十話 モグモグタイムです
十話 モグモグタイムです
ウサギの唐揚げに、甘い卵焼き、きんぴらごぼうに、麻婆茄子。ご飯は苔だんだん。
それが要の作った弁当だ。
「かわいくないですね」
黒スーツの女は断言する。
「要のご飯はおいしいのよ。見栄えは二の次よ」
エスパーダの擁護も効果的ではない。
「食堂のメニューと家庭料理の詰め合わせを比べても意味はない」
エクスカリパーはあぐらをかき、弁当を広げ、食べ始めた。
「うまい。さぁ、みんなで食べよう。お前も騒がなければ、動けるようにしてやるぞ」
黒スーツの女に声をかける。
「はい。よろしくお願いします」
エクスカリパーは自爆を解いた、黒スーツの女は座るなり、カレーに食いついた。小人達よりも食欲を優先したようだ。
エスパーダも弁当を食べる。
「能、カツカレーの恨みを忘れないから」
「今日ここを出て行くから、構わんよ」
「カツカレーを食べるまでは逃しません」
「お兄ちゃん、助けて」
要はあえて無視した。まだ黒スーツの女に通信でつながっているのをバラしたくないという意図もある。多分。
「それにやっつけるのが生ぬるいとか何とか」
黒スーツの女は能にがっつりお説教をする。
それでも危険はないと判断して、要は都に買ってきてもらった弁当を食べる事にした。
「カツ丼……」
一緒に画面を見ていた都はカツ丼を受け取った要に気まずそうにしている。
「勝負に勝つにはカツ丼でしょ」
「昭和の考えかたじゃない?」
「良いの! 食べないなら、想にあげるわよ」
「いやいやいや! 食べるから」
カツ丼を食べながら、もう一つの画面に注意を向けた。
ハトの首しか映っていなかった。
「ちゃんと映像見せて」
要が声をかけるとすぐにスミス姉妹が反論する。
「なんか食べてない?」
「僕等が必死こいて捜しているのに」
「エスパーダ達はもう食べてるよ」
「何⁉︎」
「ずるい!」
二人が騒ぎ出した。
「いい加減にしないか」
黒星が叱りつけるが、スミス姉妹は黙らない。
「僕等も食べる」
「ハトの上だけど」
「やめてくれ! ハイマースが汚れる」
アックスの抗議の声に、突然視界に入ってきた白衣の男に気付かれた。そしてスマホを取り出した。
「小人が二階にいます! 警備の者を寄越してください!」
そう言うと、白衣の男はスマホを向けて、アックス達を撮影した。
「まずいよ。いっぱい来られたら」
「逃げよう」
下がるか進むかを迷っているうちに、背後から黒スーツの男がやってきた。今は二人だが、増える事が予想される。
「戦いながら捜す。どっちに行けば良い?」
黒星が要に判断を求めてきた。
要は、パソコン画面のエスパーダ達の和んでいる様子を見て、言った。
「上に向かってください。いざとなったら、屋上からハトで逃げられる」
「よっしゃ。任せろ」
アックスはノリノリで、白衣の男に突っ込んでいった。




