表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と魔剣と ~それぞれの道~  作者: M.O.I.F.
第二部 静かな襲撃
6/22

1-1 出会い

どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

更新がだいぶ遅れてしまい、申し訳ありません。

さて、今回は前回までとは少しテイストが異なり、連続した物語になります。

最後までおつきあいお願いします。

それでは、どうぞ!

真っ赤な絨毯が敷き詰められ、静寂があたりをつつむその場所に、彼は立っていた。

その絨毯は、もともとは鮮やかな赤い色だったのだが、今では濁った赤に染まっている。

この絨毯を染め直したのは、染料ではない。

魔物によって殺された、この城の騎士たちのものだ。

騎士たちは、皆、彼の前に立ちはだかり、二度と動くこともない肉塊へと変貌した。

しかし、その肉塊ですら、いまは跡形も残っていない。

ここにいる魔獣が、すべて食い尽くしてしまったからだ。

着ていた鎧でさえ、食べてしまう魔物もいた。

既に誰もいなくなったこの城に、二人の人間がいた。

一人は、騎士たちを葬った男。

もう一人は、秘書のような姿をした女。

彼らは、魔剣の主……アストラルと縁があった。

女は、アストラルによって上司の悪事をばらされ、命からがら逃げ延びたという過去がある。

男は、アストラルの親友の体に憑依して、魔剣・レーヴァテインと戦った過去がある。

そう、男の名はダーインスレイブ。

女はかつて、ディゴールの屋敷で秘書をしていた。

そんな二人が、どうしてこの場所にいるのか。

それは、数時間前まで時をさかのぼることになる。


 * * * * * 


丘陵を走り抜ける、一人の女がいた。

明らかに旅人ではないその風貌は、その景色にはあっていない。

しかし、外見だけは美しく、絵になるといってもいいだろう。

だが、その女は旅をしているわけではない。

正確に言えば、彼女は逃げている。

自身を捕縛するかもしれない、騎士団から。

今は、一刻も早く遠くへと逃げなければならない。

彼女は、それしか考えていなかった。

(なんで私が……!)

ふと、思い出すあの臆病な顔。

その臆病な顔をした青年に、彼女は追い詰められた。

しかし、青年が追い詰めたのは、彼女の上司……いや、共犯者に当たる男であって、彼女自身が、ディゴールを見限っただけに過ぎない。

当初の彼女の計画では、ディゴールを見限り、知らぬ存ぜぬで通す予定だったが、青年……アストラルがレオンと協力体制をとった段階で、それはできなくなってしまった。

金獅子は確実に、彼女も関与していた証拠をつかんでいると踏んだ彼女は、こうして逃げ延びる選択をした。

実際、その選択は間違ってはいなかった。

彼女があのままあの場所にいた場合、金獅子の手によって殺されていた可能性が高い。

最も、アストラルがそれを許すわけがないため、実際には捕縛程度におさまっていたはずだが。

もうどれくらい、彼女は走っただろうか。

そろそろ丘陵も抜けようとしていたその時だった。

「っ!?」

彼女は、足がもつれて転んでしまった。

アンディゴから休まずに走り続けてきたのだ、無理もないだろう。

荒い呼吸を繰り返す彼女の心の中に、アストラル達に対する憎しみが沸々と湧き上がっていく。

(あの坊やたちは……必ず……!)

握った拳で、地面を殴りつける。

逃げなくては……。

そう思っていても、体は鉛のように重く、言うことを聞かない。

もうすぐ騎士たちが現れるだろう。

彼女の心の中に、あきらめが生まれようとしていた。

「女、そこで何をしている?」

酷く冷たい声。

心配などみじんもしていないのがわかる声だった。

「……恨んでいるのよ」と、彼女は短く答えた。

「誰をだ?」

「私をこんな目にした坊やを、世界を」

「その恨み、晴らす気はあるか?」

「え……?」

彼女はようやく、その声が聞こえた方を見た。

そこには、アストラルと同じ年くらいの青年が、似たような剣を携えて立っていた。

「もう一度問おう。その恨み、晴らす気はあるか?」

「……もちろん」

「ならば、立て。我が力を与えよう」

青年はただ、そう告げるだけだ。

(この人、本気で言っているかしら……)

彼女はそう思ったが、不思議と身体が軽くなるのを感じた。

そして、立ち上がると、彼に向かってこう言った。

「私はミサ。あなたは?」

「語る名前などない。呼びたければ、ダーインスレイブと呼ぶがいい」

それが、彼らの出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ