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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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中央の大地にて3

 エナはオーゼに自分の傘下に入らないかと誘った。従卒の3人も説得したため、傘下入りが決まった。

 エナとオーゼ達は貸しきりをした街の宿へと移動する。貸しきりといってもずっと貸しきり状態なので、所有権が国王にあるだけで、実質ウィステリア公爵家の別邸みたいなものだ。オーゼはそのままだと汚すぎるので、洗浄魔法で綺麗にしている。


「それで俺達に何をさせる気だ。王族の犬に成れというのなら降りさせてもらう」


 オーゼはその身体に似合ったドスの効いた声で言う。その体格はマフードには及ばないが、牢屋に長年居たとは思えないものだ。食べていたものを考えると、ちょっと思う部分がないではないが、マスターには黙っておこうとエナは思った。


「あなた達にやって貰うのは、中央軍を引っ掻き回して貰うこと。具体的には適当に兵士を殺してほしいの。こちらはあなた達が見つからないようにサポートするわ。さすがに余り上の人物は無理だけど。取りあえず、あなた達はウィステリア軍に居ることになっているから、現行犯で捕まらない限りは疑われないはずよ」


 エナの提案に4人は顔を見合わせる。


「それは俺達に取っては願ったり叶ったりだが、良いのか。俺達が失敗したら戦争だぞ」


 それを聞いてもエナは平然としていた。


「リスクは折り込み済みよ。それにあなた達よりリスクの高いことをこちらはやるから。直轄領の周辺部の仲の悪い貴族同士を争わせるの。最終的には代官も巻き込んで内戦状態にするわ」


 エナの言うことに4人は驚く。それは長年、それこそ神話の時代から変わらなかった、この国の仕組みが変わりかねないことだ。そしてそれはオーゼが挑戦し敗れ去った夢だった。


「あんた達の最終的な目的はなんだ?」


 それを聞くとエナは少しおどけたように笑って言う。


「孫に囲まれて死ぬためだって」


「「「「はあ?」」」」


 エナの言葉に、4人は意味が分からず、間抜けな声を出してしまう。


「ま、どうでも良いじゃない。あなたはあなたの望みを叶え、私は私の望みを叶える。お互いにWINーWINの素晴らしい関係。余計なことは知らない方が身の為よ」


 扇子を口元に当て、フフフッと笑うエナに、オーゼ達はそれ以上踏み込めなかった。



 ここ中央では月が明りの中心の為、基本的に他の地域と夜と昼が逆転している。そして月化沈み切った深夜、所々に灯された魔法の明かりを頼りに5人の兵士が道を歩いていた。明日は休みであり、久し振りに飲んだ帰りだった。ほんのりと頬が赤いが、皆足取りは確かだ。兵士は例え休日でもいざという時に備えておかねばならないとされる。なので過度な飲酒は見つかったら咎められるのだ。


「今日食った肉は美味かったな。あれは何の肉なんだ」


「牛だよ。だが同じ牛でも特別に育てられた牛で霜降り肉ってやつはもっと美味いらしいぞ」


「お前詳しいな」


「ああ、一度千人長が言っていたことが有るんだ。上の方では食べられ始めたらしい。ただ千人長クラスでもなかなか食べられないとは言ってたな。普通の肉と違って保存もきかないそうだ。今日食った肉も美味かったが、比べ物にならない程美味いらしい。おれもそんな物が食える身分になりたいもんだ」


「全くだ。どこかの地域で早く反乱が起きないかな。そうしたら手柄を上げて上に上がれるのによ」


 男たちが気分よく喋っていると、目の前を大きな影がふさぐ。


「残念だが、あんたらは無理だな」


 その影が喋る。影はマフードだった。


「なんだ。誰かと思ったらマフードか。よくもまあ、従卒の身分でそんな口が聞けたものだな。でかい図体して人一人殺せない半端ものが」


 男が言い終わったとたん、マフードの拳が男の顔に命中し、顔が陥没する。


「俺が殺してないのは奴隷だぜ。なにせオーゼ様に付いたからな」


 話しかけた男は既にこと切れていた。


「貴様!」


 すぐさま他の4人は剣を抜く。この速さはさすがに中央軍の兵士だけあった。だが一人の頭を矢が射貫き、1人の心臓を氷の槍が貫き、1人は上から落ちてきた男に頭から剣で唐竹割にされていた。一瞬の内に1人だけ残されることになった男は、立ち向かうでもなく、マフードの横をすり抜け、逃げ出した。だが、4人は感心していた。


「へえ。流石によく訓練されてるねぇ。とっさに生き残って状況を報告する方を選択したか……まあ、それができればたいしたもんだ」


 男が逃げた方には場違いなメイドがいた。背中にはなぜか大きな剣を背負っている。


「どけ!」


 男は叫びそのまま突っ込む。そしてメイドとすれ違った瞬間、内臓をぶちまけ、こと切れた。


「皆様お見事でした」


 大剣の血を一振りして払った後、メイドが一礼して話しかける。


「いや、ティータさんとやらもなかなかのもので。最初メイドが補助に付くと言われた時は、何のことかと思ったがね。あんたがウィステリア公爵家最強かい?」


 オーゼがそう褒めて剣を収める。


「最強?滅相もございません。私はあくまでメイドでございます。武術は嗜んだだけでございます」


 ティータは強く否定する。


「あんたが嗜んだだけかよ。ウィステリア公爵家は噂とはだいぶ違うようだな」


 マフードが驚く。そしてマフードが言った事は、男たち全員が思ったことだった。


「それでは死体を適当な家に放り込みましょう」


 男たちは、ティータに従い、近くの家に死体を放り込む。


 この日以降度々殺人が起こるが、犯人は一向に捕まることが無かった。派閥間に緊張が走り、ちょっとしたことで報復が報復を呼び、王都は少しずつ荒廃していった。


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