貴族の遊び
「馬鹿だなあ、お前は」
身なりの良い貴族の少年が、金髪を風になびかせながらそう言った。青い瞳は彼の知性を映すように輝き、口元には謎めいた微笑が浮かべている。
対して土仕事で汚れた服を着ている庭師の息子は、洗う機会も少ないのであろう髪を帽子に押し込んだ姿のままで「そうですかね」と小さく呟く。
「ああ、馬鹿だよお前は。確かに立場ってものはあるから、僕とお前は完全に対等ってワケにはいかないさ。だけど、それでも友達になれないってわけじゃないだろ?」
そうして貴族の少年に押し切られる形で庭師の息子は友達になった。
貴族の少年は庭師の仕事に興味を持ったようで、庭師の息子は貴族の少年に枝の払い方や土の見分け方などを教え、その見返りというように貴族の少年は庭師の息子に対して文字や算術を教えた。
その合間に二人は屋敷の庭を駆け回り、互いの寝室に泊まりに行ったり、時にはこっそり街に繰り出しては様々な遊びをしていた。
そうして一年ほどが経ったある日。貴族の少年の持つある宝石がなくなるという事件が起きた。それは貴族から見れば大したものではないが、庶民が持てば一財産になるような代物だった。
そしてなくなった宝石の値段に釣り合うような大金が、庭師の息子の寝泊りする部屋から見つかったのだ。
庭師の息子は盗んでなどいないと主張し、貴族の少年も庭師の息子をかばった。しかし周囲の人間は庭師の息子が犯人だと決めつけ、ついには彼を屋敷から追い出し、スラムへと追放してしまった。
庭師の息子が貴族の館を追い出された日の夜。
貴族の少年は口元に人を馬鹿にするような笑みを浮かべながら、彼の家と同じほどの家格を持つ家の少年と話していた。
「ほうら、やっぱりあいつは馬鹿だったろ? 最後まで僕が友達だって疑わなかったんだからさ」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
よろしければ評価等をよろしくお願いします。