第二話 仲間集め
しかし、どこに行けばよいのだろうか。姉さんに聞こう。
姉さんは店先でお客さんの対応をしていた。すっかり看板娘ね、と母さんはいっていた。
「姉さん」
「ありがとうございます。──ミカエル、どうしたの? 」
しっかり対応を終えた姉さんに声をかけると疲れているはずなのに笑顔で応えてくれた。
「国をどうにかしたいんだ」
「へえ。仲間、集めないと厳しいよ? 酒場行けばそれなりにいるんじゃないの? 」
「あ、うん。分かった。ありがとう」
酒場か。公爵曰く、17にならないと酒はダメらしい。でも酒場は情報交換の場として使用してもよいとか。
「ええと、酒場は……ここ、か」
酒場は中心街にあった。ここになら同士がいるはずだ!
「おう、いらっしゃい」
ムキムキのマスターにドン引きしつつ、奥に行く。
「王都最新ニュース! 王都は荒廃しつつあるんだってさ」
「まじかよ、ヘンベルちゃん」
「さっき手に入れたニュースよ」
声がやけにデカいヘンベルという少女が目に入った。彼女はどうやら情報通らしい。
「あら、見ない顔ね」
彼女の方から話しかけられた。身なり的にそこそこの家の娘かな?
「今日は帝国が滅びたから国をどうにかしたいなあって思って仲間集めしに来たんだ」
「ふうん。あんた、仕立屋のお坊ちゃんでしょ? 」
「……そうだ、仕立屋の息子だ。ミカエルという」
「へえ。あたしより身分は低いけど気に入ったわ」
「……? 」
「あたし、公爵の妹」
「公爵ならさっきまで僕と仕立屋で話をしてましたが、公爵に妹が……」
「そりゃあ話したがらないよ? ヘンベルンツ=ト・モルを嫌ってるから」
理由は何となく分かった。公爵はオシャレなほうで、このように女性のオシャレにはうるさいのだろう。ヘンベルは公爵が望むレディの格好ではない。スカートも髪も短いし、何より言葉使いが問題だ。
「早速だけど、あたしの仲間・フォンゲルドとフォンテーヌ」
「よろしく!フォンテーヌは喋らないが、まあよろしくな」
「はい」
ヘンベルはニコリと笑ったかと思ったら青ざめた。え、何が…。
「ベルンツ! 何してるんだ! 」
「ちょ、お兄ちゃんこそ」
「今日はちゃんと帰ってこいと言っただろう! 」
「む、だって……」
目の前で始まった兄妹ケンカにうんざりしてしまう。酒場の他の人達はまたか、という顔をしてひそひそ話している。
「いつもこうなんだ。ベルは家に帰ったらあの格好していられないからな」
「あたし、帝国が滅んだ理由も知っているの、だから救えるもん! 」
「っ……」
フォンテーヌが突然震えだした。すると、ヘンベルはあ、と言って謝った。
「ごめんね、フォンテーヌ。嫌なこと思い出させたりして」
「……」
静かに首を振るフォンテーヌ。そして、公爵はいつの間にかいなかった。
「ふう、さあ行きましょ。そろそろ行かないと馬車に乗り遅れちゃうわよ」
「あ、ああ」
とてもよい仲間を手に入れた。




