公爵令嬢、首領になる
モンスター以外の素材は1体当たりの量は少なかったものの、やはり3体分となるとそれなりの量になるし、貴重な物も多かったため、揃うのに1週間を必要とした。勿論使ったのは最初に利用した店だ。老婆は多くの注文に大喜びだった。
私は最初よりも大分手慣れた感じで、3体のホムンクルスを作る。レベルはエナと同じ50である。モンスターの素材が良かったため、もっとレベルの高いホムンクルスを作ることも出来たが、何となく最初に作ったエナよりレベルを高くするのは躊躇ってしまった。モンスターの素材を集めたのはエナだしね……
性格も同じにしたため、目を開けた後の行動も同じだった。流石に今回、服を着せる作業はエナにやらせたが。
「マスターが私の身体を拭いたときに、最初微妙な顔をしていた気持ちが良く分かったわ」
エナが気恥ずかしいような、困ったような、微妙な顔をしている。
「分かっていただけたようで何より。名前は順番にイスナーン、トゥリア、テッセラで良いかしら?」
「「「いいわよ」」」
3人の元気な声が地下室に響く。
「でも、私だけアラビア語なのね」
イスナーンがそう聞いてくる。
「ズィオというのは響きがね。それよりもさすがに何か特徴を付けないと混乱するわ。何が良いかしら?」
私を含めて全く同じ外見の者が5人いるとなにがなんだか、という感じになる。私がオリジナルだよね、と心配になるほどだ。
「それなら、髪の毛と瞳の色を変えて、その上からマスターに幻術を掛けてもらいましょう。勿論私達だけは分かるようにして。マスターよりレベルが上の人はいないんだし、それだったら見破れないでしょう」
そうエナが提案する。幻術の魔法はよほどのことがない限り、術者よりレベルが低くては見破れない。私の幻術をもし見破られるのなら、ホムンクルスの正体も見抜かれるだろう。悪くはない案だ。
「じゃあ、定番だけど私はレッドね」
エナが最初に言う。
「それじゃあ私はブルー」
次にいうのはイスナーンだ。
「私はその流れだとイエローかしら。でもマスターと似ているからグリーンが良いわ」
3番目にトゥリアが言う。
「うーん。私もピンクだとエナと同じ系統だからブラックにするわ」
最後にテッセラが決める。
「なんか四天王って感じで良いわね」
「そうね。もし最初にやられることが有ったら、ちゃんと私は四天王の中でも最弱、とか最後に言うのよ」
「それは当然ね。言う余裕がなかったらあとで、奴は四天王の中では最弱、とちゃんと誰か言うのよ」
「もちろんよ」
女三人寄れば姦しい、とは言われるが、私と同じ顔でこんな会話をされると恥ずかしい。しかも彼女たちが言っていることは、私が思っていることなのだ。心の中で思っていることを、同じ顔の他人に言われると、こんなに恥ずかしいとは思わなかった。
一応記憶と基本的な性格は同じはずなのだが、彼女たちは生まれたばかりだからなのか、それとも14歳という肉体年齢に引きずられているせいか、少々私より精神年齢が幼い印象を受ける。何が言いたいかと言うと、私達の肉体年齢は14歳。つまり厨二病を発症する可能性が最も高い年齢なのだ。というか絶対発症している……
私は軽く頭を振って気を取り直すと、パンと手を打ち皆の注目を集める。
「さて皆さん。先ずは人数が増えたことで問題があります。それは食事です。流石にこの量はこっそり持ってこれません。幸い食糧庫の警備は、私達にとってはザルですから、奪うのは簡単です。これからはそれを使って、順番に食事を作りましょう」
「「「「異議なし」」」」
「次に、地下室ですが、流石に手狭です。各自使いやすいように広げてください。尚お金は渡すので、その範囲内で内装には金を使ってください。その際くれぐれも身元はばれないように注意してください」
「「「「了解しましたー」」」」
「そして当面の目標ですが、先ずはギルフォード男爵令嬢の救出をメインとします。ギルフォード男爵領は馬車で片道10日ほどですから、あと1週間ほどで義父の馬車が着く予定です。それから戻ってくる途中……そうですね、領都から2日以内の所が適当でしょうか。そこで令嬢を救出します。
エナは一番襲撃されても怪しまれないところ。具体的に言うとモンスターが徘徊しているところを探してください。居なければ適当なモンスターを連れて、縄張りを作らせてください。あくまで、凶悪なモンスターに襲われたように見せかけます。ちなみに護衛の兵士は、義父の子飼いの兵士なので殺してもかまいません。救出する時は5人そろっていきましょう。初めての事なので何が起こるか分かりませんからね。
イスナーンは、殺された兵士の代わりに募集される兵士を鍛えてください。義父ではなく私に忠誠を誓うように仕向けてくださいね。
トゥリアは農業改革をするので、私について学んでください。知識だけだとうまくいかない事がありますからね。最初は私がやります。農民たちがちゃんとやってくれれば、来年から食糧事情は改善するでしょう。
テッセラは武具の調達です。無理のない範囲でダンジョンに潜って、質の良い武具を集めてください。以上わかりましたね」
「「「「はーい」」」」
それぞれ4人の声が仲良くハモって聞こえる。話している内容は結構物騒な話だが、私も入れて女の子5人でわいわい話す様子は、端から見る分にはかわいく思えるだろう。
「それと、元々の役目。つまり私の影武者になることは忘れないでね。融通は聞かせるつもりだけど、基本的には平等に回すから」
「「「「分かりました」」」」
全部私なので、ある意味これ程気心が合った者達は居ない。さしたる異論もないままミーティングは終わる。
「ところでマスターは、この作業を本当に1人でやるつもりだったの?」
誰かがボソリと呟いたが、私は聞こえなかったことにした。
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