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負けられない戦い

作者: TAKA

6畳のありふれた部屋。


勉強机に本棚、ベッドの脇には明るい日差しが差し込む出窓にカーテンが揺れている。


男は部屋を一瞥し考える。


今度こそ、今度こそ勝たねばならない。


これまで重ねてきた敗戦の歴史。それを糧にして勝利を掴まねば。


王道も奇策も、全て見破られてきた。


戦友との情報交換を重ね、幾つものアイデアを生み出し実行してきた。


それでも勝てない。相手は強大で、こちらの手の内を読みきっている。


しかし、彼に撤退の2文字はあり得ない。


絶対に勝たねばならない、引くに引けない戦い。


何度負けようとも、最後に勝てればそれでよい。


今まで、利用出来る物は全て利用してきた。この部屋にあるものは全てだ。


机も、ベッドも、本棚も。あらゆる場所を使ってみたが、尽く敗北している。


駄目だ。一人の知恵などたかがしれている。


ここは共闘する戦友と知恵を出し合わなければなるまい。


男はスマホをとり戦友へと連絡をとる。


あいつは勝てたであろうか。いや、期待はするまい。そう簡単に勝てるような相手ではないのだから。


呼び出し音に続き、戦友の声が届く。


「よう、そっちはどうだった?」


「駄目だ、また完敗だ」


やはり戦友も敗北したようだ。


「カバーをかけても、表紙を変えても無駄だった。隠し場所ももうない。万策尽きたか………」


戦友の諦めた口調。奴は心が折れかけている。


「諦めたらだめだ!きっと、きっとどこかに道はあるはずだ!」


「そ、そうだな。諦める訳にはいかない!」


先人たちから綿々と続くこの戦い。きっと勝利をつかめるはずだ。


「かと言って、策は尽きたしなぁ」


「派手なからくりを作る資金も技術もない。どうするか………」


未成年の我らに自由となる戦力は少ない。


「いっそ、デジタル化して………」


「いや、それもパスワードを解析された戦友がいる」


戦友は日本全国に、いや、世界の各国に存在する。


そんな我々が勝てないのだ。


「一体、どうすれば………」


男は室内を見渡す。額に飾られた金閣寺のジグソーパズルが目にはいる。


「ジグソーパズルを使うか………」


「額の裏は失敗したはずだが?」


「いや、額の中だ」


ジグソーパズルにあてる紙を抜き、そこに仕込む。


「薄いから、多くは仕込めない。故に本命をそこに。入りきれない物は陽動とする」


「全ては、守れないか………」


断腸の思いで本命を仕込む。残りを枕の中に仕込み、後は結果を待つのみである。


翌日、学校から帰った男はうなだれていた。


机の上には、キチンと置かれた本の数々。


一番上の本のタイトルは、「ケモミミなメイドさん~絶壁はステータス~」


そう、彼が守りたかった本命だった。


「だから………何でわざわざ机に置くかなぁ」


こうして彼の連敗記録は更新された。


そして今日も、思春期の男子とおかんの攻防は続くのであった。

そして連敗記録は重なっていく

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― 新着の感想 ―
[良い点] お母さんとの戦いですか。 私ならお母さんを脅迫しますかね。 Gの天敵のアシダカ蜘蛛。わたしの部屋には大型の奴が見える場所だけで 10匹近くいますよ。 台所まで歩いて行くとGの姿はゼロなの…
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