表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/109

公爵令嬢、モンスターハンターになる

 さて、繰り返すようだがこの世界に冒険者は居ない。なので、素材をそろえるには自分で取りに行くか、ならず者を雇うか、軍を動かすしかない。私が欲しい高レベルのモンスターの素材は、その辺のならず者の手に負える様なものではないし、軍を動かすとなると流石に義父にバレる。それに被害も大きいだろう。消去法で自分で取りに行くしかない。


(うーん。今の自分で倒せるのはどれぐらいだろうかな)


 ステータスを見直して冷静に考える。ステータスなら上位のドラゴンにも負けてはいないどころか、現時点でも世界最強だ。だが、ステータスだけで勝負が決まるわけでもない。身体を動かすのは自分なのである。上手く動かせないと強力な攻撃でも当たってくれないし、素早く動けても、それだけで避けることはできない。

 極端な話、足が竦んで動けなかったら、格下の相手でも簡単に負ける。前世はもちろんの事、今世でも私はモンスターと戦った事はない。例を挙げるなら、幾らHP的に耐えれるからといって、ドラゴンブレスをくらって、冷静に戦闘を続けられるかといわれると、否としか答えようがない。多分慌てて逃げ回って、最後には削り殺されるだろう。


 私はしばらく迷った後、領地の外れにいるヘルハウンドを倒しに行くことにした。ヘルハウンドは、馬ほどもある大きな犬のモンスターで、凶暴で知能も高い。しかも、ドラゴンブレスほどの威力は無いが、ブレスまで吐く。

 今から行くところは昔小さな砦だったところだが、ヘルハウンド1体に全滅させられ、それ以降ヘルハウンドの住処と化している。

 私は砦にある塔の屋上に転移する。ここは入れる通路が1箇所しかなく、しかもそれは人間用のものなので、ヘルハウンドは通行できない。屋上からはヘルハウンドが普段いる中庭全体が見渡せる。つまり、遠距離攻撃をすれば、私は安全にヘルハウンドを倒せるのだ。

 中庭を見渡すと、動物の骨だけではなく、人間の骨も散乱しており、その骨の上にヘルハウンドが眠っていた。距離は50m以上離れているが、実物以上に大きく見える。

 私は大量の氷の槍を魔法で作り出すと、一斉にヘルハウンドに向けて解き放った。


 私の放った氷の槍はことごとくヘルハウンドに突き刺さり、ハリネズミのようにする。即死かな、と思った直後、ヘルハウンドは立ち上がり、傷口からは炎が噴き出し、槍を溶かしていく。

 相手のステータスを見ると、HPゲージは半分以上減っている。もう一度同じ攻撃をすれば倒せる。

 しかし、ヘルハウンドはこちらが集中する前に、塔に向かって体当たりをする。塔が大きく揺れ、バキリと何かが折れた音がする。私は衝撃で立っていることが出来ずに、しりもちをついた。


「えっ……うそ」


 恐怖に思わず声が漏れる。ゲーム内ではどんなに暴れまわったとしても、壊れるように設定されているところ以外は壊れない。だが、当たり前だが、現実の建物は衝撃を受ければ壊れるものなのだ。

 それでも何とか、数本の氷の槍を作り出し、再度ヘルハウンドに命中させる。だが、倒すことはできない。ヘルハウンドは再度助走し、塔に体当たりをする。2度の衝撃に耐えきれず、塔はゆっくりと傾き始める。


(ヤバい、ヤバい、ヤバい!)


 私は何とか集中して、まだ残っている別の塔の屋上に転移する。中庭の方を見るとガラガラと音をたてて、塔が崩れるところだった。


 (ゲームだったら、この魔法の溜め攻撃2発で殺せる、楽勝な敵のはずなのに……)


 ヘルハウンドは、崩れたがれきの中の臭いをかいでいる。攻撃した私を捜しているのだろう。ヘルハウンドの残りのHPは約3分の1。もう一度最初の攻撃をあてれば倒せるが、同じように空中に氷の槍を作っていたら、ヘルハウンドに見つかってしまう。私はまず自分の塔全体に強化魔法をかける。これで、前の塔より頑丈なはずだ。次にトラップとして塔に接触したときに電撃がはしるようにする。

 そうして、準備を整えた後、私は今度はヘルハウンドの真下から、氷の槍を何本も突き出した。だが、寝ていた時と違い、数本は当たったものの、それ以外は軽やかなステップで交わされていく。ヘルハウンドは直ぐに私に気付き、またも塔に体当たりをする。その瞬間、眩いばかりの雷が、ヘルハウンドを襲う。


(やったかしら)


 期待を込めて、中庭を見てみると、ヘルハウンドが体から煙を上げながらも、まだ立っている。HPゲージを見ると残り10分の1。

 私は次に手から光球を飛ばす。光球はヘルハウンドの回りをまわり始め、光球からは小さなレーザー光線のような光が出て、ヘルハウンドを攻撃していく。幸いなことに塔へ攻撃するより、鬱陶しいその光球を攻撃する方をヘルハウンドは選んだ。

 私はちょっと落ち着き、同じ光球をいくつも出してヘルハウンドに向かわせる。私の能力をもってしても攻撃力が低く、ゲーム内では微妙な感じの魔法だったが、自動追尾はありがたい。ヘルハウンドは威力は低いが、絶え間ない攻撃にさらされ、遂に倒れた。

 念のため確認するがHPは0で、状態はDEADになっている。先程の恐怖からか、私はそれでも安心できず、魔法で作った剣を飛ばし、首に斬りつける。ヘルハウンドが死んでいたためか、あっさりと首が胴から離れた。

 ようやくそこで私は一安心した。ドラゴンと戦うなんてやらなくて良かった。ワイバーン相手でも勝てたかどうか怪しい。ただ、一回モンスターと戦ったことで、ちょっとだけ自信と度胸はついた気がする。ヘルハウンドはこの世界でもそれなりの強さがある。何せ小さいとはいえ、砦を1匹で落とせるのだから。それを自分一人で倒せたというのは大きかった。

 それに次はもっとうまくやれるだろう。後は仲間の重要性も再確認できた。例え元の能力を取り戻したとしても、性格的に私は前線向きじゃない。敵を引き付けてくれる仲間が居なければ、私の能力はフルには生かせないだろう。


 私は魔法を使ってふわりと浮かび上がり、ゆっくりと中庭に降りていく。中庭には動くものの気配はない。ボス戦をやるところなので当たり前といえば当たり前なのだが、ゲームとは違うと、先ほど身に染みて体験したばかりだ。どうしても用心深くなる。ちなみに普通に通路を使って降りると、アンデッドやら蝙蝠やらネズミやらがあちこちにいるはずだ。


 降り立つと強烈な悪臭が鼻につく。これだけ死体や糞が散乱していたら、さもありなんという感じだ。周辺の村はいくつか壊滅してるんじゃないだろうか。落ち着いたら調査をする必要があるだろう。私は収納魔法の空間を開き、さっさとヘルハウンドの死体を放り込むと、砦を後にした。



 面白いと思われたら、ぜひポイントやいいね、ブックマークの登録をお願いします。皆様の応援は大変励みになります。よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ