05 俺は藤宮さんと登下校する
「リインも交換したし、一緒に帰ろ!木戸くん!」
「ええ?ああ、うん。」
こうして俺は藤宮さんと下校することになった。藤宮さんは学年一の美少女だから、当然注目される。男子のみんな、その殺意のこもった視線やめて。怖いから。
「みんな私たちのことをすごく見てくるね。」
「‥‥そうだな。」
原因はあなたなんですけどね、藤宮さん。‥‥はぁ、いつか本当に殺されそうで怖い。
「木戸くんの家ってどのあたりなの?」
「このあたり」
俺はそう言いながら藤宮さんに地図を見せる。
「じゃあ、途中まで一緒だね!」
「‥‥そうなのか」
「ねぇ、これからも一緒に帰ろうよ!」
「‥‥まじで?」
藤宮さんと毎日一緒に下校だと?本当に事故にあってしまいそう。というか学校の男子から殺されそう。
「‥‥だめ?」
くっ、その上目遣いは卑怯だろう。
「いいよ。」
「やった!!」
藤宮さんは俺と帰れるのを楽しみそうにしていた。
「あ、私の家こっちだから、ここでお別れだね。また明日!」
「おう」
ここでお別れか。とりあえず、家に帰ってからは録画してあるアニメでも見よう。
「ただいま~~。」
家に帰った。帰りのあいさつをしたのに、だれも反応してくれない。まだ誰も帰っていないのだろうか。
俺は自分の部屋に入る。すると、由利花が俺のベッドの上で寝ていた。
「おい、由利花。起きろ。」
「う~ん‥‥お兄ちゃんが起こして‥‥。」
朝もこんなこと言っていた気がする。というか、なんでこいつは俺のベッドで寝ているんだ。俺は無理やり由利花を起こし、部屋から追い出す。はぁ、なんか今日の1日だけでいろいろあったな。こんなに濃い1日は初めてだ。
着替えた後はいつも通り飯を食って、風呂に入って寝た。
**********
翌日の朝。俺は今学校に行く時間になるまでラノベを読んでいる。うむ、〈双子の幼馴染〉は何回読んでも飽きない。さすがは人気作品である。おっと、もう時間だ。そろそろ出ないと。
俺は家のドアを開ける。すると、外には藤宮さんが立っていた。
「え?藤宮さん、どうしてここに?」
「木戸くん昨日家の場所教えてくれたでしょ?というわけで、これからは一緒に登校もしようね!」
「え!う、うん。これからよろしく。」
「‥‥もしかして嫌だった?嫌だったら言ってね、やめるから。」
「嫌じゃないよ!むしろうれしいくらいだ」
「そう?ありがとう!」
‥‥藤宮さんはほんとにいい子だな。何を考えて俺と登下校したいなんて言い出したかはわからないけど。
俺と藤宮さんは後ろからの嫉妬の視線に気づかずに学校へと歩いていく。
「‥‥あの女の人、お兄ちゃんと一緒に登校している。‥‥ずるい。」
**********
「あんたと朱莉って付き合ってんの?」
教室に入ると、玲がいきなりそんなことを言い出した。いきなりいうのやめて。みんなの視線が俺のほうに集まってくるから!
「…え?まじで?藤宮さんがあんな陰キャと?」
「あいつ、殺す。」
「いいや、これは藤宮さんがあの陰キャに情けをかけてるだけかもしれない!」
「「「そうだ、それだ!」」」
‥‥情け、か。少なくとも俺から見た藤宮さんは情けをかけているようには見えなかったけどな。
「雄二、あいつらのことなんか気にしなくていいからね。少なくとも、私と光青は朱莉は本当にあんたのことが好きだとわかっているから。」
「ああ。雄二と藤宮さんはお似合いだ。」
「待て、俺と藤宮さんは付き合っていない。」
「「‥‥え、そうなの?」」
‥‥玲だけじゃなくて、光青まで誤解していたのか。この誤解を解くのには時間がかかりそうだ。
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