2000年前の午後
その穏やかな日差しはこの地に住まう生命を祝福している。
その涼やかな風はこの地の清浄さを表すようだ。
この暖かな午後はとある一人の人間の手によって成された。その少年は毒泥にまみれた罪の地を浄化し、再び神に愛された花の楽園をこの地に取り戻した。
大木の根元に少年と導き手が立つ。
「もう行ってしまうのですか」
2年もの長い間、泥を吐く巨竜と対峙していたとは思えないほどに弱々しい声で少年は尋ねた。
導き手は穏やかに少年に語りかける。
「もう私の導きはあなたに必要ないからね。何をなすべきか、あなたはもう十分理解しているはずだ」
少年は目を伏せ、考えた。自分が何をなすべきか。答えはこの2年の旅で得ている。
「……自分は、この地を浄化しました。これから先幾千年が経とうとも、この穏やかな日を永遠にしてみせます」
少年は自身の決意を表すように、腰に下げていた剣を鞘から抜いて地面に突き刺した。
「ここに誓約を」
「名のない人間は、緑衣の方に誓います。未来永劫この地を守護し、すべての悪業に屈することなく、幸福に満ちた世界を築くことを、ここに誓います」
誓約の少年は王となり、花の楽園の地を生涯をかけて守り抜いた。
2000年後の今、玉座には巨竜を切り伏せた伝説の王、その後継が座している。
毒泥を切り裂いた高名な剣は、2000年経った今もなお輝きを失わずに山頂に突き刺さっている。