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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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公爵令嬢、傍観者になる

「バモガンが面白い事やるみたいよ。何をやるか当ててみる?」


 地下の監視室から出てきたえなが、悪戯っぽく笑みを浮かべて言う。

 面白いこと?今城下では私の名の元、ドラゴン討伐成功の祝祭の準備が行われている。そろそろ義父も例の部屋から出て気付いているだろう。

 とりあえず、準備期間に邪魔が入らないように、この期間にあてがったフレッシュゴーレムは、何時ものゴブリンとドブネズミの肉に加え、わざわざ局部にミミズとタコを使った特別製のやつだ。気に入ったらしく、おかげで今まで邪魔は入っていない。

 今更邪魔をしたところで、面白いことが起こるとは思えない。

 ならば、この祝祭を自分が主導した事にする?いやいや、それは今更だし、失敗して怒り出す様を見るのはそれなりに楽しいだろうが、あくまでそれなりだ。

 私を呼び出して問い詰める?まあ、やるのはやるだろうが、別に面白くも何ともない。

 それにエナのあの表情からして、もっと馬鹿らしい事だ。


「うーん。準備した関係者を死刑にするとか?」


 関係者は内政の中心を担ってきたものだ。もちろんそうなったらフレッシュゴーレムを身代わりにするが、その者達は身を隠すことになる。そうなった後、仕事がまわらず、慌てる義父を見るのはちょっと面白いかもしれない。


「近いと言えば近いけど、当たりとは言えないかな。ドラゴン討伐に成功した騎士達一行を暗殺するみたい」


「はへ?」


 私は思わず変な声を出し、口がポカンと開いたままになる。


「暗殺って今更?」


 ドラゴンの頭を荷台に載せ、意気揚々と領都近くまで来ている一行を今更殺してどうしようと言うのだろう。それに一行はドラゴン戦にこそ勝てなかったとはいえ、義父の親衛隊が10人束になったところで相手にならない。


「親衛隊全員で殺しにかかるみたい」


「ばっかじゃないの?」


 私は思わず罵倒の言葉が口から飛び出す。義父の親衛隊はこのウィステリア公爵領内で、公爵代行という地位をふりかざさずに、個人的に動かせる数少ない人員だ。それをいくら相手が強いといっても、全員暗殺に向かわせるなど愚の骨頂と言っても良い。

 これが一か八かの戦争であるならば、戦力の集中は間違いではない。だが、そもそもそれでたおせるのなら、親衛隊がドラゴン討伐に行けば良かったのだ。

 絶対討伐は無理と思ったものを討伐した相手に、その討伐された相手以下の戦力を向けてどうしようというのか。しかも人数が人数だけに隠密行動は無理である。その道のプロでも難しいだろう。


「で、どうするの?」


 エナが笑いながら聞いてくる。


「敵が間違いを犯している時は、邪魔するなって言うでしょう」


「ナポレオン・ボナパルトの言葉だっけ」


「そっ。格言に従ってよほどのことがない限り放っておくわ。彼等の実力も私達に見せて貰わないとね。ウィザードアイと使い魔ぐらいは追跡させておく事にしましょうか」


 親衛隊は選りすぐっただけあって、平均レベルはそこそこあるものの、最高レベルは総隊長の12、7~8レベルの者が数人、後は5レベル前後だ。精鋭には違いないが、単純に戦力比でいったらロジーレと、後1人誰か居れば事足りる。負けることなどまず有り得ない。仮に負けたとしたら、私が騎士達を過大評価していたか、親衛隊を過小評価していたかだ。その時はその時で計画変更をすれば良い。どの道味方を過大評価したり、敵を過小評価していたらそのうち失敗する。


「それはそれとして、親衛隊を失った後、義父がどうするかはちょっと興味があるかも」


「でしょう!」


 私の呟きにエナが勢いよく同意する。私とエナは見つめ合い、どちらからともなく吹き出し、笑い合った。


 深夜城門から親衛隊がフル武装で外に出る。本人達はひっそりとしているつもりだろうが、約50人が軍馬に乗って行軍するのだ。しかもかつて光の都とまで言われた明るい街中を。更に言えば、祝祭に間に合わせようと深夜まで作業している人々の中を。目立たないと言う方がおかしいだろう。

 確かに真っ昼間よりは見られた人数は少ないかも知れない。だが、少なくはない人数の人間に見られている。暗殺を旨とする者がいたら、小一時間問いただすだけではすまないだろう。

 目立たないようにするには、逆に人の出入りが多い昼間に数回に分けて出るべきだったのだ。だがそんな事は訓練を受けていない親衛隊には分からない。


「総隊長これからどうしますか?」


 そう聞いてくるのは、総隊長の右腕と言うべき副官だ。取りあえず街の外には出たものの、ここまで領都に近づいた騎士団員が野宿をしているとは思えないし、夜にわざわざ移動しているとも思えない。ここらあたりは平野部で、幾ら寂れたといっても、街道やその周辺が荒れ果てている訳でもない。夜襲も奇襲も待ち伏せも難しいと思われた。


「ふん。まともに戦ったらこちらに損害が出る。一番近くの町の奴らを人質に取り、奴らを丸腰で広場にでも呼び出し嬲り殺しにすればいい。英雄だのなんだのもてはやされる奴らだ。人質を無視は出来んだろうよ。お前達もそれなら安心だろう」


 それを聞いて、副官はほっとする。正直正面から戦えばいくら人数の差があるとはいえ、相手は手練れ、多くの犠牲者が出るだろう。部下の犠牲など知った事ではないが、その犠牲者の中に自分が入る可能性は大いにある。命令は大事だが自分の命はもっと大事なのだ。命令は暗殺だが、何でもいいから殺せれば文句は言われないだろう。


「もし現れなかったら、ドラゴン殺しの英雄様が保身のために逃げたと吹聴すればいいわけですな」


「そういう事だ」


 そう隊長と副官はそう言って、いやらしく笑った。



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