第三話 宮殿放火事件とは
馬車にゆられ、着いたのはフォルツェだった。そこそこ近いが、なぜここに?
「例のことで生き残った伯爵さんがここに一時避難しているというのもあるけど、まずはフォンテーヌたちについて話すわね」
手ごろな宿を見つけ、さっそく部屋に入る。フォンテーヌとフォンゲルドは外にいる。
ヘンベルはベッドに大の字になる(足は閉じてるが)。その横に座る。
「帝国を治めていた人達は宮殿に住んでいたの知ってるでしょ? あそこが燃やされたわけ。ついでに延焼し、王都は廃墟寸前までいっちゃったらしいの」
「フォンテーヌはそこにいたのか? 」
「その日、フォンテーヌは宮殿に、フォンゲルドはお見合いをしに別のところに行っていたわけだけどフォンテーヌは宮殿にいた人で唯一生き残った」
「……フォンテーヌたちってまさか」
「あのドレス見て分からなかったの? フォンテーヌたちは帝国の跡継ぎよ」
「そうなのか……」
「あたし、ドレス見た途端気づいたけれど、あんた仕立屋の息子でしょ? 」
「女性をジロジロ眺めるのもおかしいだろ」
「あ、そっか。ごめんごめん」
豪快に笑い出すところを見る限り、自分が短いスカートをはいていることも忘れているようだ。(足を開いているせいで中が見えそうだ)
「とりあえず何か食べよっか。明日伯爵さんに会えばいいし」
「フォンテーヌたちを呼んでくる」
フォンテーヌたちは外で何かしていた。
「フォンテーヌ、凄いなあ」
「……(笑顔になる)」
「お、くれるのか」
「……(うなずく)」
平和な兄と妹だ。あ、声かけないと。
「ご飯だぞ」
「お、フォンテーヌもお腹すいた頃だし」
「……」
フォンテーヌは車いすにもう一度乗せてもらい、食事場所に向かう。美味しそうな匂いがする。
「うわあ、美味しそう!」
「さ、早く食べて伯爵に会いましょ」
食べ終わり、豪勢な屋敷に向かう。
案内された応接間のソファに座る。一時避難の割には豪勢な所だ。
「やあ、こんにちは」
「この人はウェルズ伯爵。新しい情報はあるかしら? 」
「ああ。黒魔女が原因のようだ」
「黒魔女? 」
話についていけない。ぼうっとしていると、フォンゲルドが立ち上がった。
「まさか、お父様が処刑するよう命じた黒魔女が生きているのですか!? 」
「黒魔女は不死身だ。ある村では火炙りにされていた黒魔女がその火を使い、村を滅ぼした」
「そんな」
「……お父様の作戦が、ダメなのは、分かっていた」
フォンテーヌが静かに呟く。
「って喋った!? 」
「あらー」
「フォンテーヌ、それじゃあどうして……」
「……」
一枚の紙をフォンテーヌは差し出した。
「『黒魔女は死ぬべきだ。しかし、不死身のようだ。火炙りすればよいかもしれない。王に相談しよう』この字は大臣……」
「つまり、無反か」
ううむ、と伯爵はうなった。黒魔女?本当にいるのか?
「黒魔女って本当にいるんだなー」
「大騒ぎになったの知らないの?」
「平民だぞ」
「むう」
伯爵夫人がやってきて紅茶をくれた。飲めないからどうしようか、としてるとヘンベルも困った顔をしていた。
「まあ帝国は仕方ないとして、そこの世継ぎはどうする気だ」
「フォンテーヌと話し合ったのですが、心に負った傷が深くて……誰かが建国するのを待つばかりです」
「そうか」
「じゃあ、俺が最高の国をつくる」
俺はにかっと笑った。




