21 観覧車
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「じゃ、最後に観覧車に乗ろうか」
「‥‥そうだな。藤宮さんと光青もそれでいいだろ?」
「うん!いいよ!」
「‥‥どっちでも」
というわけで、玲の提案で観覧車に乗ることになった。
「じゃ、光青と私、朱莉と雄二に分かれて乗ろう。朱莉もそれでいいでしょ?」
「え?う、うん!それでいいよ!」
‥‥なぜわざわざ分かれて乗るのだろうか。四人一斉に乗れるんだし。分かれる必要あるか?
「なぁ、なぜ」
「雄二、黙れ」
しゃべろうとしたら光青に止められた。
‥‥あ。分かったぞ。光青と玲は二人っきりで乗りたかったのか。
「じゃあ、一緒に乗ろっか、雄二くん!」
「ああ。乗ろうか」
藤宮さんと二人‥‥か。
本当に、以前の俺なら考えられなかったことだな。藤宮さんのような美少女と一緒に登校したり、観覧車に乗ったり。
‥‥勘違いをするな。藤宮さんが俺に惚れるなんてありえないことなんだ。冷静になれ、俺。
「ねぇ、雄二くん」
「どうしたんだ?」
「あの‥‥ちょっと言いづらいんだけど‥‥笑わない?」
言いづらいことなのか。これラノベでよくあるよな。笑わないって言って笑ってしまうやつ。笑っても大丈夫なように保険をかけておこう。
「笑わないよ。多分」
「多分って!そこは絶対って言ってほしかったなぁ」
「まぁ、笑わないよ。それで?」
「うん。あのね‥‥私のことを、名前で呼んでほしいの」
「‥‥名前で?」
ちょっと予想外だ。てっきり藤宮さんの好きなものが子供っぽいとかだと思っていたのに。
「うん。‥‥できる?」
「ん。分かったよ、藤‥‥朱莉さん」
「『さん』もいらない!」
「わかったよ、朱莉。これでいいか?」
「‥‥うん!それでいいよ!」
藤み‥‥朱莉は頬を少し赤らめている。そこまで恥ずかしかったのか?名前で呼んだだけなのに。
「あ‥‥景色、きれいだね」
「そうだな。この高さから街を見ることはないから少し新鮮だな」
観覧車から見る街の景色は絶景だった。ここまできれいな景色を見るのは久しぶりだ。
ちなみに、俺の一番のお気に入りの景色は海に夕日が沈む景色だ。あれは俺の人生で上位に来るといっても過言ではないほど絶景だった。
「‥‥あの、雄二くん」
「今度はどうした?」
「あの、もしよかったら‥‥夏休み中のお祭り、一緒に行かない?」
朱莉とお祭り‥‥か。
祭りは家族としか言ったことはない。友達と行くなんてことは一回もなかった。
行くべきなのか、行かないべきなのか。
‥‥いや、朱莉が行きたいって言っているんだ。ここはいかないと男としてダメな気がする。知らんけど。
「いいよ。一緒に行こう」
「いいの!?やった!」
そんな話をしていたら、観覧車はもう下のほうまで来ていたので、俺たちは観覧車を降りた。




