第三十五話 始まり~26年4月1日~
あれから、肩の傷が治るのを待って彼は行動を始めた。彼は、ベルが黙っていたリュメヒ家たちの戦争について知っていたのだ。なぜわかったの? 、と尋ねたらト・モルの公爵がぼやいていたと答えた。あの公爵、庶民に何バラしてるの。
あのリュメヒ家でさえ戦争をやめるとサインした。これで平和になったはず。
そして今日は戴冠式。国名には、私の名字でもあるトルワードをつけた。私がお妃で、彼が王様。綺麗なドレスにうきうき。
「あまり動きすぎないように」
「カノンさん、別にいいじゃないですか」
「よ、よくないです! 私にまでこんなフリフリのドレス着せておいて! 」
「シウォンさん、顔真っ赤にすると思いますよ」
「っ~! 」
ベルは未だに眠っていた。それでも、手を握れば反応はするし、浅いのではと感じた。皆が死ぬ前に目覚めてくれたら──いや、きっと目覚める。
フォンテーヌにこのまま王宮にいればよいとすすめたものの、辛いからと辞退された。む、無念。
戴冠式後、公爵たちが集まった。私がお世話になったあの伯爵もいる。
「遅れましたわ」
「すみませんね」
「あっ」
「リュメヒ家だからって除外はしないでほしいわ。これからは仲良くしましょうよ」
シェルリナ=リュメヒ──彼女はあの後、酸素欠乏症になったトルトン=スキュードを亡くしたらしい。寂しさが見えないところ、かなりリュメヒ家に心を寄せているらしい。
旦那と仲良くやってきたものの、今ままでの仕打ちからして周りは冷たかった。私も、彼もその場を離れた。
「リュメヒ家は信用できないな」
「そうね」
「で、どうするか? 表では仲良くするか? 」
「当たり前よ。表で仲良くしないと、王失格よ」
私とミカエルはしばらくあの丘でのんびりと過ごすことにした。これから、どうなるのかしら。
いつの間にかうとうとしていた。ミカエルは隣で寝ている。いつまでも、こんな日々が続きますように……。




