30 一人映画
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「行ってきまーす」
俺は今日、一人で映画を見に行くつもりだ。
なんと、俺の好きな小説が映画化して、今日がその公開日なのだ。これは見に行くしかない。
しかし、俺の町の近くに映画館がないので電車に乗って遠くまで行く必要がある。なんで近くに映画館がないのやら。
今の時間は午後0時。これなら1時までには映画を見ることができるだろう、
駅に着いたので俺は切符を買い、電車を待つ。電車を待っている間は、カバンに入れておいたラノベを読む。
今日読むのは『双子の幼馴染』。最新刊を買ったはいいけど、時間がなくて読めなかったものの一つだ。
電車の中は基本的に人が多い。だから読めない。けど、ホームにはそこまで人がいるわけじゃないから読める。そう考えると電車の待ち時間は良いものである。
電車が来たから俺は電車に乗る。
ふむ、やっぱり人が多い。この状況ではラノベを読むのは難しい。
俺はこれを耐えるのはやっぱりきついな‥‥と考えていた。すると、何か声が聞こえてきた。
「や‥‥やめて、ください‥‥」
‥‥これって痴漢じゃね?
なんで俺の近くで痴漢がおきてんだよ。助けないと‥‥と思っても、体が言うことを聞かない。
俺は重たい体を頑張って動かし、痴漢をしている男の手をつかむ。
「おっさん、痴漢はやめとけ」
痴漢をしているおっさんにそう言う。
すると、おっさんは声を荒げて
「俺はやってねぇ!!!!」
と叫んだ。
なんで痴漢をする奴はやってないって言うんだろうね。めんどくさいからやったと認めてほしいんだけど。
そんなことを考えていると、痴漢おっさんは俺の手を振りほどいて電車のどこかに消えた。
逃げられたか。次の被害者が出ないうちに捕まって欲しいところだが、逃がしてしまったものはどうしようもない。今回のことは駅員に報告しておこう。
「あ、あの‥‥ありがとうございます」
被害にあっていた女の子がお礼の言葉を言った。
‥‥ん?この制服って、弥生高校の制服じゃね?‥‥この子、弥生高校の子だったのか。
「どういたしまして」
俺はそれだけ言って、ちょうど目的の駅に着いた電車から降りる。
そして駅員さんにさっきの痴漢のことを報告しておく。対処してくれるかどうかは知らないが。
やっと映画館に着いた。あの痴漢野郎のせいで時間が長く感じた。
俺は映画を見る席を決め、映画館に入る。
ふむ、映画版は最高だったな。原作が面白いからっていうのもあるだろうけど、映画も映画でしか表現できない面白さがある。
「あれ?木戸じゃん」
声をかけられた。振り向くと、金木が立っていた。
「お前とはよく会うな、金木」
「そうだな。お前も『二輪の花の伝説』を見に来ていたのか?」
『二輪の花の伝説』は俺がついさっき見た映画だ。ミステリー系の物語で、原作は小説をあまり読まない人でも読みやすい小説となっている。
けど、金木が見ていたのは意外だな。こいつはもっとバトル系のものを見るような奴だと思っていたのに。
「ああ、そうだ。金木がミステリー系を見るのは意外だな」
「まぁ、今回が初めてだからな。ミステリー系って案外面白いんだな」
今回が初めてなのか。
まぁ、こいつはもともとラノベ以外は読まないやつだからな。
「そうか。じゃあな、俺はもう帰るよ」
「おう。またな、木戸」
俺たちはそう言って別れる。
今日はいろいろあったなぁ‥‥。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
今回は主人公の日常会でした。




