第三十二話 作戦
マスターの酒場が営業終了後、皆で集まった。話題は狂った元お妃様のことだ。幻獣のことを話すなり、アリスさんは目をぱちくりしていた。
「何それ、初耳ね」
「アリスさん、それじゃああれは黒魔術を鍛錬すれば使いこなせるものではない、と? 」
「それは分からないけど、私の師匠様が言うには鍛錬も人によって限度があるらしいの。例えば私ならレベルにしたら50ぐらいまでが限度だったわね」
「フォンテーヌは? 」
「そうね……せいぜい30でしょう。幻獣、ねえ。私より二倍強いあの憎き元祖黒魔術師も扱っていなかったから更に強いのかもね」
「え」
その言葉に皆が愕然となる。50の二倍で100? それよりも、強い?
「師匠様と同じレベルか、それより強いのか……どうなのかしらね。ボクとしては気になるね。あ、そうだ。元お妃様の瞳はどうだった? コバルトブルーは健在? 」
「フォンゲルトは見たか? 」
「いや。フォンテーヌは? 」
「──濁ってた。まるで泥沼のような濁った瞳だった」
「リュメヒ家、何かをしたのかしら」
うーん、と皆でうなるがさっぱりだ。リュメヒ家もそれに精通しているのだろうか。
カノンさんが全員分の紅茶と何やら紙を持ってきた。どうやら作戦の紙らしい。
「これ、マスターとお客さんの少ない時間にたてたの。ミカエルとフォンゲルトで攻撃をして、後方援護をカルツィたちに頼むわ」
「わ、私も戦いたい」
「ダメ。今のヘンベルンツじゃ無理。あなたこそ、分かってるでしょ」
「……」
「カノンの言い方はキツイが、ヘンベルンツは後方援護に徹してくれ」
「分かった」
元気がなさそうにうなずくベル。一体、何が?
カノンさんは座らず、そのままカウンターの奥に戻っていった。少々不機嫌のようだ。
「それじゃあ、そういうことで戦おう」
「おーっ! 」
いよいよ最終決戦だ!




