3話 ご飯って、久しぶりに食べると泣けるんですね。
あとがきに追加詳細入れてます。良かったらご覧ください。
辛うじて見える目には、尻尾が二股に分かれ、僕が知っている通常の猫のサイズと変わらない黒猫が映っていた。
『何で助けてくれたの?しかもさっき僕の事同族って...』
黒猫が神妙な面持ちで、「まさか...な」とか「有り得ん...」等と
呟いている。
『すまん、少し取り乱した。白い魂の持ち主、しかも念話まで使える。
我をも凌駕する可能性を秘めておる。その上今にも闇に呑まれそうだった。ここで殺すのは惜しいと思い、助けたって訳だ。
俺は白い魂持ちを同族だと思っているんだ。生まれてこの方
見たことはないがな。』
念話ってのは、必死に伝えようと心で呟く、つまり念じると、念話が使える相手に伝わるらしい。すぐ傍にいないと伝わらないらしい。あと、魂ってなんだろう?煙の事?
『白い魂って何ですか?自分の体と黒猫さんの体から白い煙は見えますが...』
『お前、この世界の事をどこまで知っておる?』
『ただ、あらゆる物質が煙を放っている事ぐらいしか...』
『お前の言う煙というのは、魂と呼ばれている。この世界には
アミニズムと呼ばれる文化があってな。あらゆる物質には魂が宿っているという考え方が根付いておる。
そして魂は強化することができる。そして強化具合によって様々な能力を得ることができる。俺が鍛えてやる。』
『成る程、ありがとう!黒猫さん!』
そう言うと、黒猫さんは顔を反らしてしまう。
『...で....よい...』
『え?』
『黒でよい!ありがとう何て言われたのは生まれて初めてだ。
それとこちらこそありがとう。
俺もずっと一人ぼっちだったからな。』
照れているのか。
一人ぼっち...か。そっか、その意味もあって同族か。
黒猫さんも大変だったんだろう。
黒猫さんのお陰で、どんよりとした気持ちが一気に晴れた。
『助けてくれてありがとう!黒さん!』
『いや、黒でよい』
『恩人を呼び捨てになんか出来ないよ?』
『んん...じゃあ黒さんでよい』
「ここで立ち話もなんだ。俺の家まで連れていく。」
いや、無理でしょ。血まみれでズタボロの体でどうすればいいの。
「...つってもそのズタボロの体じゃ立つことすら出来んか」
黒猫が僕の血まみれの額に肉球をポンとあてる。
ふにふにしてて気持ちいい。こんな時にマッサージですか?と小バカにしていた。
黒猫が体中の白い煙を肉球に集中させる。
すると、その煙が僕の体を覆い、瞬く間に折れた腕、破裂した臓器、痛みが消え去る。
『え!?何が起こったの!?』
さっきまで死にかけていた自分の体が何の異常もなく正常に動く。
どうやったのかは全く分からないが、煙が関係しているのは分かる。
『どうやったんですか!?これがさっき言ってた煙の能力ですか?』
『ああ、治癒能力だ。治癒というのは俺の能力の1つ。今のところ俺の他には使えんがな。』
成る程、個体によってその個体独自の能力に差があるのか。
『じゃあ、今度こそ行くぞ。』
どうやって?と聞くよりも早く、黒さんの魂が僕を包み込む。
「バシュン!!」
黒さんの能力『転移』で家まで連れていかれた。
黒さんの魂を鍛えて習得出来る能力が今のところ凄すぎるんですけど...
黒さん...一体どれだけ、鍛えたんですか。
『転移』という能力は、自分がハッキリとイメージ出来る場所へと
瞬間移動出来る能力だ。それ故、家には行けても、途中の道に転移は難しいらしい。まあ、黒さん曰く、結構疲れるから遠い所に行く時ぐらいしか
使わないそうだ。つまり黒さんの家は遠い所にあるんだろう。
一瞬で黒さんの家らしき建物に着いた。
風がとても気持ちいい。
牧場のような広い庭に、ポツンと立っている一軒家。
広いの半分の土地には、レタス、キャベツ、トマト、稲等の畑が
ずらーっとある。
もう半分の土地には運動する場所があった。
黒さん曰く
『体を動かさんとストレスが溜まるからな。あと腕が鈍る。』
だそうです。
ここで明日から僕をビシバシ鍛えてくれるんだそうだ。
そしてその円形のど真ん中に一軒家が立っている。
この土地を分かりやすく言えば、モ〇スターボールを縦にした感じ。
白い部分が畑、赤い部分が運動場、真ん中のボタンが家
ってイメージしてもらったらいいかも。
その一軒家は猫や犬が暮らすには広すぎるくらいだ。
なんたって人を基準にして作られている。二階まである。
女神で言うところの、3LDK位の家。
リビング以外の部屋は全て書斎だそうだ。
黒さんは本がとても好きなそうだ。女神での本の認識と
下界の認識が違うかもしれない。一応聞いてみる事にした。
すると黒さん曰く
『本というのは俺が見たもの感じたものを綴った物だ。とても役に立つだろうと思うから読んでおけ。』
だそうです。
キッチンは女神での認識と変わらないらしく、黒さんが料理するらしい。
その体でどうやって調理するんだろうと思うが、
それは、『お楽しみに』だそうだ。
『質問は大体終わったか?』
その問いに頷く。
『今日はもう疲れているだろうから、修行は明日からだ。
じゃあ、飯でも食いながらお前の話を聞かせてくれ。』
お、来た?ついに来ました!黒さんのお料理タイム!!
口で料理を、それともあのふにふに肉球で?
うん、どちらも違いました。
何と!何とですね!人間に変身したんです!
変身は全世界共通のロマン!元々女神である僕ですら知ってる位です!
『凄い、格好いいなぁ。』
思わず念じてしまう。全く意識していなかったのに。
『お前にはビックリしたよ。怖がらねぇのか?』
怖がる?滅相もない。
『勿論怖がりませんとも、変身はロマン、正義、最強ですから!!』
黒さんは嬉しそうに、優しく笑った。
黒さんは畑から育った米や野菜、そして、狩ってきた豚を見事に
調理した。
サラダ、ご飯、そしてポークステーキがある。
『せーの、頂きます』
てを使うことができず。食べ方が汚くなってしまうが、ポークステーキから頂く。お腹が空きまくっていた僕は、女神時代にスタイル維持の為に続けていた、まず野菜から食べるというルールを無視し、ポークステーキにかぶり付く。
あれ、何でだろう。涙が止まらない。
『どうした!?』
『とても...美味しくて...ご飯食べれなかったから...嬉しくて!!』
黒さんは
『ご飯を味わうのが先だ。話は後でしよう』
と言ってくれた。
黒さんは人の姿でガツガツ食べ進め、ご飯が瞬く間に消えた。
僕もガツガツと食事を済ませた。
『ではお互いに今までの話をしようか。』
感想お待ちしております!
(追加詳細)
犬井 見た目:白
姿:柴犬っぽい
性別:【♂】
黒さん 見た目:黒
姿:黒猫(尻尾が二股に分かれている)
性別:【♀】