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異世界

「縁!道雄!」


勇は光の洪水に飲み込まれ、あまりの眩しさに勇は目を瞑った。

縁と道雄に自分の声は届いたのだろうか?

体がふわりと空に浮かぶ感覚がしたかと思うと、頭からつま先まで思い切り真空の渦に引っ張られるような強い力に襲われた。


「うわぁあああ!」


関節がギシギシと痛み出し、頭の後頭部もキリキリと痛みだし思わず声を上げる。

何が起きているか確認しようと目を開けるが、目前はまだ目に刺すように光の洪水が溢れていた。

この光は何処からやってきているんだろう?見たこともない量の光の波だった。


どれくらい光の渦に飲み込まれていただろうか、光の洪水を漂う中で何かを聞いた。


『…… …。』


光の渦に飲み込まれ、痛みに堪える優の耳に微かに囁きのような声が聞こえた。

何を話しているかまではわからない、誰かが何かを話している。


「んぎ、ぐぐぐ…!」


勇の体が引きちぎれそうな痛みを我慢した、食いしばる声が洩れる。


『…、…。』


「なに!?」


もがき苦しむ勇には囁きが何を言っているのか理解できず、

軋み体の痛みに耐えながら、やっと出た一言だった。


パァン!!

何かが自身の体にぶつかって割れた感触があった。

勇はうっすらと目を開け、さっき何かがぶつかった感覚のあった自身の体を見た。

小さな光の結晶が微かに見えた、何だこれ?手で触れると光の塵となって消えた。

結晶がぶつかった左脇腹部分はじんわりと熱がこもり暖かかった。


『ヤサビ リ ヒゥヌルヌ ソ タマテウ。』


「はっ!?」


今度ははっきりと聞こえた。

“ヤサビ・リ・ヒゥヌルヌ・ソ・タマテウ”が、何のことを言っているのか?何語かがわからない。

勇は光の渦の中の中を中心に向かって引きずられていくようだった。

次の瞬間、ゴウと強く大きな風圧を体で感じたと同時に地面に叩きつけられた。


「ぐぁっ!」


思わず鈍い声を上げ、ゆっくり目を開けると薄暗い場所の床の上に落とされたことがわかった。

身体中が痛みに痺れて動けない、うずくまる勇の体の下には淡く青緑色に光る魔法陣があった。

さっきの光の洪水の中で目が馬鹿になっている、目がチカチカして辺りに何があるのかわからない。

縁と道雄がいない、一体どこへ?勇は必死に目を擦った、その先には複数の人影が見えた。


「…アゲ ナ タガザゼマ ぺ!」


「ノオヲ ピャ ヤチナ…」


「ヒョツナダ ラ ヘチノツ ヨ ゴツア。」


ざわざわと人の話す声が聞こえるが、聞いたこともない言葉が飛び交っていた。

うずくまったまま周囲の様子を探った、まだ霞む視界を必死にみると屋内にいることがわかった。

勇の真下の魔法陣を囲むように祭壇のようなものが祀られていることが目に入る。

祭壇の下に人だかりができているようだった。


勇が痛みに耐えながらゆっくりと身を起こすと、誰かが祭壇に登り近寄ってきた。

白髪と長い髭を蓄えた年配の男性だった、片方だけのルーペを目にはめており、

教皇のような衣装を見に纏い優しい声で勇に話しかけてきた。


「アチピョツエフナヤ?」


「…何だって?」


勇はいい加減にしてくれと言った感じで、相手に問いただした。

一体何が起きているんだ、あの光の柱は何だ?この魔法陣は?ここは何処だ?

聞きたいことは山ほどあるが、まずは言葉だ。

何を言っているのかさっぱりわからない、何語だろう?

勇ができうる限りの知識を持って言葉を理解し意思疎通を試みようとするが皆目見当もつかない。


「ニクダラ ザヅヌ タヂワヘダナ?」


「わかんねぇってば!」


自分が置かれている状況も相手の言葉もわからない苛立たしさから、つい声を荒げてしまった。

法衣を纏った老人は少し困った様子を見せ、後ろに控えていた仲間らしき人々と何か相談を始めた。

老人達はこちらに度々視線を投げやりながら、何やら険しい表情で話し合っている。

勇は言葉がわからないが、話し合いがされている様子を注意深くじっと眺めていた。


「ンラヂ ノミガヨ ヘナチヨ ノモカド ワア ヂナチ ハデメチヤチ ゼツフア…。」


「ブレトティエスバ ギムゴツエフレ。」


「ヒナヒ、ノヨヲヨバ ティエスヨ チマギリ マテガデヅナ オツナ。」


勇は自身の姿をじっと見据え、微動だにしない視線に気づく。

その男は王冠を被り立派な髭を蓄え、身なりの良い格好をしており、一番奥に控えていた。

ことの成り行きを見守っていた王冠を被った男が重く重厚のある声で何かを話す。


「ングド テワチ。

ザデザデリラ ピナダバ ヤチ、ピュダキド。」


皆がその男の言葉に対し、恭しく頷く。

老人は話が終わると仲間二人を連れて再び祭壇に登り、勇に近づいてきた。


「フノヒアネ チマギワフバ、オツナ ボヒダサチヤヌ。」


老人は勇を見据え一言告げると、仲間二人に目配せをした。

合図を受け取った仲間二人はお互いに頷き合うと勇の背後に回った。

左右両方から勇の肩を掴み、二人で勇を羽交締めにしだした。

先ほどの体の痛みはまだ治っておらず、痛みに耐えかね声を上げた。


「いててっ!何をする!!放せ!」


必死の抵抗も虚しく、大人二人がかりでグッと抑えつけられた勇を老人の前に差し出す。

何が起こるのかわからない勇は目を白黒させた。


「トモヤヒヌ ヒメヌアハチ、フブ トザジワフ。」


「ルソロス ハワ、トランヌ。」


うむ、とばかりに老人が指で印を切り何かを唱え始めた。

老人の指先に光が灯り、淡く黄色に光る文字が現れた。

勇は羽交締めにされながら、その様子をじっと眺めていた。

老人は目の前に現れた文字に手をかざすと、

文字はその手に吸い込まれ老人の手が眩いばかりに光り輝き出した。

手に纏われた光を老人はゆっくりと勇へ近づけた。


「…ぅわ、やめ…」


何をされようとしているのか勇にはわからないが、

これが自分にとってあまり良いものではない気がして、思わず顔を背け拒絶する声が洩れる。

老人はそっと光を携えた手を勇の左鎖骨辺りに添えると、再び文字が現れた。

そして優の体が光を纏い始めると同時に、勇は体が内側から焼けるような激しい痛みを感じた。


「ギャァアアアアアァア!!」


辺りに絶叫が響き渡る。

身体中の血管が脈打つように熱い、体が焼ける!歯を食いしばり勇の体は大きくのけぞるが、

勇を羽交締めにしていた二人はしっかりと抑えつけたままだ。

あまりの痛さに勇は視界が歪み、目には涙が滲む。


「放せくそったれ!

お前ら全員殺してやる!」


理不尽な痛みを与えられた勇は、思いつく限りの罵詈雑言を投げつけた。

何故こんな真似を?自分が一体何をしたというのか。

老人が光る手を置いた勇の左鎖骨あたりが痛く熱く痒い。

勇がその箇所に目をやると赤黒く文字が浮かび上がった、見たこともない文字だ。

自身の体に焼印が施されたことを知り、勇の虚勢を張った心は折れた。

目の前が真っ暗になる。

身体中の力が抜け意識が遠のいていきそうな瞬間、老人が優しく勇に声をかけた。


「…殿、私の言葉がわかりますかな?」


ゆっくりと体の痛みと痺れが引いていく感覚があった。

呆然とし意識を失う直前に聞いた、老人の最後の言葉が何故か勇にも理解できた。


「シュルメトリアへようこそ、異世界の勇者殿よ。」

用語解説


<ブレトティエス=祝福の聖印>

勇が老人ルソロスに押し当てられた焼印。

焼印の文字は古代シュルメトリア語で”祝福を受けし者”の意味。

一つの文字で意味をなす言葉もあり、勇に刻印された文字はこちら。

挿絵(By みてみん)


<シュルメトリア語>

主に異世界シュルメトリアで多く使われている共通言語、現実世界でいう英語のようなもの。

地域によっては違う地域ごとに違う言語を用いられる。

シュルメトリア語の発音で"あ"は"さ"、あいうえお順にふたつ順飛ばしの語句となり、

"こんにちは"と言おうとすると、"ノダリミラ"となる。

儀式言葉、人名、地名はそのままの発音となる。

挿絵(By みてみん)


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今回も拙い文を読んでいただきありがとうございます。

おっちょこちょいなため、ちょこちょこ後から不都合を修正しながら書いてます。

お見苦しい限りです。


言葉の文化と文字の概念についてずっと迷っていまして、せっかくなら作ってしまおうと思い立ち、

暇を見てちょこちょこ作成しており時間がかかりました。

あとで自分で自分が作った設定に苦しみそうですが、

もう作っちゃったもんはしょうがないので何とか辻褄合わせをしていきたいと思います。

文字の形が安直すぎるだろうというご意見はごもっともだと思います、時間ができたら小文字も追加します。

厨二病丸出しでお恥ずかしい、申し訳ないです…。


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