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女公爵、20歳になる

 9月1日。今日は私の女公爵就任2周年である。2周年記念というと何だかそうでもないようだが、私の生誕20年と考えると何か節目が良い感じだろう。この世界(元の世界も今では)成人が18歳なので20歳の意味はあまりないんだけれど……

 ともかくこの2年間色々大変だった。就任式当日は結婚式と就任式が同時にあったうえ、夫が殺害され、義父が殺人者として捕まったのだ。当時は、まあいいかぐらいに考えていたのだけれど、端から見たら大変な事だったんじゃなかろうか。

 そんな大変な?事で始まった私の統治は王家に目を付けられ、納税量は2倍になり、次の年には内乱もどきがはじまり、周辺地域は次々に不安定になっていくという、激動の2年だったと言えよう。

 だが私はその状況を見事に乗り切り、無事に女公爵就任2周年を迎えることが出来た。我ながら頑張った2年だった。ちょっと頑張りすぎた感もあるけれど。

 そんな私の就任2周年祭はそれはもう派手なものである。2年程前はイベントでお金が稼げるなんて考えていたのが嘘のようだ。1周年記念なんて、特になんて事の無い簡素で事務的なものだった。金を持っているものが散財しないとお金は回らなくなるものである……いや切実に、ちょっと周りの貴族をむしり取りすぎてしまった。

 1人が使う量はたかが知れている。美術品などならともかく、衣食住は1人で消費するには限界がある。正確に言えば、私には限界がある。幾ら希少価値が有ろうともゲテモノを食べる気はないし、宝飾品で飾りたてる気もない。城なんてここだけで十分だ。寧ろ城の中にある別邸だけで良い。いっそうの事そこに引きこもって、楽な服でゴロゴロしていたい。カップラーメンを久し振りに食べたい……

 それは行き過ぎとして、あんまり物欲の無い生活をしていると、自然とお金が溜まっていった。いや、溜まりすぎた。一握りの人間が金を持ちすぎると、経済的停滞を起こす。それは私の望むところではない。

 そんなわけで就任2周年祭は派手に行うことにした。南部の各地域の代表者はこちらに来るのに十分な支度金を渡したし、領民たちにも施しがいきわたるように厳命した。着服するようなものは今やいない。着服したかどうかはその地域と別の地域を比較したら分かる。もし着服した者が居たら即刻牢屋行きだ。

 もちろんお金だけ渡しても、ものが無ければどうしようもない。私は各商会を通じ、様々なものを集め、各地に商人を派遣した。

 それにくわえて、わたしは南部だけでなく他の地域の貴族にも支度金を渡し、招待した。こちらは搾り取りすぎたので着服してもらっても良い。寧ろ着服してもらわないと、早々に領の経営が行き詰まり、難民が押し寄せてきて困る。

 

 そんなわけで、当日私が着る衣装はそれはそれは豪華なものだ。西部で産出される金銀や宝石などをふんだんに使ったティアラやブレスレットに、北部の希少なモンスターの魔石を使ったネックレス。ドレスは東部でも希少な絹で作られている。これを纏った私はまさに動く宝物庫だ。


「ああ、なんてお美しい姿なんでしょう。こうして飾り立てられた女公爵様をお世話することが出来るなんて夢のようです」


 そう言って目を潤ませているのはティータだ。今回の就任式は後でホムンクルス達と別邸でお祝いするため城に帰らせていることもあり、元から仕えていたメイドの5人は私の元に戻っている。


「本当に、お綺麗です。まるで光の女神さまの様です」


 ヘゼルが目を輝かせて褒めてくる。ちょっと子供っぽかったヘゼルも、今や立派な戦闘メイド……違ったレディーだ。


「あの別邸で不遇な生涯を送られるのかと心配しておりましたが、何とご立派になられた事か」


 リヤもそういってほほ笑んでいる。


「うっ、うう」

 

 感動したのか、泣いているのはトルセアだ。


「さあトルセア泣いていると女大公様のハレの姿を見れませんよ。この目にしっかり焼き付けておかなければ」


 スレラが年長者らしくトルセアを落ち着かせている。


「みんなありがとう。では行ってくるわね」


 わたしは城のバルコニーに移動する。特別に開放された城の中庭には、すし詰め状態の人が集まっていた。私がバルコニーから現れると歓声が上がる。ちなみにこれはウィザードアイで中継して、小さな村にまで送った魔法のパネルに映している。早い話が全国放送だ。

 これ一回だけで使い切るのはもったいないので、そのままこれからも使うつもりだ。プロパガンダ、違った政見放送やお知らせをするのに非常に便利なのだ。本当だったら材料費だけで一般人に手が出る値段ではないが散財した。

 私はゆっくり美しく見える様に手を振る。


「ウィステリア女公爵様万歳!ウィステリアに栄光あれ!」


 どこからともなく発せられた掛け声が、波紋のように広がり、うねりとなって中庭を包む。中庭だけではない、入りきれなかった多くの人々やパネルの向こう側の人々も叫んでいる。

 ちょっとあくどい事もしたけれど、私のしたことは間違いじゃなかったわ。そう私は心から思った。



 その頃禍々し暗闇の中で男が何本もの光の槍に貫かれもがき苦しんでいた。


「な、なにが起きた……」


 何とか槍を手を焼けただらせながら引き抜く、最後の1本を引き抜くと、血反吐を吐き倒れた。


「おのれ、誰だ私をこの様な目に合わせたものは、決して許さんぞ」


 身体は槍に貫かれ穴だらけになりながらも、男は生きており復讐の炎で目を輝かせていた


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