第十二話 再会~4月5日~
「ふう、こんな風に休憩もいいなあ」
「(うなずく)」
「フォンテーヌ、サンドイッチ美味しいぞ。食べるか? 」
「………うん」
笑顔で食べるフォンテーヌを見ると癒される。もう少し頑張らなくちゃな。
王都の南側にある小さな丘。この辺りは自然豊かで、ネリーと何度もピクニックをしたものだ。──リリはそういうのは庶民のすること、と偏見の目で見ていたが。
宿のおばさんのサンドイッチとともにフォンテーヌとピクニック。たまには車椅子からおろしてやろうと思ったこともここにきた理由。
「本当に、美味しいね」
「だろ? おばさん、料理上手だよなあ」
笑顔のフォンテーヌは久しぶりに見る。いつも悲しそうな顔をしていたからな……。
ところが、その空気を乱す者が現れた。髪型は変わっていたが、リリだ。
「あらあら。あいかわらずやることは庶民なのね。そんなんだから本当に庶民になるのよ。あ、でも今は庶民以下だっけぇ? 」
「何しに来たんだ? お前はこういう場所、嫌いだろ」
「あなたに会いに来ただけよ。リュメヒ家の邪魔をしているようだから。殺されたくないなら身を引きなさい」
「……ミカエルはリュメヒ家のような国づくりはしない。例え殺されても構わない」
「あら、そう。知らないわよ~もう忠告なんてしないからねぇ? 」
リリは去っていった。リュメヒ家と手をくんだのか。あの、リュメヒ家と。
「フォンテーヌ、大丈夫か? 」
「……」
「安心しろ。俺がついてるからな」
「……ありがとう、お兄さま」
震えるフォンテーヌをぎゅっと抱きしめた。しばらくして震えがおさまったようなので、離してやる。
しかし厄介だ。リュメヒ家はしつこくこちらに絡んでくる可能性がある。それは避けたい。
リュメヒ家は特殊部隊を持っている。普通の武器ではなく、変わった武器で攻撃するという。帝国の軍人全員でもかなわないぐらい強い。
「とりあえず、このことを報告しないとなあ」
「……その前に、サンドイッチ食べよう」
サンドイッチをきちんと食べ終わり、宿に駆け足で戻る。フォンテーヌは車椅子にしっかりつかまっていた。
宿の一階のフリールームに入ると、ヘンベルがいすに座って何やら読んでいた。
「おう、お帰り~」
「ヘンベル、皆を集めてくれ」
「う、うん? 」
しばらくするとカルツィとミカエルが仲良くやってきた。こいつら結婚しろよ……。
「大変なんだ、リュメヒ家とリリが繋がった」
「それで? 」
「邪魔をするなら殺すって……」
「そんな……」
「リュメヒ家って特殊部隊持ってる怖い奴らだよな? 早くどうにかしないと……」
「そうだね……」
ヘンベルも考え込んでいた。しかし、すぐにうん、とうなずいた。
「一度戦いを挑めば? 」
「はあ!? 」
「……無理、かな」
「無理だ」
俺たちはリュメヒ家の動向をうかがいつつ、行動することになった。




