、その魔力は国内一・二を争うほど強大なものだった。


とはいえこのような年若い者たちを危険な魔物との戦いに駆り出さざるを得ない、というあたりに王国の苦渋を感じざるを得ない。


魔将軍は強かった。


これまで数多くの魔物を倒し、連戦で魔将軍に挑んでいた勇者パーティーの僧侶と魔法使いは、MPが尽きかけていた。


勇者が叫ぶ。


「エリス! アリシア! マジックポーションを使うんだ!」


エリスは魔法使いの、アリシアは僧侶の名前である。


エリスは大きな帽子がトレードマークの小柄な眼鏡の美少女、アリシアは豊かなバストを持つ金髪碧眼の美少女だ。


勇者の言葉に、二人はしばしためらいを見せる。


だが、やがて何かを決心して互いの目を見つめ合い、肩から下げたバッグの中から小さなガラス瓶を取り出し、先端を割って中身を飲んだ。


MPを回復する秘薬、マジックポーションである。


この秘薬は飲んだものの循環系を活性化させ、「マナ」と呼ばれる魔力の元を増大させる。


体内にマナをゆきわたらせることにより、MPを回復するのだ。


僧侶が全員に治癒魔法をかけ、魔法使いが火魔法最上位の火炎爆破の呪文を唱える。


魔将軍は絶叫しながら消し炭となった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


戦い終わって、勇者パーティーはその場に膝をつき、粗い息を吐いた。


僧侶と魔法使いに至っては、顔色を蒼白にしている。


「だ、ダメ、もう我慢できないわ!」


二人はそう叫ぶと、がさがさと茂みをかき分けて違う方向に進んでいった。


ここでマジックポーションの副作用について語らねばなるまい。


先に述べたように、マジックポーションは体内の循環系を活性化する。それも凄まじい勢いでだ。


その結果どうなるか?


マジックポーションを使った術者は、しばらく後に激しい尿意に襲われるのである。


美少女ふたりが茂みの奥へと消えたのは、「お花摘み」をするためだった。


勇者と戦士、二人の少年は遠くから彼女たちが哀願する声を聞いた。


「お、音聞かないでー!」


二人は目を閉じ、耳を塞いだ。



その2



数日後。


勇者パーティーは魔界四天王の一人とやはり森の中で戦っていた。


四天王を名乗るだけあってこの魔物の力は強く、勇者と戦士はいくつもの傷を負わされた。


「だめ、回復魔法が追いつかない。ヒールポーションを使って!」


僧侶が悲痛な叫びをあげる。


それを聞いた勇者と戦士は硬直し、互いの目を見つめ合う。


だがそれも一瞬のことで、二人は何かを決意した表情となり、肩から下げたバッグからヒールポーションを取り出して瓶を割り、中身を体内に流し込んだ。


みるみる塞がる傷。


勇気百倍となった勇者・戦士の攻撃で、四天王は倒れた。


四天王を倒したことを確認した勇者と戦士は、脱兎の勢いで茂みをかき分けてそれぞれ別方向に消えていった。


ここでヒールポーションの副作用について語らねばなるまい。


ヒールポーションは、飲んだ者の代謝機能を活性化する。それによって傷を瞬時に治すことができるのだ。


だがあまりにも激しく不自然に代謝機能を向上させられた結果、服用者はしばらくすると強烈な便意に襲われるのである。


僧侶と魔法使いは、固く目を閉じがっちりと耳を塞いでいた。



その3



勇者・戦士・僧侶・魔法使いはその他の四天王を倒し、ついに魔王城へと至った。


もちろん一人を倒すごとに茂みに駆け込んでいたのであるが。


「よくぞ来た身の程知らずの勇者どもよ」


自信たっぷりに魔王が言う。そしてその言に違わず魔王は強かった。


勇者と戦士、魔法使いがダメージを与えても、瞬時に回復してしまうのだ。


戦いは持久戦になり、勇者パーティーはHPもMPも残り少ない状態になった。


「し、仕方がない! エリクサーを使うんだ!」


勇者がそう叫ぶ。他の三人は互いの目を見つめ合い、何かを決心したような表情となって肩から下げたカバンから小瓶を取り出し、中の液体を飲んだ。


HPとMPが全回復する。


しかし賢明な読者諸姉諸兄はもうお気づきであろう。別名賢者の石とも呼ばれる万能の治療薬エリクサーにも、ある意味致命的な副作用があったのだ。


エリクサーは最上位のマジックポーションとヒールポーションの機能を混ぜ合わせたもので、服用者の循環機能と代謝機能を最高レベルまで引き上げる。もちろん不自然に。


その結果……服用者はまもなく強烈な尿意と便意の双方に襲われることになるのだ。


エリクサーを使って全回復したにも関わらず、魔王はすぐには倒れてくれない。


やがて魔王が倒れていないのに勇者パーティーの下半身がえらいことになり始めた。


「くそっ! これだけ攻撃しているのにまだ倒れない! どうして倒れないんだ! 倒れてくれ! 頼むっ!」


勇者の絶叫に、魔王が答える。


「それはこっちのセリフだ馬鹿者どもめ! 早く全滅してわしを厠に行かせてくれんか! 頼む!」


魔王の額には、脂汗がにじんでいた。


「お、お前の超回復能力も、エリクサーを使ったからだったのか!」


戦いはなおも続く。


僧侶アリシアは、せめて乙女として最大の生き恥を晒すのは回避しようと、あえて尿意を解放した。僧衣の下に水たまりができる。


魔法使いエリスは、アリシアのように踏ん切りがつけられずもじもじしていたところに魔王の一撃を喰らい、戦闘不能になった。


倒れた後とんでもないことになったのだが、ここではそれ以上語らない。


やがて魔王は倒れ、絶叫と糞尿を垂れ流しつつ息絶えた。


「も、もう俺たちも限界だ…」


勇者・戦士・僧侶ががくりと膝をつく。


最後に蛇足であるが、魔王が座していたのは玉座だけが置かれた石造りの部屋で、身を隠すものも音を遮るものも一切なかったことを述べておこう。


5月14日午後9時40分:誤字修正しました。

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― 新着の感想 ―
おぉう……絶望。この世界には絶対転生したくない……
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