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ウィステリア公爵令嬢奮闘記~転生したのは破滅間近の死にゲー世界  作者: 地水火風


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バモガンの欲望

「全く忌々しい。トロールごときが儂の花嫁を奪いよって……」


 バモガンは呼び鈴を鳴らす。すぐに先ほどの執事がやってくる。


「お呼びでしょうか」


 執事は恭しく頭を下げる。心なしか少し震えている。バモガンが怒っているのを感じたからだ。下手な事をしたら殺されると、執事は知っていた。


「儂の花嫁がトロールに攫われた。すぐに捜索隊を出すように騎士団に伝えよ」


「は、はい承知いたしました」


 執事は一礼し、慌てて部屋を後にする。


 捜索隊は副騎士団長以下10人で結成され、その日のうちに出発した。そして、5日後に帰還したが、減りはしていなかったが、増えてもいなかった。つまりは誰も見つからなかった。


 調査団が帰還した次の日の朝、副騎士団長は会議室にて、バモガンに調査報告をする。


「調査の結果。襲撃されたと思わしき場所から、血痕、鎧の欠片、僅かな骨片は見つかりましたが、生きた人間は見つかりませんでした。男爵ご令嬢が乗られていた馬車は、粉々になっており、男爵ご令嬢は見つかりませんでした。逃げた痕跡も見つかりませんでした。

 数人の兵士が逃げた跡があったのですが、逃げ延びた一人を除きすべて途中で途切れていました。付近の状況から恐らくトロール以外のモンスターに襲われたと思われます。念の為付近の主だった村を調査しましたが、他に逃げ延びた者は居ませんでした。

 なお、トロールの大きさは、折れていた木の枝から推測して4m前後と思われます。追跡をしたところ、人間や馬を食った痕跡が見つかりました。ご令嬢が着ていたと思われる衣服の一部が見つかった為、食われたと判断し、帰還しました。討伐のご命令を頂ければ、すぐに向かいます」


 トロールに襲われたと聞いた時から、生き残っていると言う事は期待はしていなかったが、改めて結果を聞かされるとバモガンはがっかりした。


「実に残念だ。まあ、死んでしまったものは仕方がない。どこかに良い娘がいないものかのう……」


 バモガンは思いを馳せる。普通の貴族令嬢は、流石にまともに扱わないとまずい事は理解している。ウィステリア公爵家はフェーゼノン王国随一の力を持つが、それを完全に意のままにはできない。また、代行という立場で無茶をすれば、王家はほかの誰かに取って代わらせるだろう。その点、大して貴族に影響力のない、成り上がりの男爵の娘というのは、非常に都合が良いものだった。


「ふーむ。すぐには思いつかんな……暫くは平民の娘で我慢するか……また作れば良いとはいえ、最初に平民の娘に使うには、ちと金をかけすぎたな……」


 バモガンはもうトロールの事は頭から消え、地下の拷問部屋をどう使うかに関心がいっていた。しかも、完全に平民を蔑み、拷問具ですら金を掛けたのがもったいない、と思っていた。

 それを見た副騎士団長は、顔を伏せ僅かに苦い顔をする。ウィステリア女公爵が存命の頃は、街道に出没するような危険なトロールを放置する、などと言う事は考えられなかった。それどころか最近は、領内のモンスターや害獣討伐ですら、おざなりになっている。モンスターによる被害報告は増えるばかりだ。


「公爵代行様。ご判断をお願いします」


 副騎士団長はいつまでたってもブツブツと、女の事ばかり言っているバモガンに、痺れを切らし尋ねる。


「ん?まだいたのか。もう下がっても良いぞ」


 バモガンは、副騎士団長を一瞥して、興味なさそうに答える。副騎士団長は何とか怒りを鎮め部屋を後にした。


 バモガンは豪華な昼食を食べながら、辺りを見回す。給仕をしているメイドはどれも容姿端麗だが、それなりに高位の貴族の娘たちだ。さすがに3女、4女といった者達だが、気軽に手を出せるものではない。出すとしても、事前に根回しは必要だ。

 外を見ると庭の手入れをしている、下働きをする下級メイドの姿が見える。給仕をしている者達には劣るが、それでも普通の感覚では十分美人の部類に入る顔立ちの若い女性だった。


「ふむ。多少やぼったさが残るが、我慢できない事は無いか……おい、あそこにいるメイドを連れてこい」


 バモガンは庭にいる女性を指さし、そばに控えている従者に命令をする。従者は素早く部屋を出て、女性を連れてくる。連れてこられた女性は、なぜ連れてこられたのか分からず、おどおどしている。


「あ、あのう。何か失礼な事でもしましたでしょうか……」


 おずおずとそう尋ねる。バモガンはねっとりとした視線で、女性を上から下まで舐めまわすように見る。外で仕事をしているせいか多少日焼けをしているが、思ったより顔立ちは悪くない。それに、良く動いているせいか引き締まった体つきも悪くない。


「娘。お前の家名はなんだ?」


 下働きをしている女だ、有力な貴族の娘ではないはず、とバモガンは思っていたが念の為に尋ねる。


「い、いえ、ただの町人の娘なので、家名とかは……」


 娘がそう答えると、バモガンはニヤリといやらしい笑みを浮かべる。


「そうかそうか。今日の仕事はもうしなくていい。その代わり夜になったら儂の寝室に来い。儂の夜伽を命じてやろう。光栄に思うが良い。誰ぞ、その娘を風呂に入れて念入りに洗い、化粧をさせておけ。服はそうだな……死んだ妻のものがまだ残っているだろう。その中から適当に見繕っておけ」


「えっ、はっ?」


 平民の娘が、貴族の夜伽を命じられることは、必ずしも悪いとは言えない。中には売り込もうとする娘もいる。だが、女性は悪い予感に背筋が寒くなっていた。


 そしてその夜以降、城の中でその娘を見た者は誰もいなかった。



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