FIGHT ON ANIMUS
武器を使うなら何がいいか?
オーソドックスに片手剣か。手数で攻める短剣か。豪快にハンマーを降り下ろすか。遠距離から魔法を操る魔杖か。道具に頼らず己の拳か。
これは、世界に数ある武器を使う戦士達の物語。
∞
そこの浅い湖に小さな波が立つ。
ここは常に薄く霧がかかっており、加えて大昔に大規模な儀式が行われた場所であるため、世間からは聖域と呼ばれている場所だ。
「そぉらああ!」
ガギイィイン!
再び波が立つ。
波の中心には二人の戦士がいた。
互いに互いのことは知らない。
「お、受けるか。やるなぁアンタ」
「そっちこそ…ね!」
キイィィン!と、お互い距離を取る。
「っはは!久々に強いやつと戦れて嬉しいぜ!」
「そお?じゃあ、もっと強い技、いくわよ!」
例え素性を知らなくとも、相手の使う武器さえ解れば他は知るだけ無駄。
この世界の戦士達は、皆そう考えている。
*
「あんなの反則よ…はぁ」
「そう落ち込むなって、な?名前はラシュだったか」
「そうよ。あなたはトモ…だったわね」
戦闘を終えた二人は、聖域から少し離れた所にある森林の切り株に、背中合わせで腰かけていた。
「ま、最後にあのスキルを使ったのが運のつきだったな」
ラシュと呼ばれた女剣士の手には片手剣が握られている。
彼女はあの時、この鎌使いであるトモにむかって遠距離からの突スキル、『ジャッジ』を放ったのだ。
ジャッジは、簡単に言えば『相手の懐にに飛び込んで突く』というものである。
「あそこで普通に避けるか受けるかしてくれればいいのに…」
溜息。
「ちゃんと避けただろ。…ああいう一発に込めるタイプのやつは基本的に隙がでかいのもわかるだろ?大剣みたいな感じで。あれはスイッチに使うか他のスキルと合わせて使った方がより確実なんだ」
ラシュの言う通り、トモはジャッジを避けても受けてもいない。
ある意味では避けてはいるが、その避け方が普通ではなかった。
「あのね、あんたがジャンプで避けてればまだ可能性はあったわよ。あれも一応軽い方向転換ぐらいはできるし」
「ならそうすればよかったじゃんか」
「当たる直前に消えられたら何も出来ないわよ!何したのあの時!」
大声。トモは鬱陶しそうな顔をして耳を塞ぐ。
そう。攻撃が当たる瞬間、トモはラシュの眼前から唐突に消え、直後にはラシュの背後で反撃の構えをとっていたのだ。
「うるせえ、教えねぇよ」
耳から手を放す。
そして、さてと、とトモはラシュの前に立った。
「な、何よ」
「この世界の戦士が負けたら何をするか、まさか知らない訳じゃないだろ?」
先程の顔とは一転、戦いに生きる戦士の顔だった。
「……そうだったわね」
ラシュも立ち上がる。やはり戦士の顔だった。
「じゃあ、早く殺しなさい」
悔しさと信念の混ざった声でそう言った。
はっきりと。