カゾクゴッコ
かなり久しぶりの作品なので誤字脱字等あるかもしれません。
その時は黒羽まで、お知らせください。
「うーちゃんうーちゃん。一緒に遊びましょ。」
純白のパジャマに包まれた少女がそういった。
「えぇ、一緒に遊びましょ。」
こちらもまた純白の少女がそういった。
「お茶の時間にしましょ。」
「えぇ、そうしましょうか。」
輝く朝日を浴びる白一色に包まれた小さな部屋の一室で朝の行事が行われていた。
「星~。早くしなさいよ~!!」
「わかってるって~!!」
本日は本条家の引っ越しのための荷造り初日であった。
「さぁ……一頑張りしますか……」
引っ越しと言っても星は中学校の校区の中で済むのでさほど変わりはない。一つあるとすれば、いろんなものが片付きまた、出てきてほしくない物までもが出てきてしまう……
「あっ!! 星っ!! これは何っ!?」
そう叫ぶ母の手の中にはつい数週間前に終わったばかりの定期テストの答案があった。
「えっと~……お母さんをびっくりさせようと思って……??」
「何がびっくりさせるよ……確かにびっくりしたけど……」
それは数学。星が最も苦手とする教科だった。点数は……とにかく悪い。
「もう、いいわ……ほら、片づけを再開しなさい……」
本条家は基本穏やかな者が多い。もちろん星の父もである。
荷物の整理も順調に進み正午になった。そして午後になった。
「さぁ……ラストスパートね……!!」
そういって古いおもちゃ箱をひっくり返すと、そこの方に煤だらけの人形を見つけた。
「何この汚い人形……うーちゃん……?? この子うーちゃんっていうんだ……変な名前……これはいらない
わね……」
そういって星はその人形をゴミ袋の中に放り込んだ。
その人形は星がまだ小さかった頃に流行った人形であった。名前を「うーちゃん」という。また、近所の子の間でも持っている子が少ない希少価値が高いものだった。
星は幼いころこの「うーちゃん」とずっと一緒にいた。
眠るときはもちろんのこと、ご飯のときや外出時も一緒であった。
しかし、星も年が大きくなるにつれて一緒に遊ぶことも少なくなりいつしか、押し入れの奥底にしまい込んでいるおもちゃ箱の一番底に収められるようになっていた。
その晩。
「星、見てみて~!! この写真、懐かしくなぁい??」
「ん?? これは……人形……?? どこかで見たような……」
「うーちゃんよ?? 覚えてないの……?? あなたが小さかった頃ずっと一緒にいたのよ??」
そこには、うーちゃんと並んで幸せそうに笑う少女。星の姿があった。
少女はうーちゃんと向かい合って、朝の光が差し込む白に包まれた部屋で、優雅なティータイムの最中だったんだろうか。
「あっ!! これ!!」
その時、星は気が付いた。
大事な家族の一人だったうーちゃんのことを。
夜の帳が下りたころ星は一人で家を抜け出した。
本条家の住まう地域ではごみは夜のうちに出しておくことが許されていた。
本条家もまた今日出たごみをすべて出し終えていた。
時すでに遅し。かなりの数のごみ袋がゴミ捨て場には置いてあった。
それから5時間近くかけて星は、一人ゴミ捨て場をあさっていた。
しかし、うーちゃんは見つからなかった。
仕方なく星はあきらめて家の帰ろうと立ち上がり振り向いた瞬間、かすかに小さな生き物が動いた気配がした。
音のない何かが星の足元をかすめ夜の道路をかけていった。
「きっと何かの勘違いだよね……眠すぎておかしくなったんだよ……うん。そうに違いない。」
彼女は何事もなく無事に家にたどり着き寝た。
しかし、翌朝起きてみるとそこには恐ろしい光景があった。
中身がパンパンに詰まった色とりどりのごみ袋であった。