家出少年少女
♂×♀のお話ですが、♂×♂の要素を含みますので、ご注意下さい。
又、ほんの一部、遠回しではありますが、性的描写もあります。
あくまでも『純愛』を描く事を目的としておりますので、ご理解下さい。
電車を降りると、そこはまるで異世界―――。
つい数時間まで当たり前の様に見ていた近代的な建物や派手な看板は無く、更には人影すら見当たらない。
在るものと言えば、古めかしい体裁の家が数件と、豊かに広がる緑だけ。
くたびれたジャージに、ショルダーバッグをぶら下げただけの格好の今の俺にはピッタリの風景じゃないか。
そう自潮してみるが、『都会人の誇り』は拭い去る事が出来なくて―――。
俺はお気に入りの服や本も、友達も、学校も、思い出も、親も、そして『女』も捨てて来た。
そしてバッグに詰めて来たものは、夏休みに必死にバイトして貯めた12万円と、『男』として生きる決意だけ。
衝動的に家を飛び出して此処まで来てしまったが、何処かへ行く宛等ない。
只その時は、『現実』から逸早く逃げ出したかったんだ。
無鉄砲ではあったとは思うが、後悔はしていないし、これから先もしないだろう。
理由は無いけれど、そんな気がする。
緑と土の匂いがする爽やかな風が頬を撫で、鏡も見ずに切った不揃いな髪を揺らす。
大きく息を吸うと、妙に田舎へ来たと言う実感が湧いて、予想も付かない未来への期待が広がる。
取敢えず、ブラブラしてみるか。
俺は未知の世界へと一歩踏み出した。