3 静かな襲撃
どうもMake Only Innocent Fantasyの三条海斗です。
詳しいことはあとがきに書きますね。
それでは、どうぞ!
真っ赤に染まった絨毯を、一組の男女が歩いていく。
そこに、悲惨な景色を見ているというそんなものはない。
ただ、当たり前の景色が広がっている。
そんな風にしか思っていない。
魔物が現れてから、それほど時間が経っていないが、すでに王宮の半分は占拠されている。
占拠とは、言えないのかもしれない。
それは虐殺ともいえる、一方的な殺人だった。
それでこそ、剣と剣との交戦がないまま、静かな襲撃は進んでいく。
王宮の半分に差し掛かった時。
そこには、いまだに戦っている騎士たちがいた。
「さすがに、ここまでくると手練れしか残っていないのね」
「ふん、これで手練れとは……笑わせる」
「あら、ずいぶんと余裕そうね」
「ふん、お前は力を温存して好きなところにいろ。レーヴァテインたちは東棟から来る」
「どうしてそんなことがわかるの?」
「わかるさ。やつは俺だからな」
「それが一番よくわからないのだけど……。まぁいいわ、あの子たちを殺すチャンスをくれたあなたには感謝しているわ」
「ふん」
ダーインスレイブはそれ以上何も言わない。
ミサにもそれはわかっていたようで、その様子に少し微笑むと、ミサは東棟へと向かっていった。
「退け、魔物たちよ。あとは私が片づける」
そういうと、魔物は静かに後退する。
その様子に騎士たちは困惑の色を見せた。
「ふん、誰からくる? それとも、一気にかかってくるか?」
挑発をするかのように、ダーインスレイブはいう。
「ええい、魔剣がなんだ! 恐れるな!!」
「魔剣? 笑わせる、生きていた俺にも及ばん雑魚が、力を使わず戦ってやろう」
「かかれ!!」
騎士たちは一斉にダーインスレイブに斬りかかる。
それを、彼はあざ笑うだけだった。
* * * * *
「造作もない」
その言葉に反応する人間は、一人もいなかった。
返り血を大量に浴びたダーインスレイブの足元には、すでに息絶えた騎士たちの遺体が転がっていた。
数十にも上る騎士が彼に襲い掛かったにもかかわらず、彼には、服にさえ傷一つ付いていない。
彼は剣が振り下ろされる前に騎士の息の根を止め、そのまま投げ捨てていた。
その騎士たちの遺体は、すでに魔物たちが捕食し始めている。
そんな血にまみれた道を、彼はゆっくり、堂々と歩いていく。
生前、自分が生きた謁見の間に。
その奥にある、戴冠の祭壇に。
扉を開いて、そこにある景色を見る。
彼の脳裏には、あの日の景色が鮮明に焼き付いている。
思い返すは、あの日の恨み。
行動するは、強い憎しみに。
「さあ、あの日の続きを始めようか! レーヴァテイン、さっさと来い!!」
こうして、静かな襲撃は、王の護衛についた騎士以外の騎士の全滅という結果で終了した。
その後の彼らは、死という結末を迎える。
恨みを抱えたまま、彼らの物語は幕を閉じた……。
改めまして、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。
ちょっと短いですが、第2部の完結です。
書いていて、もっと時間をかけて、詳しく書いていこうという思いが強くなっていったので、時間が経てば書き直すと思います。
この物語は、本編で省いてしまったダーインスレイブが王宮を占拠した戦いを書く……つもりだったのですが、王都に住んでいる住民がその戦いに気付かなかったという、裏?設定を元に書いたので、とてもあっけないものになってしまいました。
ダーインスレイブとディゴールの秘書の出会い、騎士団の王都脱出までの番外編ということで、書けて良かったと思っています。
まだまだ、自分の実力不足を痛感した、第2部でした。次は第3部。番外編は全4部を予定しています。
また、更新に時間が開きますが、ゆっくりとお待ちください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
では、この辺で。
Make Only Innocent Fantasyでした!




