第七話 王都、到着!~3月24日~
あたしは幼い頃から何一つ不自由しなかった。でも、ふと思ったの。
──私はこのままでいいのかしら?
いいはずがない。あたしは家出をした。場所を求め、酒場に入り浸った。でもあたしは所詮、箱入り娘。だから、情報をかき集めた情報屋になった。
「ヘンベル、そろそろだ」
「ん」
昨日から加わったカルツィオーネはトルワード家の娘。ここでそれを言うのはマズい。トルワード家は一家行方不明になり、既に死亡届が元家人により提出されている。だから有り得ない、皆に言われる。
「うへえ、凄いなあ」
「想像していた以上に荒れてますね」
カルツィとミカエルはずいぶんと仲良し。早い。これはまさかの関係になりそうなので放置しよう。
「大丈夫か? フォンテーヌ」
「……(小さく頷く)」
「とりあえず、あたしたちが王都に入るから二人は待機してて。宿見つけたら呼ぶから」
「分かった」
凄まじい有様の王都には門番はいない。代わりに門番らしき骨があるのみ。
「うわ」
驚くのも無理はない。宮殿は完全に消え失せ、周りの建物もなくなって更地になっている。
「情報屋のベルさんかい」
「あ、はい」
「私の宿に泊めてあげよう」
泊めてくれた人は夫が黒魔女と戦い、命を落としたということを語ってくれた。素敵なお話だった。フォンテーヌも珍しくにこにこして聞いていた。
「で、どうするんだ? 俺たちが避難する前より明らかに荒廃してるぞ」
「まとまりがなくって、しかも自己中心的な公爵たちに任せていたら戦争が起きちゃうから国を造ろう! 」
「あ、あのっ、さっき宮殿跡地らしき場所に誰か立ってましたが」
「あ、それ俺も見た」
「フォンテーヌは見えたか? 」
「(静かに首を横に振る)」
「何なの? 一体……」
そのことを聞くとおばあさんはああ、と渋い顔をした。まさか、独裁者?
ところがおばあさんはためいきをついてあれはねえ、と暗い顔で話し出した。
「私たちもよく分かっていないんだよ。未知の生き物って呼んでるけど、攻撃魔術の少ない白魔術では到底かなわないからねえ。現れたのはつい最近だよ」
「と、なるとあたしが最後に訪れた1週間前の後、か」
「……あれに勝たなきゃ無理そうだな」
「フォンテーヌや俺はもちろん無理だ」
「それじゃあ明日までに各自対策を考えてくること! 」
夕食は楽しく、そして賑やかに食べた。美味しいなあ……。




