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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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神竜ロールアンクス討伐戦2

 ギルフォード男爵の部隊が入って約5分後、ギルフォード男爵の部隊は戻ってきた。私は靄の中から出てくる人数を数える。10人ピッタリ。1人も欠けていない。初戦で何も情報が無かったにもかかわらず、素晴らしい戦果だった。幸先のいいスタートに小躍りしたくなる気持ちを抑えて、そのまま扉を押さえておく。たいした力はいらないが、何もしないと閉まってしまう。

 ゲームにおいてもこのボス戦は、退却が出来る数少ないステージだ。但し、その為には扉を開けるものが押さえておく必要がある。但し気を付けなければならないのは、この部屋より先に退却したら全てがリセットされてしまうことだ。まあ、ゲームと違ってこの世界で本当にすべてがリセットされるかどうかは分からないが、それを試すつもりはない。私は今回の戦いで討伐するつもりだ。

 ギルフォード男爵は私の前まで来ると申し訳なさそうに頭を下げる。わたしは、へ?という感じだ。


「セシリア様。申し訳ございません。先鋒を任されながら、何一つとして戦果を挙げることはできませんでした。いえ、戦果どころか近づくことも、ましてやただの一度足りとて攻撃を加えることもできませんでした。それにもかかわらず、退却が完了した時には恥ずかしさより、安堵感が先に来たのです。私は部隊長の人を返上したいと思います」


 それを聞いた私は慌てた、何せ幸先が良いスタートを切ってくれたと思った人物が、いきなり辞めると言い出すのである。ちょっと待って、と思うのが普通だろう。


「何をおっしゃるのですゼラント卿。1人も欠けることなく帰還されたではないですか。これ以上の戦果は望みません。この戦いは一体のドラゴンを倒すのではなく、ロールアンクルという軍と戦っていると考えてください。さあ、今は休息をする時です。戦場ではそれも戦いの一部であることはゼラント卿はよくご存じでしょう」


「承知いたしました。それではすぐに撤退したので大した情報はありませんが、どう戦ったかだけ報告させていただきます」


 私はギルフォード男爵の報告を受ける。自分が知っているロールアンクルと特徴は同じだった。もちろんまだ分かっていない部分も多いが、最初にそれだけ分かれば十分だ。


「ゼラント卿。貴方は満点以上です。実に素晴らしいです。このお礼はどうすればいいか悩んでしまいますね。ああ、まだこんな序盤で油断してはいけませんね。褒賞の件はまたあとでと言う事で」


 私の言葉が腑に落ちなかったのか、複雑そうな顔をしてギルフォード男爵は去って行く。まあ、ギルフォード男爵領の兵は元々20名ほど、今回の様な大規模な作戦は指揮どころか、参加した事も無いだろう。今回の作戦は実働部隊だけで3000名を超え、予備軍、支援部隊まで入れれば5000名を超える一大作戦だ。ウィストリア公爵家に余裕が出来たとはいえ、この作戦に挑めるような精鋭を再び集めるには、少なくとも3年の月日が必要だろう。何せ実働部隊の最低レベルが基本的に25なのだから。騎士団員の6人は例外なのである。

 私が考えている内に一つの部隊が撤退を完了し、次の部隊が出発する。まだまだ序盤、何も変化はない。私にはそれで十分だった。


 ロールアンクルはだんだん不機嫌になっていた。先ほどからひっきりなしに現れる敵は全て小物ばかり。ブレスを吐けばすぐに撤退を開始する。一体なんだというだという感じだ。こんな経験は初めてだった。しかもすぐに撤退するせいで、これだけ戦っているというのにまだ一人も倒せていない。ロールアンクルは今までで一番気配が弱い者が入ってきたとき、戦い方を変えることにした。舞台から飛び上がり、接近戦に挑んだのである。


 キザラート一行+4人は慎重に足を運んでいた。そして靄が晴れると聞いていた通り、ロールアンクルが姿を現す。聞いた話ではここでブレスを放つはずだ。だが、ロールアンクルはブレスを放たない。


「なあ、お婆。なんだか嫌な予感がするんだが」


 楽観主義のキザラートが珍しく悲観的な事を言う。


「いい加減、お婆と呼ぶのはやめんか!しかもおぬしのその手の勘は当たるじゃろうが」


 ロジーレがそう言い終わると同時に、ロールアンクルは今まで動かなかった舞台から飛び上がりこちらに突っ込んでくる。


「散開!」


 キザラートの鋭い声と共に、キザラート以外は散開する。キザラートは剣を構え、ロールアンクルを待ち構える。レベル差から言ったら無謀極まりない行為だ。ロールアンクルはキザラートを一飲みにしようと大きな口を開け、突進し、そして口を閉じる。巨体に似合わない素早い動きだった。誰もがキザラートが食べられたと思ったが、ギリギリのところで、キザラートは避けていた。いや、剣に噛みつかれている。そのまま、横を向きもう一嚙みすれば終わる。死に体だ。


「よっと」


 だが予想に反し、がっちり噛まれていたと思われた剣は、拍子の抜ける掛け声と共に軽く抜ける。それと共に、ロールアンクルの口に小さな傷が入り一筋の血が流れ、ロールアンクルの叫び声が響く。


「さすがはドラゴンキラーと呼ばれる剣。凄まじい切れ味だな」


「感心してる場合か!次はどうすんじゃ!」


「全力逃走。お婆は魔法障壁を最高出力で後方に展開。俺は殿を務める」


 キザラートを残して9人は全力で逃走を始める。


「さーて。いっちょ頑張るとしますか」


 キザラートは再び剣を構えじりじりと下がり始める。レベル差を考えると無謀な行為に思えた。


 ロールアンクルは怒りに燃えていた。この戦いが始まって初めてつけられた傷だ。口の端がちょっと切れただけでダメージというダメージは受けていない。だが、自分が完全に見下していた相手に傷をつけられたという事実が許せなかった。ただでは殺さぬ。先ほどのように無帽に突撃するのも駄目だ。あの者は自分を傷つける剣を持っている。そこまで考えてふとロールアンクルは考える。あのような剣はあの程度の者が本来持てるようなものではない。先祖伝来の物か主君から下賜された物か。いずれにしても人間の世界では自分の命より大事なものだ。そこまで考えてロールアンクルは心の中でニヤリと笑う。あの剣を先ずは奪ってやろう。その後どうするか、無謀にも剣を無くした状態で自分に挑み惨めに敗れ去るか、命惜しさに逃げ帰って、正気に返った後惨めな思いをするか。もしかしたら主君から殺される可能性もある。一思いに殺すよりも良い案のように思えた。

 ロールアンクルは人間の目の前に行くと、前脚の爪でいたぶるように、攻撃を始めた。


 キザラートはロールアンクルの攻撃を何とか受け流しながら撤退していた。だがそれができているのが自分の実力であるとは思っていない。ロールアンクルの攻撃は重く、腕がしびれ始めている。


(ちっ、遊んでやがる。何が目的だ……もしかしてこの剣の方か?)


 騎士団で数限りなく行ってきた相手の剣を弾き飛ばす攻撃。ロールアンクルの攻撃はそれにそっくりだった。


(そんなに欲しけりゃくれてやるよ。ただとはいかないけどな)


 キザラートはわざとロールアンクルの攻撃で剣を高く弾かせる。


(ダンシングソード)


 キザラートは魔法を使う。戦士系だからと言っても魔法が使える者は居る。この魔法は本来なら名前の通り、舞い踊るように、自分の手を離れた剣を操り敵を攻撃する魔法だ。だが直線的な攻撃が出来ない訳ではない。キザラートは剣をはじいた事で油断したロールアンクルの目に向かって真っすぐに飛ばす。残念ながらとっさに閉じられた瞼に防がれ目本体には当たらなかったが瞼には突き刺さる。キザラートは後を向いて全力で逃げ出す。出口はもうすぐそこだ。出口に着く直前でいやな予感がして、頭を下げ転がる。その直後にロールアンクルの爪が空を切る。キザラートはそのまま出口に転がり込んだ。


 ロールアンクルは爪で撃ち合ううちに、完全に油断していた。やはりこの人間の力は大した事は無い。相手の腕がだんだんしびれてきているのが分かる。もう少し爪でつついてやるだけで、剣を取り落とすだろう。だがあろうことか、その人間は剣を投げてきた。反射的に瞼を閉じ、目への直撃は避けたが、痛さは口を切られた時の比ではない。気を取り直して人間を見るともう出口のすぐそばだ。ロールアンクルは怒りが沸き上がり、追いかけて切り裂こうと腕を振るう。だがその攻撃は空を切った。人間にまんまと逃げられた……傷つけられたのは忌々しいが、予定通りの事ではある。聖域の外の人間は実に残酷と聞く。 あの人間がここで死んでいればよかったと思うような惨めな死を遂げるように、ロールアンクルは神に祈った。


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