公爵令嬢、死肉提供者になる
時は少し戻り、公爵家別邸の中……
私は湯あみを何時もより早めに終えると、ティータ以外の4人を下がらせる。4人は何かを察したように、何も言わず素直に従った。
「付いて来てちょうだい」
私はティータを連れて、寝室へと入る。寝室の扉を閉めると、地下室の階段を開く。
「お嬢様。これはいったい」
ティータは少し驚いているようだ。まさか自分が隅々まで掃除していた部屋に、こんな隠し通路があるとは思わなかったのだろう。
私は、階段をスタスタと降りていく。地下室に入ると、テッセラがいた。
「お嬢様が2人……」
ティータは驚いて、私とテッセラを何度も交互に見ている。ティータのレベルで私の幻術を見破るのは不可能だ。
「今まで隠してて、ごめんなさいね。私には影武者がいたの。万が一にもバレるわけにはいかなかったから、貴方にも秘密にしていたのよ」
「あの……では、なぜ今それを私に教えるのでしょうか?」
ティータが少し怯えたような顔をする。
「それはあなたが今から死ぬから。勿論本当に死ぬわけじゃないけど。義父に呼び出されたのでしょう。あいつ、平民の娘を拷問して殺しているのよね。趣味が悪いわ。で、私はその平民の影武者をたてて、こっそり自分の部下を増やしているの。義父から実権を取り戻すためにね。貴方も私の部下として働いてもらうわ。荒事もやってもらうことになると思うけど大丈夫?」
ティータは予想はしていたのだろうが、改めて聞かされるとやはり驚いたようだ。暫く考えた後、ようやく状況を飲み込めたようで、恭しく頭を下げて言う。
「命を救っていただくのです。私の命はお嬢様のもの。何なりとご命令ください」
「貴方の忠義は良く知っているもの。期待しているわ」
私はティータを見つめてニッコリとほほ笑んだ。
「しかし、私の影武者を用意するとはどうされるのでしょう?流石に自分の為に、他の誰かを犠牲にする事は出来ません」
ティータはこの世界の人間にしては優しい。そこが気に入っている部分の一つだ。どうかその心をこれからも持ち続けてほしいものだ。
「それは大丈夫よ。テッセラ準備は出来てるわよね」
「もちろんよ。それにしてもあのエロオヤジもお盛んよね。下手したら3日持たないから、意外と時間が取られるわ。中に埋め込む魔石もゴブリンのものとは言え、ただじゃないんだし」
テッセラは不満をこぼす。気持ちは分かる。私も同じことを考えていたからだ。
「良い方に考えましょう。そのおかげで、こちら側の人間も増えているんだし、くず魔石に近い魔石の流通で、辺境にもお金が回り始めているわ」
「まあ、そう考える事も出来るわね」
私の言葉に、テッセラは少し肩をすくめて同意する。
「あのー。いったい何の話でしょうか?」
頭の上に?マークを浮かべながら、ティータが尋ねてくる。いけないいけない、ちょっと置いてけぼりにしてしまった。
「ごめんなさいね。ちょっと脱線したわ。貴方の髪も必要だし、見てもらった方が早いから、ちょっとこちらへ来て」
そう言って私はティータを別の部屋に連れて行く。そこには粗末なベッドがあり、何とか人型に見える物体が上に乗っていた。何かの動物の肉を、雑な縫合でくっ付けているようだ。
「最近雑になったんじゃない……」
「どうせあのエロオヤジには分からないから良いのよ」
テッセラは平然としてそう答える。
「まあ、いいわ。じゃあ、ちょっと髪の毛を頂戴ね」
私はティータの髪を手ですく、それだけで2、3本ぐらいの髪の毛は手に入る。それを人間型の肉の塊の胸に埋め込む。念じると、みるみるうちに肉の形が整っていき、ティータとそっくりになる。
「これはいったい……」
ティータは驚いて目を丸くしている。
「フレッシュゴーレムっていうの。ゾンビと違ってアンデッドじゃないわ。似たようなものだけどね。話せる分少し知能は高いかしら。後、勝手に人を襲ったりはしないわね」
「はぁ……」
ティータは何と答えたらいいか、分からないらしい。
「じゃあ貴方、ティータに代わってエロオヤジの寝室に向かってちょうだい」
「ハイ。ワカリマシタ」
フレッシュゴーレムはぎこちなく立ち上がって、そう答える。
「それと、暴力を与えられたらちゃんと悲鳴をあげるのよ。後、お許しくださいとか、助けてくださいとか、時々言ってね」
「ショウチシマシタ。ヒメイアゲマス。オユルシクダサイ、タスケテクダサイ、イイマス」
フレッシュゴーレムはそう答えて、部屋から出て行く。
「ちなみに何の骨肉を使ったの?」
私はテッセラに聞く。
「ゴブリンとドブネズミの骨肉よ。最初は羊やヤギの肉を使ってたんだけど、あのエロオヤジの為に、食べ物を粗末にしたくないじゃない。その点ゴブリンやドブネズミの骨肉は、これぐらいしか使い道がないしね。それに、あの地下室のおかげで、廃棄する肉が増えてるでしょう。それ目当てにドブネズミが城の地下で増えているのよね。一応退治はしてるけど、きりがないの。全く自分の城じゃあるまいし、もっときれいに使ってほしいわ」
「それには同意するわね。それはそうと、これで、貴方は夜伽の相手をして、義父に殺された事になる訳よ」
そうティータに説明する。
「あの、もしかして行方不明になったメイドは、全て助かっているんですか?」
「そうよ。あんなエロオヤジに殺されるなんてかわいそうだし、第一そんな無念の死を遂げた部屋のある城になんて、住み続けたくないわ。ただ、その後は自由って訳じゃなく、私の為に動いてもらっているけどね。貴方にも期待してるわよ」
「お嬢様の望みのままに」
ティータは再度恭しく頭を下げた。
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