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公爵令嬢、敗者になる

続けて読んで頂き、ありがとうございます。

「なんでそんなに必要なのよ……暫く戦闘はしないと考えていたのに……」


 完勝だったとはいえ、あんな思いは出来るだけしたくない。やるとしても次はものすごく弱い敵を相手にしようと考えていた。この世界で生きていくのに恐怖心の克服は大事だが、それはおいおいゆっくりとすればいいんじゃないだろうか。

 それにホムンクルスは無限に作れるわけではない。錬金術のレベルの半分、つまり私は5体までしか持てない。4体も影武者に使ってしまったら、残り1体分しか枠が無くなってしまう。勿論ある程度時がたったら、不要なホムンクルスを処分すれば枠は増えるが、私はキャラクターに愛着がわく方であり、余りそういったことはしたくない。ましてや自分のそっくりさんである。


「だって、メイド達にも暫くは隠しておくんでしょう。公爵令嬢役が1人。子飼いの兵士を創るんだったら、鍛える教官役が1人。領土の発展は直ぐにでも始めないと、義父を排除しても王国に潰されるから、内政担当役が1人。アイテムも色々集めなきゃだめだから、収集役が1人。その他いざという時、自由に動けるものが1人。

 単純にマスターを含めても3人足りないわ」


「そうかしら?専属で就く必要はないし、なんとかなるんじゃない?」


 私の能力値は高いし、前世の記憶もある。1日フルに働けば、大抵の事は出来る自信があった。


「そんな考えだから、前世では死んだんじゃないの?1人でやろうとしすぎよ。だいたい労働環境は違うけど、奴隷だって働いてるのは、日が出てる間の12時間よ。私だって休みも欲しいわ。それにマスターと違って私はレベルはカンストしてないから、レベルアップもしたいしね」


 言われてみればその通りで、返す言葉もない……


「分かったわよ。でも直ぐには無理よ。昨日の疲れがまだ残ってるし、ヘルハウンドの心臓は使っちゃったから、またモンスターの討伐が必要だしね」


 この世界は基本的にモンスターはポップアップしない。自然に増えるのを待つしかなく、ヘルハウンドクラスだと、同じ場所には二度と現れない。同じ条件だったら以前より上手く戦えると思うが、場所が変わればどうなるか自信がない。

 幸いというかなんというか、モンスターの出現場所は沢山有るので、暫くは刈り尽くすということは無いけれども……


「うーん。じゃあ今日は私が倒してくるわ。マスターは今日ゆっくりしてて」


 エナはしばらく考えた後、軽い感じでそう言う。


「大丈夫なの?低レベルのモンスターじゃ、貴方と同レベルにはならないわよ。しかも貴方、私よりレベル低いじゃない」


 私がそう言うと、エナは額に手を当てて軽く頭を振る。少し呆れているようだ。


「基準が多分おかしいわ。私のレベルだって十分高いもの。その上能力値も全部50、100レベルのキャラクターより平均値は高いわ。それにマスターと違って、死んでも良いもの。所詮ホムンクルスよ。代わりなんて、素材さえ揃えれば何度でも作れるじゃない」


「それはそうだけど……」


 エナの言う事は一々もっともだが、自分の分身が死んだらやはり悲しい。ちょっと話しただけで単なる身代わり人形とは思えなくなっていた。


「ともかく、マスターは今日は休む。私は討伐&経験値稼ぎね」


「はあ。仕方ないわ。無理はしないでね」


 私はエナに押し切られる形で了承する。そうこうしているうちに、直ぐに昼食の時間になる。食ってちょっと散歩して寝る。この生活でなぜこの体型が維持できるのか、つくづく謎だ。

 

 ゆっくり過ごすといっても、エナがどうなっているか気にはなったが、いざとなったら私達は念話が出来る。まさか瞬殺されることはないはずだ。そう思い昼食を食べ、庭を散策し、優雅に3時のお茶をし、更に夕食を食べ、風呂に入りマッサージを受ける。


(はあ、極楽極楽)


 私が眠気を覚えていると頭の中から声が聞こえる。エナだ。


(帰ってきたわよ。どうしたらいいの?今日はもう寝る?)


(いえ、ちょっと待って。一応寝る前に貴方の成果を確認だけしておくわ)


 エナが討伐したモンスターのレベルによって、必要な材料の量や種類が違ってくる。明日にでも買いに行きたいので、今日中に確かめたかった。

 私はメイド達が別邸を離れると、ナイトウェアのまま地下室へ赴く。


「お疲れ様。何を倒したの?」


 ざっと見る限り、エナに傷はない。ステータスを確認してもMPが大分減っている程度だ。


「マスターにあんまり負担がかからないように、楽勝で倒せる範囲では、最高ランクのモンスターを倒したわ。ネームドではないけど、ちゃんとしたドラゴン3体よ。どれもレベル30だったから、私と同じレベルのホムンクルスを作るのはずいぶん楽なんじゃない」


「30レベルのドラゴン!」


 私は思わず声を上げてしまう。私は100レベルで、25レベルのヘルハウンドを倒すのに苦労したのに……完全に負けた。


「いや、それが普通だって。1対1で戦ったんだし。普通に魔法でごり押しで来たわ。ブレスなんて2,3回喰らったところで死なないし、そもそも私の方が圧倒的に素早いから、よほど下手な戦いをしなければ当たらないし」


 恐怖心がないとここまで違うものか、と思ってしまう。だが同時に危うさも感じる。オリジナルの私はホムンクルスたちのブレーキ役にならなければならない。何せこの世界はヒロイックファンタジーではなく、ダークファンタジーの世界なのである。死ぬ時は死ぬ。


「まあでも、確かに助かったわ。これなら材料もそんなに要らないし、魔力もあまり使わないから、1日もあれば3人造れそうよ」


 ドラゴンの素材というのは、同じ30レベルのモンスターと比較しても、それぐらい素材として優れている


「喜んでもらえて私も嬉しいわ。じゃあ、今日はこんなところかしら」


「そうね。じゃあおやすみなさい」


「おやすみなさい」


 私達は分かれ、そして私はベッドに入り、深い眠りに落ちた。




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