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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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公爵令嬢、裁定者になる

 さて予定外ではあるが、公爵代行であるバモガンを支配下に置いた私は、本邸に移り一流のメイドや執事に奉仕を受けながら豪華な執務室で仕事をしている……なんてことはなく、相変わらず別邸の地下室にいる。建築技術レベルが最高の私やホムンクルス達が2年半以上かけた上、公爵家の宝物庫から掠め取った……もとい、借りたお金をふんだんに使った内装や調度品は本邸のものと比べても遜色はない。それに加えてプライバシーの守られ方が段違いだ。

 片や豪華な調度品に囲まれてはいるものの、至る所でメイドや執事が仕事をし、食事の時間は決まっており、マナーが悪いものならメイドや執事から生家にどんな噂が行くか気を配らなければならず、無駄に広い為に使い勝手が悪く、服装もいつもきちんとしなければならない生活。片や気の置けない仲であるホムンクルス達しか周りにはおらず、食事の時間は自由、しかも好きなものを好きな時間に好きなだけ食べられ、使い勝手がいい部屋に自分の好みの調度品、疲れたらドレスのままベッドにダイブ、時にはそのドレスすら着ないでも良い生活。前者が良いと思うものは殆どいないだろう。しかも後者は地下室である事と、密閉度が高い事で、常に部屋全体が魔法で適温に保たれている。本邸でもそれは出来なくはないが、広いし密閉もされていないので魔力を使う。

 正式に女公爵になったあかつきには、本邸を使わざるを得ないだろうがそれまではこの快適な部屋で過ごしたい。いや、女公爵になった後も可能な限りこの部屋で過ごしたい。


 とまあ、今の環境が如何に恵まれているかを再認識したところで、目の前に突き付けられた残酷な現実に向かい合う。それは書類の山だ。公爵家全体で農業改革、行政改革、軍事改革、経済改革をしたことで様々な事が動き出している。それは公爵家周辺部でやっていた時の比ではない。これは、如何に作業環境が良かろうと減るものではない。効率がいい分積み上げられた書類の量自体は減っていると思うけれども……もちろんホムンクルス達にふれる分は全て振っている。今はからかいに行く余裕もない。

 一応一回懲りたので疲労ゲージには気を付けているが、度々レッドゾーンに入っている。これでは私の誕生祭をやるどころの話ではない。それもこれも、バモガンの屑が有用な人材を、意見を言うので気に入らないとか、危険だとかで殺していたせいだ。牢屋に入れられていたものは助けたが、衰弱しきっていて、すぐには復帰できない。

 このままでは何時か死ぬ。いや本当に冗談抜きで。また過労死で死ぬのは嫌だが、書類が滞るとどこかで餓死や病死、若しくは現状に悲観して自殺する者が出ているかもしれないと思うとなかなか止められない。私はそういう訳で円卓会議を開いた。


「あー、皆も分かっていると思いますが、このままだと私はシナリオが始まる前に多分死にます。というか何度か死にかけました。流石に現状の改善が必要です」


 私は皆を見渡して力なく言う。席に座った皆も心なしかやつれ、目の下に隠しきれないクマが出来ている。


「私達も疲労値なんてステータスは無いけど、このままじゃ死ぬのは分かるわ。というか私も多分死にかけたわ。この間ベッドで寝ようと思って移動したつもりが、いつの間にか床で寝てたもの……」


 力なくエナが答える。皆を代表しての発言だろう。他の皆も頷いている。


「はあ、仕事ができる人材が急に仕官して来てくれないかしら……」


「イスナーン。現実逃避はダメよ」


 トゥリアがイスナーンをたしなめる。だがそういうトゥリアも同じ気持ちだろう。


「この際贅沢は言ってられないわ。とりあえず問題が少ない地域の派遣官僚はもう代官や町長に格上げすればいいわ。大きな都市以外は何か起きたとき対応しても何とかなるでしょ。一々私達が判断するのはもう無理よ」


「そうね。多少の横領ぐらいは見逃しましょう……」


 私はエナの意見に賛同する。無実の罪を着せ殺すようなものは別だが、このままでは私は勿論のこと、ホムンクルス達も死んでしまう。円卓会議はその案を採用して終わった。


 そして取りあえず頭をスッキリさせるために、一旦緊急以外の仕事を無視し疲労を無くすまで休み、書類を地域ごとに整理する。

 するとある都市だけ突出して書類が多いことが分かる。中身は裁判の再審を求めるもの、こまごまとした許可書の発行を求めるもの、商業ギルド経由の嘆願書、はては隣がうるさいとの苦情や落とし物の捜索許可まである。いや、なんでそんなものまであるのって感じだ。ままで疑問に思わなかった私は、やはり疲れていたのだろう。

 その突出して書類が多い都市、それはアナトリ商会の本部があるタヒネリアだった。


「あんのガマガエル野郎!」


 私は思わず口汚い言葉で罵る。忙しさにかまけてあいつの処理を後回しにしたのがいけなかった。どうでも良いモブキャラが、私をここまで苦しめたとは許すまじ。

 私はすぐに騎士団を引き連れてタヒネリアに向かった。アナトリ商会に転移すると、そこで一番いい馬車と騎士団用の馬を用意してもらう。


「お嬢様。そんなに慌ててどうなさったのです」


 現在私が忙しい為、会頭代理としてアナトリ商会を切り盛りしているノグワーズが尋ねる。


「代官を捕まえるの。丁度いいわ貴方も来て」


「はい?」


 事情がよく呑み込めていないノグワーズを馬車に詰め込み、城へと向かう。私が禁止したにも関わらず、未だに城壁に死体が吊り下げられている。比較的新しいものもあるようだ。私の許可なく死刑は禁止したにも関わらずである。それだけでも許しがたい。

 私は騎士団の力も借りずかずかと城の中に入っていく。そして以前来た扉を開けると、前と同じようにジノードは昼間から酔っぱらっていた。


「ノックもせずに一体なんだ、無礼者め!」


 ジノードは赤い顔をさらに赤くして叫ぶ。


「私はセシリア・エル・ウィステリアよ。私の名で勝手に死刑にするのを禁じたのに貴方それを破ったわね」


 私はジノードに問い詰める。だがジノードは平気な顔をしている。


「ああ、そのような事でわざわざ公爵ご令嬢様がいらっしゃった訳ですか。私はバモガン様にこの都市を一任されているのですよ。城下の賑わいを見たでしょう。私がここに来た時はそれもう寂れた街でした。ここまでするのには苦労したものです。あの見せしめもその一環ですよ。ご令嬢様のお手を煩わせるような大した罪は犯していません。私の一存で十分です。まあ、城の奥にこもられているご令嬢様には分からない事があるものです。フォッフォッフォッ」


 だめだこりゃ、情勢の変化にも気づけないなど、この都市を任せるに値しない。というか有害だ。


「そう。分かったわ。じゃあ、貴方の刑は私の一存でするわね」


 私が騎士団に合図すると、騎士団はジノードを捕まえ縛り上げる。


「おのれ!何をする!小娘が儂にこんな事をしてバモガン様が黙っていると思うなよ!」


 何か喚いているが、例えバモガンが健在だったとしても、こんな小物のことを気にするか疑問だ。


 私は騎士団に命じて広場に十字架をたてさせ、ジノードを縛り付けさせる。広場には何事かと遠巻きに人が集まっている。私は自ら「ご自由にどうぞ」と書かれた看板を横に置く。


「みなさん。セシリア・エル・ウィステリアの名の下、このものを自由にすることを許可します。もし、皆さんが逃がすと言うのならそれでも構いません」


 私がそう宣言すると群衆の目が血走り、殺意が広がる。私は満足をして広場を去った。きっと私が思いもつかないような残酷な死に方をするに違いない。しかし私はこの一連の処理を後で後悔することになった。


 仕事が一息付いたところで、私はジノードの処理を後悔しうなだれていた。


「どうしたの?」


 ジノードのところに一緒に行ったトゥリアが聞いてくる。


「肝心の、私の顔を忘れたとは言わせないわ、のセリフが言えなかったの……」


 そんな事で、なんてトゥリアは言わない。


「えええぇ!そんな私も協力したのに……」


 そう、基本的な性格は同じなのだ。私達は二人で暫くうなだれていた。



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