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第百四話 依頼受理

『もうメルちゃんが攻略していいよ』


 それが、話し合いの末にハンナが渋々出した結論であった。

 ハンナ自身を含む精鋭はダンジョン攻略に出る事が出来ない。

 そうなると、ジークリンデとフェリックスをダンジョンに送り出す事そのものが困難になるのだ。

 最下層までの道はまだ、先遣隊を派遣して情報を持ち帰らせる事で比較的安全に進めるかもしれない。

 しかしダンジョンの守護者との戦いだけはダンジョンのシステム上、どう頑張っても初見となる。

 つまるところ最後は絶対に『初見の強敵相手に勝てる強さ』が必要になるのだ。

 そういう意味では暗殺されてしまったクリストフも、紛れもなく傑物だったのだろう。

 しかしその後に呆気なく暗殺されたのを見るに、守護者との戦いで軽くない傷を負ったのだろうか。


 しかし、ジークリンデやフェリックスにその強さはない。

 あの二人も十分強いのだが、それでもダンジョンの守護者相手に勝てるほどかというと、残念ながら勝率は低いだろう。

 勿論選び抜かれた護衛も同行するが、その中にハンナを始めとした走破組が入れない。

 この戦力で挑むのは攻略どころか、ジークリンデとフェリックスを失うリスクの方が遥かに高い……そうハンナは判断したのだ。

 こうなるとせめて、エルフェには渡さないようにしたい。

 そしてハンナの知る限り最も攻略に近い位置にいるのがメルセデスだ。

 故にこそ、妥協して出てきた言葉が冒頭の一言なわけだ。


 そんなわけでハンナから無事に許可を貰ったメルセデスであったが(ぶっちゃけ許可が無くても攻略したが)、彼女はすぐにダンジョンに向かう事はしなかった。

 まずメルセデスが向かったのは集落の中央に建てられたシーカーギルドだ。

 吸血鬼とエルフェは区分けして固まっているが、この建物だけは共用である。

 エルフェにもダンジョンの探索を専門に行う職業があるのだろうが、わざわざ同じ建物にする理由はメルセデスには分からない。

 考えられるのは互いの監視か、それともあえて同じ建物内で仕事する事で表向きの仲良しアピールをしたいのか……まあ、どちらでもいいか。

 メルセデスがギルドに来た理由は、単独行動を取る為である。

 今回、学園から特別学生として何人かがこの集落に来ることが認められたが、そこはやはり学生だ。チームを組んでの団体行動を義務付けられている。

 しかしメルセデスのようにシーカーとして既に実績を積んだ上でギルドの依頼を受けていれば、学生ではなくシーカーとして動く事が出来る。


(吸血鬼しかいないな……当たり前だが)


 この建物はエルフェと吸血鬼の共用だが、今は深夜だ。

 吸血鬼として生きていると忘れそうになるが、夜というのは本来活動するべき時間帯ではない。

 なのでギルドの中には吸血鬼しかおらず、エルフェの姿が見当たらない。

 逆にこれが真昼とかになれば、今度は吸血鬼の姿が消えてエルフェだけになるのだろう。

 明け方や夕暮れならばどちらの種族もいるのかもしれない。

 よく見ると受付の端っこに一人だけエルフェの男が立っていたが、物凄く肩身が狭そうだ。

 この時間帯でもダンジョンから戻って来たエルフェがギルドに来る可能性がないわけではないので、そういう時の為に残されているのかもしれない。


「さて……適当にいくつか依頼を取っておくか」


 まずメルセデスは掲示板に赴き、そこに張り出されている依頼書に目を通した。

 依頼はギルドが出した物もあれば、同じシーカーが出している場合もある。

 手に入れるのが面倒な魔物の素材などを集めたい時はシーカーでも他のシーカーに依頼を出すのは珍しい事ではない。

 それはいいのだが……メルセデスは依頼書のうちの一つを見て妙な事に気が付いた。

 文字が自分達が普段使っているものと違い、エルフェ語で書かれている。

 翻訳すると内容はこんな感じだ。


【ピジョーン捕獲依頼】

依頼主:カール

報酬額:5000ルード

期限:一週間以内

詳細:スカイダンジョンに出現するピジョーンを早急に捕まえて欲しい。


 ……スカイダンジョンとは何だろう?

 全く聞き覚えのない名前だし、この集落にあるダンジョンの名前は『グレンツェダンジョン』のはずだ。

 それに単価も違う。ルード? この世界の金はエルカだったはずだが……。

 メルセデスは近くを通りかかったギルド職員へと声をかける。


「この依頼書はエルフェが出したものか?」

「ええ、そうですよ。彼等はグレンツェダンジョンをスカイダンジョンと呼んでいます。意味は分かりませんがね。

ピジョーンというのは、大型の鳩の魔物です。先に発見したのがエルフェなのでエルフェがそう名付けました」


 なるほど、と思った。

 エルフェ語の習得が必要になるわけだ。

 言語が違えば、人名などの固有名詞以外はほぼ違う。

 日本語では『日本』でも英語では『ジャパン』と呼ぶようなものだ。

 魔物の名前に関しても、むしろ納得出来る部分がある。

 今まで出会って来た魔物達も、一部は確かにこちらの言語体形と異なる名前の者達がいた。

 ワルイ・ゼリーとかキョセイズミ・オークとか……そういうのは吸血鬼以外の種族が最初に発見し、名付けた魔物なのだろう。

 といってもこの二種はエルフェの言葉とも何か違う気がするが……。

 更に依頼書を見ていくと、吸血鬼、エルフェ問わずにやたらピジョーンの捕獲依頼が多い事に気付く。

 何だ、そんなに人気なのかピジョーン。

 とりあえずメルセデスは、1階層と2階層のマッピング依頼とピジョーン捕獲の依頼書を持って受付前の列へと並んだ。

 すると、幼さを残す外見のまま成長が止まってしまったメルセデスは目立つのか、周囲のシーカーが侮るように彼女を見た。


「おいおい、こんな所にガキがいるぜ」

「やめとけよ嬢ちゃん、ここはお前さんみたいな子供が遊びに来る場所じゃねえぜ」

「ヒャハハ、テメェみてえなガキはお家に帰んな! ママも心配してるだろ?

早く帰って安心させてやんなァ!」

「身の程ってもんを弁えるんだなァ。テメェみてえなメスガキは親元で花嫁修業して、甲斐性のある男に嫁いで平和に暮らしてりゃいいんだよォ。嫁ぐ前に傷物になっちゃ問題だろォが」


 外見で侮られるのは割と久しぶりな気もする。

 学園内ではメルセデスは有名人で皆が避けて通るし、ある意味新鮮な反応であった。

 とりあえず一々相手する必要性もないのでスルーしていると、やがてシーカー達もメルセデスに構うのを止めた。

 それから少し待つと、ようやくメルセデスの番が回って来る。


「ええと……貴女が?」

「ああ。カードはある」

「……ランク……B? え、マジで?」


 メルセデスの外見と、そこから想像出来ないランクに受付嬢が目を白黒させる。

 驚いているのは彼女だけではない。

 他のシーカー達もまた、メルセデスのランクに仰天していた。


「Bって、俺等より上じゃん……」

「格上相手に偉そうにドヤる俺の姿は滑稽そのものだった……」


 先程メルセデスを笑っていたシーカー達はどうやらBランクより下らしい。

 しかしBでこんなに驚かれるとは、意外だった。

 メルセデスの中ではBランクは『昔のフェリックスと同じくらい』という程度の強さしかない、ベンケイに全滅させられたパーティーのイメージしかないのでイマイチ凄いと思えないのだ。

 いや、そういえば確かユリアもBランクだったか。


「あ、いえ、失礼しました。依頼の受理確認しました。

ダンジョンはこの建物を出て南に少し向かった先にあります」

「集落の中にあるのか」

「はい。以前はダンジョンの近くに集落を作っていたのですが、シュタルクダンジョンが何者かにクリアされてしまい、誰が攻略したのかも分からなくなった反省からダンジョンを囲うように集落を建てようという話になったと聞いております」

「……そうか」


 今回、ダンジョンが集落内にあるのはメルセデスのせいであった。

 しかしこうなると少し面倒だ。

 シュタルクダンジョンをクリアした時は周囲に目撃者がいなかったが、集落内では目撃される可能性が高いだろう。

 ギルドを出てダンジョンへ向かい、メルセデスはますますその可能性が高い事を痛感した。

 ……見張りらしき兵がいる。

 あれは恐らく魔物がダンジョンから出て来た時に迅速に処理する役目もあるのだろうが、誰かがクリアした時にその人物を見る役割も兼ねているはずだ。

 つまり今回は、クリアしても知らん顔が出来ない。


(……何か手を考えておかなくてはな。祭り上げられては面倒だ)


 とりあえず、まずはダンジョンへ入ろう。

 どうせ一回でクリア出来るなどと思っていないし、今回は浅い階層を少し回るだけだ。

・一部は確かにこちらの言語体形と異なる

Q、むしろ普段から日本語話してるんだから、キョセイズミとかの方がこっちの言語体形じゃね?

A、作品の都合でメルセデス達には日本語で話して貰っていますが、実際は異世界語で話していると思ってください。

日本語吹き替え版の海外映画みたいなものです。



【日本語フィルターOFF その1】

メルセデス「ボンギサギギョパゲスズェグザギダロボバ?」

受付「ゲゲ、ゴグゼグジョ。バセサパグセンヅェザンジョンゾグバギザンジョンドジョンゼギラグ。ギリパパバシラゲングベ。ミジョジョンドギグボパ、ゴゴガダンザドンラロボゼグ。ガビビザベベンギダボグゲスズェバボゼゲスズェグゴグバズベラギダ」

※ここではリントの言葉で話せ。


【日本語フィルターOFF その2】

メルセデス「Wird diese Anfrage von Elfe gestellt?」

受付「Ja ist es. Sie nennen den Glenze Dungeon den Sky Dungeon. Ich weiß nicht, was das bedeutet.

Pijorn ist ein großes Taubenmonster. Weil ich Elfe zuerst entdeckt habe, hat Elfe es so genannt.」

※一応オルクス語はドイツ語に近い設定なので、これが一番正解に近いが肝心の私がドイツ語を話せない。(これはエキサイト翻訳)


【日本語フィルターOFF その3】

メルセデス「ヨオミナミキョマエルフェダガキサコオア?」

受付「ネネ、ホフベヌモ。アエナマグレンツェダンジョンムスカイダンジョンソモンベミヤヌ。ミイマカアニヤヘンダメ。

ピジョーンソミフオマ、トトダサオマソオヤコオベヌ。ラチシマっテンキサオダエルフェハオベエルフェダホフハグテヤキサ」

※何言ってるか分かんねーっての!(byFF10主人公)

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― 新着の感想 ―
あいかわらず口は悪いが根は親切っぽい吸血鬼シーカー。 皆プラクティスダンジョンの卒業生かな?
[気になる点] ピジョーンで鳩って…ポケ…
[良い点] チンピラキャラ達の発言侮ってるやつだけど 思いやり感じて好き!!
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