九話 弁当を広げました
九話 弁当を広げました
「私のカツカレーが……」
「なんで私のもカツカレーにしなかった。バカちんが!」
そう叱り、能はカツカレーを食べる。
「だって能はカレーとしか言わなかったし、カツカレー食べたいなんて思ってなかった」
ずいぶんと親しげだ。
サイズは黒スーツの女を見上げて、言った。
「馴れ馴れしいけど、能とどんな関係なの?」
「小人……初めて見た」
サイズを見て、感動しているようだ。しかしサイズは気持ちを抑えられない。
「能は私の……親代わりみたいなもんなの! なんであんたが仲良くしてんの?」
一旦躊躇したが、溢れる嫉妬が止められない。
「私は能の監視と護衛をしている」
「ふーん」
警戒を解いた様子もない。
「嬉しい事言ってくれるわね。親代わりかぁ」
能に言われ、サイズは自分の言った事の意味を理解したようだ。
「良いでしょ! ねえ、私達もお弁当食べよ」
「お弁当?」
能と黒スーツの女が同時に聞いた。サイズの話題そらしはまんまと成功した。エスパーダもエクスカリパーもその話に乗る事にしたようで、親代わり発言はスルーする事になった。
「要、能ちゃんと兄が作ってくれた物よ。中身はまだ見てないけど」
「お兄ちゃんめ。私の分を用意しないとは」
「自分と都殿の分はスーパーで買っていたぞ」
「えーと、初めましてだよね? 私、高星能。宿守応該の娘」
「上杉……絵楠狩派阿だ」
「かっちょえー名前だね。笑っちゃダメだよ。お義姉様」
エクスカリパーに睨まれそうになって、エスパーダはすぐに顔をそらした。その辺も対策済みのようだ。
「みんなして、私の名前を笑う。人間は笑わないんだな」
「もっとえげつないキラキラネームとかあるしね」
「私の名前は人間の世界でもやはりそういう部類なのか」
エクスカリパーはショックを受けていた。
「ていうか、小人の名前ってみんなキラキラネームだと思うよ。武器の名前付けるって」
「え? おかしいの?」
エスパーダが食いついた。
「うーん、まあね」
「そんな事、要は言わなかった」
「エスパーダは少しだけ馴染みがあったから。それにお兄ちゃんはお義姉様の事好きだから気にしなかったのかもよ」
エスパーダは考えてしまった。後で話す必要がありそうだ。
「みんな、お弁当食べようよ」
名前の話に飽きていたサイズは弁当箱を出して、二人を訴えた。
「小人のお弁当」
黒スーツの女は興味を示したようだ。
「見せて」
能はサイズに言った。
サイズは弁当を広げる。そこには要特製の茶色多めの中身が。
「え?」
黒スーツの女は驚いている。多分キャラ弁みたいなのを想像していたのだろう。
「お兄ちゃんらしいな」
能にしみじみと言われ、要はムッとした。これは要会心の出来なのだ。非難されるなんて心外だった。