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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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騎士団一行VS親衛隊

 街道を騎士団員一行は、大きなドラゴンの頭を荷台に乗せた馬車を交代で操りながら、のんびりと街道を進んでいた。二人一組で交代し、片方が御者を、片方が警戒を務めていた。他の4人は基本的に休憩である。死を覚悟しての旅だった行きと違って、実に穏やかな旅だ。ドラゴンの頭を警戒しているせいか、モンスターとの遭遇は無く、行く先々で賞賛と歓迎を受ける。自分達の手柄ではないので、後ろめたい気持ちはあったが、久し振りにみる人々の屈託のない笑顔は、騎士団員を明るい気持ちにさせていた。


「ふう、もう少しで領都だな。今晩モカナの町に泊まれば、いよいよ明日は領都か。公爵令嬢の名の下、街を挙げての祝祭の準備が行われてるらしいが、秘密裡にやれるようなもんじゃなし、どうやったのかねぇ」


 キザラートは横で御者を務めるヨデルナに欠伸をしながらなんとはなしに聞く。ちなみにモカナとは領都ユリエナスの近くにある宿場町だ。


「団長、気を緩めるのも程々にしてください。何が起こるのか分からないのですから。後、その質問に関しては、私には分からないとしか答えようがありません。私に言えることは私達はご令嬢を過小評価していたと言う事と、ご令嬢は少なくとも公爵代行を出し抜く策謀家であるか、それを計画できるブレインを持っているとういう事でしょうか。ただ単に美しいだけの人物ではないと思いますよ」


 ヨデルナはドラゴンを退治した後の令嬢の姿を思い出す。まだ幼さは残ってはいたが、女の自分から見ても美しい姿をしていた。黄金の髪がたなびき、光を反射した様は、まるで後光を放つ女神のようだった。


「それはいいねえ。王家との婚約発表がなされた時は、ウィステリア公爵家も王家に取り込まれ、他家と同じになるのかと暗澹たる気持ちになったものだが、逆に王子を尻に敷いてくれそうじゃないか。成人なさるまであと一年とちょっと、楽しみになってきたな」


「そうですね」


 フフッ、ククッと2人は笑い合う。帰路は何事も無く終わるかと思われた。急にキザラートが真剣な表情をし、前方を睨みつける。街道上に小さな点が見える。近づくにつれふらふらと歩いている人型の何かだというのが分かるようになった。ゾンビかと後にも合図し、武器を構える。馬車の速度を落とし、ゆっくり近づくと、それはボロボロに痛めつけられた、しかし生きている人間であった。

 キザラートは馬車を降り、警戒しながらも近づく。


「おい、お前。一体何者だ。何があった?」


「ああ、騎士様……助けてください……」


 男はキザラート達を見ると、安心したのか崩れ落ちる。キザラートは慌てて駆け寄り、抱き抱える。


「おい大丈夫か。一体何があった」


 キザラートが聞いている間にロジーレが駆け寄り、治癒の魔法をかけ始める。


「ああ。有難うございます。騎士様。昨晩公爵代行の親衛隊を名乗る者達が、町を占拠したのです。そして、町の住人を捕まえ磔台に縛り付けたのです。そして、私を何度も殴り、手の指を折り、ドラゴンの頭を荷台に乗せた騎士に会ったら、丸腰で町の広場に来るように言えと、言われたのです」


「あの代行の腰ぎんちゃく共が!」


 それを聞いたキザラートは激高する。キザラートだけではない、どの顔にも怒りが表に出ていた。



 モカナの町の広場には磔台が設置され、20人の人間がそこに縛られていた。それを親衛隊が囲んでいる。他の町の住人は不安げに家の窓から外を見ていた。昨晩いきなり来襲し、家に押し入り、人質を取ったのだ。そして町の人間に磔台をたてさせ、そこに人質を縛り付けた。その後一人の男を、何人かで殴るけるの暴行を加えた後、町の外へと追いやった。追いやった方向から、これから来るであろうドラゴン退治の騎士たちに何かを伝えさせようとしていると大抵の物が分かった。

 祝祭モードで数年ぶりに明るい雰囲気に包まれていた町が、一瞬にして暗澹たる雰囲気に包まれる。

 そして町中の者が眠れぬ夜が明け、時間が過ぎていく。長い間縛り付けられている人質はぐったりしている。


「総隊長。馬車が見えました。間違いなくドラゴンの頭を乗せてます」


 だいぶ日も傾き、空が赤く染まってきたころ、モカナ町の物見やぐらから、目標の接近を知らせる大きな声がする。


「予想通りの時間か。おい、人質に向けて槍を構えろ、すぐに突き刺せるようにな」


 1人や2人ならともかく20人もの人質を一度には助けることはできないだろうとの策である。


「「はっ」」


 だがしかし、親衛隊が槍を構えた瞬間、空から何本もの光の矢が頭に降り注ぎ、見えない風の刃が何人もの首を切り裂き、爆炎が辺りを包み込む。


「何が起きた!」


 爆炎の煙が晴れた時、そこには総隊長以外、死んでいるか、若しくは死にかけているかの親衛隊員が転がっていた。数人は魔法ではなく剣で斬り殺されたようにみえる。そして広場にはいつの間にか5人の騎士が立っており、自分の目の前には、もう一人剣を構えた男が立っていた。


「小賢しい真似をしないで、正々堂々ぶつかっていれば、そこそこいい勝負になったかもな。こちらにはウィステリア公爵家が誇る参謀長が2人もいるんだぜ。小手先の知恵ぐらいで相手になる訳ねぇだろう。馬鹿じゃねぇの」


 そう言って、立っていたのはキザラート騎士団長だった。


「くっ、貴様ぁ!」


 総隊長は腰に下げた剣を抜こうとする。だがそれより早く、頭の天辺から何かが体の中を通り抜ける感触がした。それが総隊長がこの世で感じた最後のものだった。

 総隊長の身体に赤い線が入り、そこから二つに分かれ、倒れる。一撃だった。


 親衛隊が全員倒れると、町中から歓声が上がる。そして、ドラゴンの頭を乗せた馬車が町にたどり着くと、更に町は興奮に包まれた。御者をやっていたのは、痛めつけられ伝言役となった男だった。


「ふむ。こちらには手練れの魔術師が3人もいるというのに、透明化の魔術の警戒も範囲攻撃の魔術の警戒もしないとは、本当に愚かじゃったな。卑怯な手を使ってくる相手に、わらわ達が騎士道精神を発揮する訳が無かろうに。まあ、ご令嬢への手土産ぐらいにはなったかのう」


 親衛隊の死体を、アンデットにならないように、燃やし尽くしながら、ロジーレはそう呟いたのであった。


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