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騎士様とお馬様  作者: 律子
2/2

2.漫画の夢オチは嫌だけど、今なら許す。

少し間が空きましたが2話目をお届けです。


お気に入りにして下さった方には感謝の気持ちを。

拙い文章ですが、がんばります。

ああ、なんだかすごくいい気持ち。

身体がふわふわしてあったかくて。

冬のお布団の中くらい心地いい。


そういえば冬の布団には魔物が棲んでいると思う、と友人に真顔で言ったら

同じく真顔で手を握り返してくれたっけ。

そんな懐かしいけれどわりとどうでも良い記憶がつらつらと思い出される。

この状態は・・あれだ。

意識が浮上して来て、朝がきたなぁって分かってるけど瞼はまだ重くて

なんとか寝なおそうとしている時のあの感じに近い気がする。



         ─ はよう、出でや ─



ん?・・・・なんか聞こえた??



                   ─ わらわのいとし子 ─



        ─ 目覚めの時じゃ ─



んん・・・・?


 

  ─ はよう─



                  ─ はよう ─



・・・・・えぇー・・?

何?これ、誰の声?女の人みたいだけど・・・。

私は一人暮らしだし、詩織は昨日泊めてないし・・・。


・・・・・・・・・・・・ほんとに、誰?


はっ。


おばけ?おばけさんですか!?

古風な喋り方だったけど、すっごく年季はいっちゃってる系ですか!?

ちょ、まじやめて!お風呂場で頭洗えなくなっちゃう!


い、いや。ちょっと落ち着こう私。

そんな訳ないじゃん。別に金縛られてる訳じゃないし、手足は自由だし。きっと寝ぼけてるんだよ。

浅い夢見の時って変な夢みること多いし。

またコタツ机でそのまま寝ちゃってるんだよ。

目が覚めたらいつもの天井が見えて、いつもの朝の光景が目の前に広がってるはずだよ。


だから、ほら!はやく目を開けるんだ私!


「・・・・・・・・・・え?」


・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

えーと・・・ですね。

結果から言えば目を覚ました私の目の前には真っ白な足が4本ありました。

いえ、人間の、ではなくてですね。多分、奇蹄類の。

平たく言えば馬の。


「・・・・・・・・・・え?」


な、なななななんで!私の部屋に馬が!?

あれ?白馬?白馬って事は王子様が乗ってたりするの?

なにそれコワイ。普通に不法侵入だし不審人物だし。

で、でもちょっと見てみたい気も・・・・しなくもない。

いくら枯れてるって言われても、王子様とかありえないと思っていても・・・

一応私も女子の端くれだった様でほんの少しだけ期待が込められた視線がゆっくりと上へとあがっていく。


『・・・ようやく目覚めたか。今宵の吾子はほんに目覚めの悪い子よのう。』


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


『・・・・・?どうした、口が聞けぬのか。』


「・・・・ええええええええええええええ!!!!!?????」


自分でもびっくりするくらいの音量の声が辺りに響き渡った。

同時に目の前・・いや、上?の相手の顔もびっくりした様な表情になってるのが見えて

なんだかちょっと頭が冷えた。

えっと、驚かせてすみません。

でも多分私の方がもっと!ずっと!びっくりしてると思う。

だって・・・。


「・・・け、け、・・・・ケンタウロス・・・?」


目の前の生き物は上半身は人型で下半身は馬という神話上の生き物とそっくり同じ形を

していたんですよ、奥さん!

あと、付け加えるなら上はとってもグラマーな美人さんでした。


何あの透ける様な白い肌。

そんな同性が見ても思わず目を照れてしまいそうな肢体を覆い隠す様に

肩から流れ落ちるのは白と見紛うばかりの長い長い銀の髪。

瞳の色は・・赤っぽい紫色なのかな?

夕方から夜に変わるほんのわずかな間だけに見られる空の色みたいな不思議な色でとっても綺麗。

月並みな表現だけど鼻筋だって羨ましいくらいすっと通っていて、綺麗な弧を描いた眉は描いたものじゃなく自前なんだろう。

化粧はしていないって一目で分かるのに、唇は紅を付けた様な鮮やかさ。

惜しいのは人間らしい赤味が無いってことくらいか。

血が通った感っていうのかな。

雪女とか実際に居たらこういう感じになるんじゃないかと思う。


なんて、思わずじっくりがっつり見惚れていたら・・・。


『此度生まれし吾子はほんにおかしな子じゃ。

わらわを見て奇声を発したかと思えば今はじっと口を噤みやる』


思いっきり呆れられました。


そりゃそうだ、と恥ずかしさから視線を逸らし佇まいを直そうとした所で

あれ?と違和感を覚える。

・・・・手。・・・・これ、なに。


呆然と自分の手を見下ろす。

いや、それは手と言うよりは目の前にある白い足と同じ「馬」の足に見える。

黒い、艶やかな毛で覆われた・・・足。馬の。


なんで?

なんでなんでなんでなんで・・・・


「・・・・・あ、ぁ、・・・。」


『なんじゃ。ようやっと喋る気になったのかえ?』


最高に訳がわからない状態だけど、呆れる様なけれどどこか優しさを含んだその声は

パニックを起こしそうになっていた私に不思議と正気を取り戻させてくれた。

思わずすがる様にその不思議な姿をした女性へと視線を向ける。


『ほれ、早く何か言うてみたらどうじゃ。』


そこに自分の態度を責める様な色や苛立ちは見受けられず、その事にほっとする。

そして彼女のそんな態度に後押しされるように息をすぅっと吸い込み・・・意を決して口を開いた。


「・・・・・あの・・・・・なんで、わたし、馬になってるんでしょう・・?」


声が少し震えてしまったのは大目にみてほしい。

だって、ありえないでしょ?

私さっきまで普通に人間だったんだよ?

なんで馬なの?

いや、馬自体は嫌いじゃないしむしろ好きなくらいだけど。

馬が出るお祭りがあったら人とか衣装とか神輿そっちのけで馬の写真ばっかり撮ってたけど。

でも別に罰があたるようなことは何もしてないはず!


・・・・本当に訳が分からない。


神様仏様、頼みますから私にどうか夢オチを!


読んでくださり、ありがとうございました。


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