第二十話 復活~4月25日~
「ミカエル! やっと、目覚めたの!? 」
「ううっ、心配だったよぉ~」
「二人とも落ち着けよ……」
ミカエルが遂に目覚めた。傷が深いため、しばらくはマスターが面倒をみてくれるらしい。
泣きじゃくるあたしたちにため息をついたマスターはフォンゲルトに向き直った。フォンテーヌについての話があるとか。
「フォンテーヌには呪いがかかっているようだ」
「なっ、お前はなぜその呪いを他人に話さなかったんだ!? 」
「……フォンゲルトお兄様には心配かけたくなかった」
「でもよ……」
「いつも、迷惑かけているんだもの。別に痛くない。歩かなければいい話」
「──リリがかけた、ということは」
「安心しろ、ミカエルは無事だ」
「ボロボロだけどなあ」
やれやれ、と首をふるミカエル。諦めたのに、諦めたのに……。おさえないと。
「で、誰に撃たれた」
「シェルリナ」
「やっぱりな」
「分かってるなら聞くなよ! 」
マスターは私達のためにティーをいれてくれた。上質なものかな、とてもいい香りがする。
マスターはイスに座り、今後について話し出した。
「今後だが、ミカエルがきちんと動けるようになるまでかなり時間がいる。夏の間に完治すればいい方だ」
「そ、それじゃあその間に何を……」
「確か、そのカルツィオーネって子は家族を捜してるんだろ?なら丁度いいじゃねえかよ」
「で、でもリュメヒ家が関与してて……」
「頑張って捜そうじゃねえかよ」
マスターはトルワード家の資料を取りに奥の部屋に行った。
あたしたちはその間にティーを飲む。カルツィはミカエルに飲ませている。見ないことにしよう。
「トルワード家の人、今のところ死亡届はカルツィ含めて5人出されている。まず当時の公爵・ミルダ。家人曰く、必死に家族を守っていたとのこと。次に当時の公爵夫人・ユリナ。彼女は子供をかばっていたとのこと。最後に3人の子供たち。カルツィはたまたま村から戻ってきていたようだが、他の二人は上手く逃げたかもしれないが行方不明」
「──リュメヒ家は、怖い」
突然フォンテーヌが呟いた。──宮殿の火災を思い出す時以上におびえている。
「お父様と、よく喧嘩していた」
「それも闘技場で、な」
「え……」
「お父様はいつも、ボロボロになりながら、書類に、サインを……」
「フォンテーヌ、キツいんだろ、大丈夫だ。もう話さなくていい」
「……うん」
リュメヒ家はそんなことまで。あたしは許せない。
「この国の範囲は俺が捜すから、ヘンベルンツは隣国を捜せ。海の向こうは──カノンに捜してもらう」
「俺は? あと、カノンって」
「カノンは私です。あなたはフォンテーヌさんの呪いをといてやってください」
「俺の妻だ。宮殿で知り合った諜報員ですごい無愛げふっ」
「さっさと捜しましょう。お留守番はカルツィオーネさんに任せます」
「はい」
にこりとも微笑まず、カノンさんは淡々とすすめていった。
新キャラ・カノン。無愛想だけど結構可愛いですよ。




