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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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東の大地にて3

 レコンシャドス公爵領の領都デメードは人口3000人ほどの、下手な他の貴族の領都よりも小さな都市だ。何故かというと公爵家で働く者とその家族しか住むことを許されていないからだ。普通だったらその家族を相手に商売をするもの、更にその商売をする者相手に商売をするものという風に、都市は大きくなるものだが。ここではそういった者は、城からは見えないように森で遮られた別の町に住んでいた。

 都市全体が高く分厚い壁で覆われており、その周りを川の水を引き込んだ広く深い堀が囲んでいる。入り口は1つしかなく、出入りは厳しく調べられる。まるで全体が要塞の様な都市だった。その上城は更に壁で囲まれている。平地に作られた城としてはかなり堅牢な城といえるだろう。公爵が10倍どころか20倍の敵が来ても落とせぬ、と豪語しているだけはある。


 その都市に近づく集団がいる。トゥリアとシュナットが率いる連合軍だ。


「貴方達の強さは今までの道のりで分かったが、攻城兵器もなしで、流石にあの城は落とせないだろう」


 シュナットは横にいるトゥリアに聞く。ここまでの道のりは驚かされてばかりいた。人数が少なかったとはいえ、途中の町にいた中央や貴族の兵を、殆ど鎧袖一触でトゥリアの連れてきた兵は粉砕したのだ。伝令など出させる暇を与えずである。シュナットの連れてきた兵は何もする必要がなかったほどだ。自分達が領都に近づいていることなど誰も知らないだろう。仮に後から伝令を出していたとしても、街道をほぼ最短距離で来た自分達を抜くことは不可能に近い。その証拠に町に変わった様子は見られない。


「それに対する答えはNOよ。真正面から戦っても落とせない事は無いわ。ただ流石に私抜きだと犠牲者無しでは無理ね。私が戦っても良いんだけど、そういうのは好みじゃないのよねえ。せっかく工作員を忍び込ませたのだから、後々の為にもちゃんと活用して落としたいわ」


 トゥリアから帰ってきた答えはシュナットが予想していたより遥か上だった。もしかしたら落とせるかもしれないとは思っていた。通常時ならともかく、今は領都内にいる兵士の数も少ないと聞いていたからだ。だが、トゥリアは犠牲者無しで、あの堅牢な要塞のような都市を落とそうとしている。しかも落とせる方法も複数あるようだった。


「連絡が来たわ」


 シュナットがそう聞いてトゥリアの手を見ると、いつの間にか手紙が握られていた。マジックアイテムの手紙で、話には聞いた事があるが、大層高価なもので男爵の自分では簡単には手が出せないようなものだ。それをトゥリアは何度も、値段の事などまるで頭の中にないかのように使用している。ウィステリア公爵家の財力に改めて驚かされる。


「今城の中にいる兵士は100名ほどいるみたい。思ったより残ってたわね。ただその内親衛隊が50人で完全に城の中だけを警備しているから、城の外には50人。見回りの数が足りないから、門は外壁の見張りしか立ててないみたい。まあ、何とかなりそうね。今夜、城を落とすわ」


 トゥリアはシュナットにそう説明すると後ろを向く。


「みんな。ここまで無事に来たのだから、最後まで気を抜かないように。死んだら駄目よ」


「「おお!」」


 トゥリアの掛け声に兵士が拳を上げ叫ぶ。ここでシュナットは、何とかなりそうという意味が、城を落とすのではなく、死者を出さない事だと気づく。改めて信じられない事だった。


 そして夜が来た。かがり火がぽつぽつと焚かれている中、城壁を見張りが巡回している。すると城壁では見ることが無い職業の者が居た。城内のメイドである。


「なぜメイドがこんな時間にこんなところにいる?」


「実は公爵様より伝言を授かりまして、急ぎ此方に参ったのです」


 そう言った場合は普通伝令を使うのだが、今城内にいる兵は少ない。伝言ぐらいはメイドに任せたのだろと、警戒を解き兵士はメイドの方に向かう。


「一体何の伝言を預かったんだ?」


「それはですね。死んでください」


 そう言って、メイドは腕を振るう。兵士の目ではとてもとらえきれない早さだった。そして、首から血が噴き出す。メイドが使った武器は果物ナイフ。だがそれで首の半分ほどが切られていた。メイドは死体を城壁の壁に寄りかからせ、遠目には休憩しているように見せかける。


「ごめんなさい。公爵様は公爵様でも、ここの城の公爵様じゃないの」


 メイドは同じようにして次々と外壁の巡回兵士を倒していった。外壁の巡回の兵士は4人のみで広い割には少ない為、互いの様子を知ることが出来ず。同じように殺されていく。

 そしてメイドは門をふさぐ鉄格子の巻き上げ機の所までくると、男が2人がかりで回す鎖の巻き上げ機を一人で回し鉄格子を上げる。それが合図のように今度は内壁の扉が開く。


「うまくいったみたいね。じゃあ制圧開始」


 トゥリアの掛け声とともに、500名を超える兵士がなだれ込み、兵の詰め所、寝所など事前に調べていた場所を制圧していく。不意打ちの上、10倍の数である。抵抗らしい抵抗はなかった。

 そしてそのまま城内へと入っていく。城内はさすがに親衛隊が起きて守っていたが、レベルが違う上に数が違う、仲間へ知らせるのが精一杯の抵抗だったが、それすらもただ単に親衛隊を探す手間を省いた事にしかならなかった。


 トゥリアとシュナットが敵の居なくなった廊下を進んでいくと、ひと際豪華な扉の前にメイドが場違いな感じでメイドが2人立っている。足元には親衛隊の死体があった。そして、メイド達は観音開きの扉を開き、2人を招き入れる。中では公爵が酒を飲んで寝たのか、赤ら顔でいびきをかいて寝ていた。


「あら、幸せそうに寝てるわね。この城を貰うんだし、個人的な恨みはないからそのまま死なせてあげるわ」


 トゥリアが指をパチンと鳴らすと、公爵の首が切れ、首から血が噴き出しベッドを真っ赤にしていく。

 

 そして朝が訪れた。トゥリアは昇る朝日をバックにして、シュナットに言う


「流石20倍の兵でも耐えると豪語するだけはあるわ。拠点としては十分。さて、東部の統一を目指しましょう」


 その姿は神々しいほど美しかったが、どことなく死神を連想させるものだった。


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