2-1 王宮
どうも、三条海斗です。
こう日刊で更新するというのは結構つらいんですね……。
この2部の最後まで頑張ります。
それではどうぞ!
ミサとダーインスレイブが出会ってから、数時間後。
彼らは王都のすぐそばにいた。
「ねぇ、いつ王都に行くの?」
ミサはダーインスレイブにそう問いかける。
「……明日だ」
まるで面倒だという様に、彼は答えた。
その様子に、ミサは少し退屈想だった。
(もうちょっと話し相手になってくれればいいのに……)
ミサのそんな態度に、ダーインスレイブは興味がないといった感じだ。
それこそ、目の前にある王都に視線を奪われいてるかのような、そんな雰囲気さえ、感じ取れる。
”彼”の胸にあるのは、人々に対する恨み、憎しみ、殺意。
”彼”の胸にあるのは、レーヴァテインやアストラルに対する期待、希望、願い。
ただ、それだけである。
あの日、シュバルツが部下たちに殺されたときのまま、”彼”の時間は止まってしまっている。
あの日、自らが魔剣に触れたその時から、”彼”の時間は止まってしまっている。
そんな彼の様子を、ミサはただ見ているだけだった。
彼女もまた、アストラルたちに対する恨みが、胸の奥にある。
その恨みを晴らすためだけに行動している。
彼女だけならば、アストラルに恨みを持ちながら逃げ続ける生活を送っていただろう。
しかし、そこにダーインスレイブが加わったことにより、彼女は恨みを晴らす道を得た。
その選択は愚かとしか言いようがないが、彼女にとって、それ以外の道を選ぶことは考えられなかった。
もう、引き返せない。
彼女は、静かに決意する。
* * * * *
明け方。
まだ町が寝静まっているころ。
王都の大通りを歩く二人の姿があった。
はたから見れば、見目麗しい女性と剣を携えた学生が歩いているように見えるだろう。
しかし、彼らはすでに人間ではない。
ミサはダーインスレイブから、とあるものを受け取っていた。
その代償として、彼女は人間であることを捨てた。
ダーインスレイブはそもそもが魔剣であるため、すでに人間ではない。
しかし、その依り代となっているカインは人間だが、この時点ですでに魔剣の核をカインの体に移している。
それはもう、人間と呼べるものではなかった。
言うなれば、彼は魔人とも呼べる存在になった。
カインの意思とは関係なく、ダーインスレイブは体を自由に動かすことができる。
カインは魔剣の核を移された時点で、自我が封印され、死んだも同然だった。
見た目は人間の彼らは、まっすぐ王宮へと向かっていく。
それは、彼にとって、終わりの場所であり、始まりの場所である。
その場所を、彼は決着の場へと選んだ。
そんな彼の決定に、ミサは反対しなかった。
むしろ、その場所にアストラルたちが現れるというのなら、彼女にとっては好都合だった。
王宮の門の前に立つと、ダーインスレイブは剣を手に取る。
その様子に気付いた門番が声をかけようとしたその刹那、剣はすでに門番の体を貫いていた。
音もなく、叫び声すらあげさせない。
「おま……」
もう一人立っていた門番が、ダーインスレイブに槍を向けようとしたが、その門番は糸が切れたように崩れ落ちる。
その足元には、一匹の蛇がいた。
「力は温存しておけ」
「この程度、構わないでしょう?」
「ふん」
ダーインスレイブは興味なさそうに答えると、門番の死体を抱え。門を飛び越える。
破壊してしまっては、王宮にいる兵士たちに気付かれる可能性があったからだ。
その後ろを、ミサがついてきた。
「それで、どうするの?」
「決まっている」
ダーインスレイブは、右手を前に出すと、魔法を放った。
彼の右手の前に、黒い渦のようなものが発生する。
そして、その渦から、魔物が一匹、また一匹と出現する。
その魔物はダーインスレイブに従うかのように、従順だった。
「行け、魔物たちよ。音もなく、殺し尽くせ」
彼がそういうと、魔物は一斉に王宮へと向かっていく。
そのあとに続いて、彼らはゆっくりと王宮へと向かっていった。