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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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公爵令嬢、怨敵になる

 遂にゲームのシナリオの始まる日7月1日を迎えた。私とホムンクルス達は円卓の間に集まりジッとしていた。各地に飛ばしたウィザードアイ、使い魔、スパイからの情報を待っているのだ。しかし何時間たってもなんの知らせもない。そして遂に日が暮れる。


「まさか夜明け前って事は無かったわよね……」


 私は自信なさげに周りを見渡す。前世の記憶はホムンクルス達は全部引き継いでいるので、当然ながらゲームの知識もある。


「多分……それを言うなら夜中だった可能性もあるわ」


 トゥリアの言葉に皆が頷く。ゲームでは現実の時間1時間で1日だった。昼間だった気がするが、それはもしかしたら次の日の昼だったかもしれない。それを言うなら夜明け前だった可能性もあるのだが、敢えて無視する。何せそれだったらもう過ぎたことだから。


 それから念の為、休憩をいれながらではあるが、2日間観察した。しかし、何の報告もなかった。

 私達は疲れた体を休め、再び円卓へと集まる。


「結局この世界には勇者は現れなかったのかしら?」


 私の言葉に皆は何とも得ない顔をする。


「なかったと言いたいところだけど、死んで骨さえなくなくなっている可能性もあるのよね……」


 暫くして、エナが言う。私もその可能性は大いにあると思う。何せ私は普通のキャラクターでプレイした時。歩いていたらいきなりデカいナマコのようなモンスターに殺された。オープニングシーンとチュートリアルが終わり、実際にゲームが始まって5分も経っていただろうか。あれがこの世界で起きていたら、多分丸ごと食べられて見つけることはできないだろう。


「よし、悩んでいても仕方がないわ。来なかった事として考えましょう。考えてみたらどの道死にゲーだったし、一回も死なないで私達の目に着くまで活躍できた可能性も低いし……」


 死にゲーとはその名の通り何度も死にながら攻略法を見つけていくゲームだ。逆に言うと死なないで攻略するなど、私の様なキャラクターでない限り不可能だ。


「一応ゲームの通りにイベントが出来た場合の対応はできているのよね」


 私はホムンクルス達に聞く。


「ゲーム通りというか、私の担当範囲では貴族の令嬢をはじめ、貧民街の少女まで助けたから、イベントが起こりようがないのよね。あの悪趣味な部屋はもう片付けて綺麗にしたし……」


 エナがそう言う。うーん確かに可哀想な目に合う予定の者は、助けてしまったからベントは起こりようがない。バモガンは私が痛い目に合わせた後は、命を助けてもらうために必死に働いている。


「私の担当範囲は問題解決のための戦闘部隊の設立と強化だったから、そもそもイベントとは関係ないし、問題も起きてないわ。今なら王族と事を構えたとしても、防御に徹すれば、撤退まで持ち込めるぐらいにはなったと思うわよ」


 イスナーンは頼もしい報告をしてくれる。


「私のところではイベントらしきものは起きているけど、それ以上に農業改革による生産性の向上、従事者の増加、流通の円滑化の方が大きいのよね。具体的に言うと今年は冷夏で単位面積当たりの収穫量は落ちそうなんだけど、耕作面積の増加がそれを上回っているわ。それに単一の作物を育ててるわけじゃないから、冷夏の被害も少ないし」


 トゥリアが報告する。本来ならこの年は不作で、ただでさえ飢えと疫病が蔓延していた土地は、見るも無残な餓死者だらけだったはずである。その意味ではエナと同じくイベント自体を無くしたともいえる。


「私はイベントを起こす敵、起こさない敵に関わらず、トゥルーエンドに関係するボス以外はアイテム集めの為に倒したし、サブイベントは大分なくなったんじゃないかしら」


 最後にテッセラが、発言する。あれ?いつの間にか対応どころか結構な部分解決してるんじゃ……。


「そもそも、勇者が来たとして、たどり着くのは平和な村か町よね。しかもそれまでの記憶を失くしているはずだから、普通に働き始めてるんじゃないかしら。お金もない上に、どこも人手不足で働き手を欲しがってるし」


 テッセラがさらに補足する。それもそうだ。


「えーっと。じゃあ現状維持で。冷害は起きているから、イベントが始まっている可能性は捨てきれないからね」


「「「「ハーイ」」」」


 4人が元気に返事をする。まあ、私の望みは老衰で死ぬことなので何も起こらなければそれで良い。その日はそれで解散した。



 光に包まれた空間である男が考え込んでいた。その男に別の男が近づいてくる。


「どうしたのですか、ロナゴート」


 ロナゴートとはダークムーンの世界における善の主神たるものの名だ。


「ふむ、イシントか……」


 イシントも同じく神の名である。


「以前我らが排除された世界が、少し前までいよいよ末期状態だったのでな。自ら破滅に向かったとは言え、長く暮らしていただけあり情はある。このまま永劫の苦しみの世界に飲まれるぐらいなら、いっその事破壊をと考えていたのだが……今見たところ、状況が劇的に改善しておる。一応以前一縷の望みをかけて、神人たるものを送り込んではいたのだが、突然数年でここまで改善したのじゃ。まるで未来が細かいところまで見えているようにのう。実は最後に駄目もとで、勇者たりえるものも送り込むことも考えて覗いてみたのじゃが、余計なことはせず様子を見た方が良いかと思ってのう」


 ロナゴートの前には透明なパネルのようなものが有り、そこに人々が笑いあう姿が映っている。


「たしかに。なぜこのような事が起きたのか不思議ですね。何かが我々の知らないところで起きているのかもしれません」


「そうさのう。神を名乗る儂らとて、実はもっと大いなるものの駒かもしれぬ。しばしこの世界を見守るとしよう」



 暗闇の中で暗闇よりなお暗く禍々しいオーラを放つ男が悔しがっている。


「おのれぇ。もう少しだったものを……」


 男は人々の絶望、恨み、怨嗟を糧とするものであった。一つの世界が未来永劫多くの人々が苦しむことになる、苦悶の坩堝の中に入る寸前に、立ち直ったのだ。それも男が気付かない間、僅か数年という男にとっては一瞬の時間で。


「このままでは済まさぬぞ」


 男は空中に映し出された1人の美しい女性を、憎々し気に睨んだ。


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