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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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模擬戦

 冬も深まり、領都ユリエナスにも雪がちらほらと舞うようになった頃、私は一つの重大な決断をした。神竜ロールアンクスの討伐である。ゲームのシナリオが始まるのは私の誕生日の2ヶ月前、今年の7月1日だ。それまでには私本来の力を手に入れたい。もう少し討伐隊のレベルを上げたい気はするが、私の考えている討伐方法がうまくいくとは限らない。それを考えるともう行動を起こすべきだ。

 私は騎士団に創立以来行われたことがない、全力出撃を命じた。表の理由は各地で暴れているモンスターを退治するため。そして本来の理由は騎士団員を騎士団本部の建物から追い出すためだ。何故なら騎士団本部の奥にある、厳重に守られた扉こそ神竜ロールアンクスの居場所へと通じる扉なのだ。

 騎士団と入れ替えにロールアンクス討伐の為に選抜された部隊を入れる。多少不審がる者は居るだろうが、お題目は文句のつけようの無いものだ。バモガンがやったように無謀な討伐をさせるわけではない。十分な戦力とそれに見合う補給物資を用意した。

 準備の整った部隊がちらほらと出発する頃、私の元に騎士団幹部6人が尋ねてきた。おそらくこの出撃の理由を尋ねに来たのだろう。だが、幹部6人とはいささか大げさだなと思う。騎士団の目的の一つがロールアンクスの守護だ。だから私は騎士団の者を討伐隊にはいれていない。それに、彼らには失礼だがレベル不足だ。ロジーレだけは何とか最低限のレベルをクリアしているが、後はそれ以下。戦いが始まったら鎧袖一触にされかねない。

 私はお引き取り願うにしても、会いもしないのはさすがに失礼だろうと思い、別邸の食堂へ案内するように指示を出す。別邸には他に会議室らしきものがないからだ。

 食堂へ入ってきた6人はある種の決意を固めているように見える。何となく想像できるが、その決意は別のところで発揮してほしい。


「さて、どうして騎士団の幹部が出撃前の忙しい時に私に面会を希望したのでしょう?」


 私が聞くと、6人を代表してキザラートが答える。


「この前代未聞の騎士団出撃の意味についてです」


 私は可愛らしく首を傾げ、しらばっくれようとする。だが、残念ながら彼らの決意は固い様だ。翻意を促すが聞き入れてもらえなかった。ならば彼らにはそれを知る為には力不足であることを思い知ってもらうしかない。残酷なようだが私は人材を無駄死にさせる趣味はない。


 私は日を改め訓練所で模擬戦を行うことにした。相手をするのは私が手塩にかけて育てた史上最強の戦闘メイド隊。その長を務めるティータ、ヘゼル、リヤ、トルセア、スレラの5人である。レベルは驚異の40。もはやその力はゲームだったら単独でメインシナリオをクリアできかねない程である。それに単独で抗う事が出来るのは、私が知る中ではレベル33まで上がったギルフォード男爵とレベル35まで上がったレヘンシア騎士のみ。レベルと生きてきた年数から考えて、ロジーレはいい勝負をするかもしれないが、他の者は相手にもならないだろう。

 私は元メイドの5人を集めて小声で指示をする。


「分かってはいると思うけど、間違っても殺さないでね。彼らは貴重な人材なの」


 相手の長所や短所、戦い方などにどう対応するかなど細かい指示など出すつもりはない。出来れば無傷で、それが無理なら後遺症が残らない程度の傷で勝てれば十分だ。彼らは個人としての力量はティータたちに劣るかもしれないが、千の軍隊、場合によっては万の軍隊を運用できる貴重な人材なのだ。


 対戦相手の組み合わせは騎士団が希望した通りに行う。武器も対戦相手に応じて変えてよしとした。これぐらいのハンデではどうにもならないだろうが、全力を出し切って負けたのなら文句は出ないだろうとの配慮だ。

 模擬戦の最初の試合はティータとキザラートだ。ティータは私の予想に反して攻撃的な戦士になっている。使うのはティータの身長より刃渡りが長い特大剣だ。一応鞘には入っているが、当たればただでは済まない。ティータは最初は槍を使っていたのだが、その内物足りなくなり、リーチが長い特大剣を使うようになった。その重さは気にならない程の力を持っている。対するキザラートは一般的なロングソードだ。


「始め!」


 合図とともにティータが踏み込み、特大剣を横に振るう。ブンという音が離れているここからも聞こえるような速度の攻撃だ。当たっていたなら、鎧の上からでも肋骨の数本は折れていただろう。だが、キザラートはそれを間一髪で避け、踏み込もうとする。だが、それを辞め、更に後ろに下がる。その瞬間、ティータの攻撃が空を切る。実に素早い切り返しだ。正直ブンブンと横に振っているだけで大抵の敵はなすすべもなくやられてしまう。だが、キザラートはその攻撃を避け続けた。ティータの顔に僅かに焦りが浮かぶ。ティータとて剣術の訓練はしたのだ、ただ単調に横に振り回しているだけではない。時折突きも入れるがやはり躱される。とは言ってもキザラートは攻撃らしい攻撃はしていない。避けるのに全力を注いでいるようだ。ティータの特大剣は受けることはまず叶わない。受けた剣をへし折り持ち主ごと吹き飛ばす威力がある。だがどんな攻撃でも当たらなければその威力を発揮しない。

 ブンブンとティータの剣が風を切る音だけが聞こえる。そして決着の瞬間がやってきた。ティータが振り下ろしから、振り上げの攻撃をした瞬間。おそらく常人では気付きもしないわずかな隙、そこを狙ってキザラートは同じく剣を振り上げ、ティータの剣に当てる。思いの外剣は高く上がり、胴ががら空きになる。キザラートは素早く飛び込み、心臓の部分に剣を当てる。


「勝負あり!」


 審判の声が響く。私は信じられなかった。だが、現実は現実だ。ティータは決して動きが悪かったわけではない。キザラートを褒めるべきだろう。


 次はヘゼルとジフロネットだ。ヘゼルは特別製の大きなバトルアックスを使う。こちらは大体予想通りに成長したと言って良いだろう。その筋力、敏捷力はティータを上回る。対するジフロネットは槍を使う。


「始め!」


 今回は先ほどと逆の展開になった。間合いの外から素早く突きを出すジフロネットの攻撃を、ヘゼルが次々と避けていく。バトルアックスは剣と違って突きはできない。どうしても攻撃するために時間がいる。だが、その時間をジフロネットは与えなかった。じりじりと時間が過ぎていく中、ヘゼルが動く。器用にバトルアックスに槍を絡ませ、奪い取る。だがそれこそがジフロネットの狙っていた事だった。思ったよりも抵抗なく槍が絡めとられたことで、ヘゼルに隙が生まれる。その隙にジフロネットは間合いを詰める。この場合はヘゼルも武器を捨てればよかったのだろう。そうすれば敏捷性を生かし、また違った戦いができたはずだ。だがその判断が出来なかった。ヘゼルの首筋に短剣が突き付けられる。


「勝負あり!」


 審判の声が響く。私は信じられなかった。


 次の試合はトルセアとルーシェズだ。私は嫌な予感に苛まれる。


「始め!」


 合図と同時にトルセアは前2試合を見たせいか、最初から全力攻撃だ。無数ともいえる氷の槍を作り出しルーシェズに絶え間なく浴びせる。ルーシェズは魔法障壁を張り、防戦一方のように見える。だがそれは違う。ルーシェズは槍の軌道を正確に見切り必要最小限の部分に魔法障壁を張っている。それでもはた目にはトルセアが押しているように思えただろう。実際自分のMPの量を信じてそのまま攻撃し続ければ勝ったかもしれない。だがトルセアは埒が明かないと別の攻撃方法に変えようとする。高レベルの対人戦では。そのような事をするにはそれなりの準備がいる。押し続けているうちに次の手を打っておくべきだったのだ。氷の槍の連続攻撃がやんだ瞬間。トルセアの後に氷の槍ではなく棒が出現し、トルセアに直撃する。トルセアは背中を強く押され突っ伏してしまう。


「勝負あり!」


 審判の無情な声が響く。3度連続で負けたのだ。残るロジーレには勝てるとは思えないし、参謀の2人にはすでに負けている。誰が負けたのか。それは私だ。この勝負はティータ達が破れたわけではない。レベル差を過信して勝負を挑んだ私が負けたのだ。


「そこまででいいでしょう。騎士団の皆様に惜しみない拍手を」


 観客に回っていた兵士たちから惜しみない拍手が勝者に送られる。私もそれに加わった。


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