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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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公爵令嬢、主催者になる

「全滅、全滅じゃと……」


 家令が持ってきた知らせを受け、バモガンはわなわなと震える。そしてそのまま崩れ落ちるように、椅子に腰を下ろす。


「馬鹿な、そんな馬鹿な事が有るか……儂は一体どうすれば……」


 単純な戦闘というだけなら、バモガンが変化をすれば事足りる。だが、何かあるごとに一々バモガン自身が脅しに赴くわけにもいかないのは流石に分かる。それに変化はずっとそのままでいられるわけではない。あくまでも戦闘の時の一時的なものであり、一日にできる回数も決まっている。本来の力は大したものではないのだ。

 つまりバモガンの今の地位は本来の公爵代行、あくまでも正当な血筋の者が成人するまで、治世を補佐するための者に戻ったのである。今までのように好き勝手にはできない。


「そ、そうだ。騎士たちを叙勲してやろう。早速手配をいたせ」


 良い事を思いついたとばかりに、バモガンは家令に言いつける。今更ながら騎士団に取り入ろうという魂胆が見え見えである。


「恐れながら申し上げますと、もうお昼を過ぎております」


 家令が何時ものようにオドオドとした物言いではなく、ハッキリとした声で反論する。寧ろ馬鹿にする雰囲気まで持っているようにバモガンには感じられた。今までであれば、即座に殺していたところである。


「それがどうしたというのじゃ、夜までには間に合うであろう」


 確かに今から急がせても、周辺貴族たちを呼べるまでもなし、出せる料理もたかが知れているだろう。飾りつけも凝った物では間に合わない。式典は身内だけの簡素なものとなるだろう。それぐらいは分かる。だが今この時点でだれが叙勲できるだけの権限を持っているか、それを示すことが重要なのだ。


「叙勲式はもう始まっております。今から代行様の装いを準備しても式典の終わりには間に合わないでしょう。そのままの格好でいかれれば話は別ですが……」


 今のバモガンの装いは、起きたままの姿。とても式典に出ることが出来る格好ではない。


「なんじゃと!昼に式典を行うなど非常識極まりないではないか!」


 貴族の常識では式典の本番は夜に行うものである。ダンスや歌、そして酒を飲み、貴族同士で親睦を含め合い、若しくは牽制し、ある程度時間が経った頃にメインイベントとして行うのだ。

 特に中央貴族はその思いが大きい。フェーゼノン王国の王都は常に暗き月に太陽が隠され、夜のように暗い。空で最も明るいものは夜に輝くもう一つの月である。王都では当然ながら例え外で行う式典であっても、月が輝く夜に行われる。王都で行われる式典こそが至上と考える中央貴族にとって、昼間に式典を行うというのは非常識極まりない事だった。


「そんな事を言われましても、きちんとバモガン様の許可があるものですし……」


 家令は困ったようにくしゃくしゃになった紙を差し出す。最後まで読まず、家令に投げつけた例の計画書だ。


「おのれぇ。このままではすまさんぞ」


 バモガンは歯ぎしりをしながら、怒りに真っ赤になる。そして何とか打開策が無いか考え始めた。



 ユリエナスはここ数年で一番の賑わいを見せていた。それは大きな飾りのついた馬車に乗せられたドラゴンの頭と、討伐隊一行が到着した時に最高潮を見せる。勿論ドラゴンの頭は荷馬車から移し替えられたものだ。討伐隊一行も、旅装束ではなく、式典用の煌びやかな服を着ている。また討伐隊一行だけではなく、先導隊、音楽隊と続く。要するに凱旋パレードだ。

 大通りを通ると、両脇の建物の窓から沢山の花びらが撒かれる。季節は春真っ盛りと言う事もあり、まかれる花びらは色とりどりだ。それらを浴びながら、討伐隊一行は領民に笑顔で手を振り続ける。パレードのゴールは城ではなく、ユリエナスの中央広場だ。そこには祭壇が作られていた。

 討伐隊一行が到着すると、私は壇上に上がる。着ている服は勿論この時の為にあつらえたものだ。これでもかと高価な糸で刺繍をあしらった豪華なものである。ただ私の金髪を際立たせるため金糸は使われていない。私の頭の上には正当な公爵家の血筋であることを示すティアラが乗っている。

 討伐隊一行は広場に到着すると馬を降り、私と同じ壇上に上がり、片膝を立てて跪く。


「キザラート騎士団長、ルージェス魔術師団長、ジフロネット副騎士団長、ロジーレ副魔術師団長、ヨデルナ騎士参謀長、レルニート魔術師参謀長。よくぞドラゴンを倒し、1人も欠けることなく戻ってきてくれました。勇気、知恵、武力、そして団結力、どれか一つ欠けていてもこの偉業はなしえなかったでしょう。あなた方のその栄誉ある行動を賞賛し、ここに勲章と5つ星の短剣の授与をいたします」

 

 私の声は魔法により大きな声ではなくとも、広場に集まった人間の耳に届くようになっている。私が言い終わるや否や、大勢の民衆から歓声が上がる。勲章のみならず短剣を授与されることは稀である。一般人ならそれを見ることなど一生かかっても無いものの方が多い。それも短剣の中では最上位の5つ星の短剣である。そのレベルになると博識の者が話に聞いた事があるというレベルだ。実際ここ100年で授与されたことはない。

 私は柄にダイヤモンド、エメラルド、サファイア、ルビー、アメジストの5色の宝石が埋め込まれた短剣を一人づつ、自ら手を取って立たせ、渡していく。

 渡し終わると、また一行は跪いて、声をそろえて私に言う


「我々はこの命尽きるまで、ウィステリア公爵家の栄光を守ること、そして変わらぬ忠誠を誓います」


 広場が拍手でつつまれる。そして私達が壇上を降りると、ロジーレが収納魔法を操り、祭壇の上にドラゴンの死体をおく。驚きと歓声が沸き上がる。そして観衆の意識はこれからの事に向かう。なぜなら、少量とは言え、ドラゴンの肉が配られるのだ。一般人ではまず味わえないものだ、何代にもわたって話のタネになるだろう。

 私と討伐隊一行はそんな興奮した聴衆の中を抜けながら、城へと帰っていく。


「しかし、よろしいのですか、こんなものを頂いて。正直申し上げますと我々はこの短剣に見合った働きをしたとは思えませんが……」


 キザラート騎士団長が声を少しひそめて私に話しかける。


「いいえ。そんな事はございませんわ。最後にあんな手土産を頂いたとあっては、当たり前の事です、私はこれでも感謝しきれないと思っているぐらいですよ」


 手土産は何を意味しているのか。それが分からないものはここには居なかった。


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