脱出ゲームにおける絶対死ぬ人
私の名は田中……突然だが私は何者かの罠にはまり、なにもない部屋で意識を取り戻し、私と同じように気絶させられこの部屋で意識を取り戻した若者4人と部屋からの脱出を試みていた。
「くそっ!あかないぞ!」
「どうすればいいの!」
「いったいどうなってんだ!?」
「ちくしょう!誰が俺たちをこんな部屋に閉じこめやがったんだ!」
まさる(16)ゆうこ(17)けんじ(16)みのる(18)が鍵のかかったドアの前でパニックを起こしていた。
「田中さん……(59)どうすれば?」
「いつだって希望は捨てちゃいかん。なにか脱出する手段があるはずだ……」
「……」
私の重みのある言葉に若者たちは落ち着きを取り戻した。
『諸君……この脱出ゲームのルールを説明しよう……君たちにはこれから……』
『『!?『』
天井に取り付けられたスピーカーから謎の男の声がきこえてきた。
「ちくしょう!『俺たちは金持ちの道楽で始められた脱出ゲームに強制参加させられ、この部屋には毒ガスが少しずつ入ってきており、誰か一人が部屋に残らなければ全員死んでしまう』なんて!」
まさるが大体のことを説明してくれた。
ありがたい。
「誰がのこるんだ!?」
「私はいやよ!」
「このままじゃ全員死んじまうぞ!」
「くそっ!!」
みんなそう言いながらチラチラ私を見る。
私が自ら犠牲になることを望んでいるのがヒシヒシと伝わってくる。
「恨みっこなしのジャンケン勝負ってのはどうだ?」
「ジャンケンか……平等でいいかもしれませんね……」
「恨みっこなし!……最初はグー!……ジャンケンポン!」
4人がチョキ。
私がグーをだした。
「やはりだめだ……人のいのちの順番をジャンケンで決めるなんて……」
「そうね。野蛮よ」
「……」
みんな乗り気じゃなかったか?
私が負けたときも同じことを言ってくれただろうか?
いや、足掻くのはよそう。
ウスウス気づいてる。
私たちは小説かドラマか漫画か……なにかしらの物語の登場人物なのだ。
しかもテンプレの。
若者4人と中年一人……やるしかないのか。
「皆!私がここに残る!私は老い先短い身だ!君たちはまだ死ぬべきではない!早くいけえ!」
「田中さん!ちくしょう!こんなゲームを考えた奴を俺はゆるさねぇ!」
「いやよ!田中さーーん!田中さんのこと忘れない!」
「田中さん……なんとか田中さんも助かる方法……時間がない!いくしかない!」
「よしいこう!」
皆一応は私を気遣ってくれたがすぐ諦めた。
まさるに至っては『よしいこう!』って。
そりゃないよ。
毒ガスが充満してきた。
私は死ぬのか……
できることなら次は少年か少女キャラに生まれ変わりたい。
デスゲームや脱出ゲームで中年が生き残る可能性は0に等しいのだから……
次回のやられ役は『主人公の師匠』編