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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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神竜ロールアンクス討伐戦1

 騎士団本部の奥にその扉は有った。決して開けてはならぬとばかりに、観音開きの扉にも拘らず、中央に大きくドラゴンの浮彫がある。その姿は巷でうわさされる普通のドラゴンと違い、物静かで神聖な雰囲気を持っている。正面を向いた顔からは浮き彫りにも関わらず、まるで生きている様な知性すら感じ、エメラルドがはめ込まれた瞳からは何者も寄せ付けぬ意志を感じる。

 私がその扉を押すと、ギギッという悲鳴に似た音をたて扉が開いていく。まるで二つに割かれるドラゴンが悲鳴をあげているようだ。この扉は神人の血を濃く引くものしか開けられない。つまりは王族や上位貴族たちだ。

 開くと中は薄く光る白い靄に覆われている。まるでライトに照らされたドライアイスの靄のような感じだ。簡単に入れそうなその靄は実は非常に強力な結界で、神人の血を濃く引くものは入れない。

 この矛盾する結界こそが長年にわたり聖域への侵入を阻んできた最大の障壁だ。ウィステリア公爵家は代々清廉潔白な当主だったか。そんな事は無い。力を手に入れるためこの扉を開けた者は居た。だがこの薄靄に阻まれた。騎士団においてもそうである。扉を開ける事が出来る者は薄靄に阻まれ、そうでないものは扉を開けることができなかった。

 では、神人の血を濃く引くものが、そうでないものに靄の先に進ませればよい。私と同じようにそう考えた者も過去にいた。だがロールアンクルは唯々諾々と従うようなものに倒されるような存在ではなかった。かくして今まで聖域は守られてきた。だがその封印は私によって破られる。


「ここから先は、ロールアンクルを倒さない限り私は進めません。くれぐれも命を大事にしてください。最初ですから何かのデータが一つでも持ってこれたら御の字ぐらいの気持でいてください」


「承知しました。しかし、こちらが攻める方にも関わらず、最優先は命、それに加え撤退が前提とは、なんとも奇妙な気分ですな」


 先鋒を務めるのはギルフォード男爵の部隊だ。この靄の中は10人までしか入れない。ギルフォード男爵を先頭に屈強な男たちが次々と靄の奥に消えていく。私にはこれから先はうまくいくように祈る事しかできない。



 そのドラゴンはまるで大理石のように白く巨大な身体を横たえ、長い微睡の中にいた。自分が目覚めるのはこの聖域を侵す者が居るときのみ。だがそのようなものはここ最近は表れていない。ここ最近が何年をさすのか、そんな事はどうでも良い。ただこの安らかで平穏な時が永遠に続けば満足だった。そのドラゴンこそロールアンクルである。

 だがその幸せな時は破られる。数百年、いや数千年ぶりか。ドラゴンはゆっくりと体を起こす。聖域を侵す愚か者をこの世から消し去る為に。



 ギルフォード達は慎重に歩を進めていた。靄の中には行った時から360度何処からも視線というか敵意を感じる。さるなら今の内だと警告するようだった。そして、急に靄が晴れると、まるで豪華な舞台のような一段高い場所があり、そこに巨大なドラゴンが鎮座しこちらを向いていた。その姿は恐ろしいというより神々しく、こちらを見つめているエメラルド色の目からは深い知性を感じる。”神竜”という言葉が自然に頭に浮かぶ。正に神の名を関するにふさわしい。


 ロールアンクルは侵入してきたものを見定める。統制は取れているようだが、個々の能力は過去に侵入した者達の誰よりも弱い気がする。過去には自分に1人で挑んだ猛者も居たものだ。あの者との戦いはそれなりに楽しめた。だが今度の者達にそれは期待できそうにない。ロールアンクルは大きく息を吸い込むと侵入者に向かって光り輝くブレスを吐き付けた。


 目の前のドラゴンが大きく口を開けたところで、ギルフォード達は現実に引き戻される。


「魔法障壁!最大強度だ!」


 ギルフォードの鋭い指示が飛ぶ。そして魔法障壁が張られた直後だった。ブレスが魔法障壁にあたり目もくらむ光があたりに充満する。


「何分持つ?」


「5分、いえ余裕を見ると3分です」


「くっ、編成ミスか。攻撃どころではないな。撤退を開始する。出口まで何とか維持せよ」


 ギルフォードは攻撃が不可能と判断するや、すぐに撤退の指示を出す。今回はギルフォードを含め戦士系5人に、魔法使い系5人だ。通常で考えるなら魔法使いの割合が多いほどだが、このブレスを防ぎながら攻撃をするとなると、もっと強力な魔法使いか、魔法使いの人数を多くすべきだった。

 ギルフォードの部隊は、魔法使いの集中が途切れないようにじりじりと下がり、何とかブレスの範囲外まで逃げ切った。


「なんて範囲だ……」


 ギルフォードは呟く。もう靄に包まれて正確には分からないが、ブレスの射程は約200m程だろう。そんな距離まで届くブレスなど聞いた事がない。入り口までは約300m、ドラゴンと接敵するほど近づいては居ないが、せいぜい50m程の距離だった。念には念を入れ、まだドラゴンが本気を出していないと考えるなら、もうこの靄に入った時から、範囲内と考えた方が良い。


「魔法障壁は解くな」


 ギルフォードの部隊は少し撤退の速度を上げ、何とか扉までたどり着く。そして扉をくぐった時に感じたのは、攻撃が一度も出来ず、すぐに撤退した悔しさより、生き残った安堵だった。

 ギルフォードは気持ちを落ち着かせるため、何度か深呼吸をする。そして公爵令嬢の視線に気づく。公爵令嬢は自分達が靄の中に入った時と同じ場所に立っていた。実は扉が閉まらないようにそこに立って押さえているのだが、その立ち姿からはそんな感じは受けない。

 それがどれぐらいの力が必要なのかは分からない。だが、ただ立っているだけでも、それなりに疲れるものだ。ましてや自分達には決して開けない扉。決して軽く押さえている訳ではないだろう。それに比べ自分達は結果だけ見れば行って帰ってきただけ。それだけで表面上は無傷だが、精神的には満身創痍である。

 開いている扉から次の部隊が入っていくのが見える。ギルフォードは急に自分が恥ずかしくなった。


 ロールアンクルは敵の情けなさに半ば呆れていた。ブレスを吐いた瞬間それを防いだのはまあ良しとしよう、しかしすぐに撤退とは何事か。一矢報いるという心構えなどまるで感じなかった。軟弱な敵など消し去ってくれるとばかりにブレスを吐き続けたが、残念ながら防御に専念した液の防壁を破ることは叶わず、逃げ去られてしまう。

 実につまらない敵だった。まあ、長い年月の中でそういう事もあるだろう。ロールアンクルは再びまどろもうとする。だがすぐに聖域に侵入する者がいることを感じる。それは今までになかった事だった。


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