第二幕 因縁の対決
「おや、お帰り。そちらの方は? 」
「お友達ー」
「そうか。メイドにお茶を用意してもらうよう言ってきなさい」
「はあい」
王女がいなくなると彼は顔を歪めた。空気がよどむ。間違いない、こいつは──。
「黒の魔術師・カーソン! 」
「くくっ、流石だねえ。真逆の位置にいるアリスハイデア」
「なぜあなたが生きてるの!? あなたは死んだはずでしょう? 」
「何を言い出すんだ? あの戦いの後、赤の魔術師は死んだよ」
「なっ……」
彼とボクは昔から因縁がある。このパントム帝国の王子として生まれながら黒に染まり、赤の魔術師やボクこと白の魔術師と戦った。ボクは赤の魔術師と共にカーソンを殺した。
それなのに、この男はその弟ではなく、カーソン自身。魂だけではないことはよくわかる。火傷のあとが首元にある。
「くくっ、君は本当にバカだねえ。見ていて本当に楽しいよ。なに、あいつが手加減したのも当たり前だよ。あの赤の魔術師は俺様に惚れていたんだからなあ! 」
「……! 」
「信じられないだろお? そりゃそうだよなあ! くくっ、ははっ! 」
「き、貴様っ……」
「おや、お目覚めかい? 白の魔術師さんよお! 」
赤の魔術師は、絶対に黒の魔術師に惚れないと豪語していた。だからこそ私の意見に賛成したはずだ。そう、そのはずだ──。
「今にでも戦いたい気分だなあ。そうだ、闘技場に行こうじゃないか、くくっ」
「ああ、望むところだっ! 」
「今度こそ殺せるかなあ? 」
だが、攻撃系魔法を持たない私には反射しか使えない。つまり──。
「勝てるわけないがなあ、まあ大人しく負けを認めろよ、負け犬」
「──」
私は何にも言えなくなってしまった。白魔術はこういう時不便だ。
「お父様……」
「おや、王女か」
「──あの時はよくも殺してくれたわね。人の想いを踏みにじって」
「あ、赤の魔術師!? 」
「ちょっと小さいけど、借りさせてもらうわ。この体なら傷をいれるのは不可能でしょう? 」
「っ──」
王女にのりうつる、大胆すぎるがすごい技でもある。さすがだ。
「さあ、行くわよ! 消え失せろ! 」




