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XXC(ダブルクロスクロニクル)  作者: 京都夜京都
8/10

07

「えっ、私も教えるんですか?ええーっと、そうですよね。そうじゃないと誠意がないし、どうせ皆のところに行ったら呼ばれるから分かっちゃうし。」

少女に俺の名前を教えたのだからそちらも教えてくれと言った。


その結果がこれだった。


頬を染め、顔を両手で塞いだその間から目だけを出して地面を見つめながら俺に対して身体を横に向けている。


萌えってこういうものなのかなという思いが自分の中に駆け巡ったことを嘆いて近くの電柱にヘッドバッドをかます。


中身が見た目中学生そのものだったことに驚かされたのもあり、20年歳くってこれはどうかだろうかと思ったのがどうやら顔に出たらしく、


「何か失礼なことを考えてますよね?」


と見透かされてしまった。

女って怖いわ。


「もういいです。私の名前はユーリです。よろしくお願いします。」


言葉に態度が伴ってないんだが。

座りこんで頬杖をついてぷっくりと膨れている。


「よろしく、ユーリ…さん?」

「…でいいです。」


何かを呟いているが聞き取れない。


「え?」

「呼び捨てにしてくださいって言ったんですよ!」


顔を真っ赤にして胸の前に両拳を当てながら叫ぶ彼女は存外に可愛かった。

すまん、コレはどうでもいいことだな。


「わ、分かったよ。よ、よろしくな。ユーリ。」


ふふーん。と上機嫌に鼻を鳴らしたユーリは回れ右をすると首だけで振り返って言う。


「では自己紹介も済みましたし、仲間のもとへ行きましょうか。」


「ワープポイントに行くんだよな。」

「そうですね。まずは拠点の方に挨拶して、コレを貰わないといけないので。」


と言ってその手に乗っているのが、先程戦闘時に右目に装着していたあの機械だ。


「何か仕掛けがあるのか?」

「じゃないと掛けません、こんなダサいグッズは。」

「そうかな?俺は結構カッコいいと思うぜ。」

「なんのフォローにもなってませんよぉ。」


個人で感想が違うのか、男女でちがうのか、恐らくその両方だろうがそれをつける自分を想像して、少しばかりワクワクしてしまったことを自粛しなければならない。


ガックリとうなだれるユーリにドンマイと肩に手をかける。

どうやら精神状況が表に出やすいタイプのようだ。


「うう…じゃあ行きましょうか。」


放置されたそれを見て俺は疑問を投げかけなければならなかった。


「それはいいがこのユニコーンはどうするんだ。」

「おっと、忘れていました。」

「おいおい。」


右目の機械を装着してボタンを押したあと一言唱える。


「リムーブシークエンス」


その瞬間にユニコーンの体は転送アイテムでも使ったかのように水色の光に包まれて、フシュッという音がしてその光と共にユニコーンの死骸も消滅した。


「では今度こそ。」


コーヒー牛乳色の瞳を閉じて微笑む彼女は今更ながら人形のように完璧な姿形をしていると改めて思う。


風(仮想の世界の脈によるもの)になびくシルクのようにサラサラではしばみ色の髪、スッと整った鼻の下に控えめに閉じた桜色の唇。

強調しない胸元の2つの曲線と推定150センチ程度の身長。


ロリ美少女を体現しているようなその少女をマジマジと見ていると、その瞳がパチパチと開閉している。


「あの、どうかしたんですか?」


胸元で腕をクロスさせ身体を俺の方から退けるように捻って、眉の根を寄せてこちらを見ている。


どうやら長々と観察し過ぎたようだ。


「んにゃ、何でもないよ。」

「そう、ですか。ならいいんですけど。」


そうこうしている間にワープポイントに辿り着く。

少女に促されて今朝と何が変わって、何が変わらないのかを確認する。

確かにログアウトボタンが消失して…

いなかった。


「ユーリ。」

「はい、確認できましたか?」

「これは何だ?ログアウトボタン、有るぞ?」

「あ、ああ。それですね。」


どうやら俺の反応を予測していたらしくにんまりと笑う。


「押してもログアウト自体は出来なくなってるんです。表示自体はなにも変わりませんよ。」


そういうことは早く言いなさい。と心の中でツッコむ。


「なんだよそれ。思わせぶりだなぁ。」


溜め息を吐きつつそのボタンをなんとなく押す。


その時だった。


ウウウウウウウウ!

と警報のがログアウトポイントから響く。


ログアウトポイントに警報が付いてるなんてこと自体知らなかった俺は「どわっ!?」という情けない声をあげてしりもちをついた。


「な、何したんですか!?」


同じく驚いたユーリの目が俺とログアウトポイントを交互に追う。


「分からん。ただログアウトボタンを押しただけだ。」


「ウソ…」


「あのなぁ、嘘をつくメリットがあるのか?って…」


見上げるとユーリの顔は凍ったように硬直し、その瞳は瞳孔が開かれ、じっとりした汗が光っていた。


「おい。どうしたんだ。」


尻の埃を払って立ち上がる。

(実際は仮想世界なので汚れ類は払う必要ないのだけれどなんとなく己の衛生観念がそうさせた。)

固まっているユーリはログアウトポイントの画面を指差していた。


「あん…?おい…コレはまさか。」


ログアウトポイントのホーム画面。

そこに黄色いフォントの上に赤い文体で書かれたそれは…。


「マズい。仲間に知らせないと!!」


迫るソレに脅えるように緊迫感を帯びたユーリの声が俺の思考を逆に冷やす。


こういう時こそ冷静にならなければ成すべきことも成せない。

俺の長年のゲーム経験が役に立つ。

この肝はホラーゲームあたりで鍛えられたのだろうな。


そのフォントの表示にはこう書かれてあった。


『現在、午後5:30から30分後に【ウイングモンスターズオンライン】の全モンスターを現実的仮想空間に解き放ちます。


それらを全て排除することが出来たならコードネーム113914612 仮想ネーム【セツナ】のアバターをログアウトさせます。ご健闘を心からお祈り申し上げます。』


と。


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