第十一話 告白
夕食の時間までもうしばらくあったので、ミカエルを部屋に残し、少し散歩することにした。
フォンテーヌにはまだ言えていないことがある。それは──リリに殺されかけたということ。
宮殿が炎の海になっていることを聞いた俺はあの日、すぐに戻ろうとした。すると──リリが後ろから抱きついてきて、刺したのだ。そしてあの言葉。意識を失い、倒れた。誰かが助けてくれたのだが、よく分からない。キズは今でも痛む。
「あっれ~? 何してんの? 」
「ヘンベル、お前こそ」
「ふっふっふ……瓦礫の片づけよ、片づけ! 」
後ろから現れたヘンベルは相変わらずミニスカ。それに今日は腕まくりをしている。
「宮殿近くのものが吹っ飛んできたのか……」
「みたいね。で、フォンゲルト? 何していたのか教えてよ」
「別に。夕食まで散歩しようかと」
「あっはっはっ! それじゃあただのおじいさんじゃん! 」
「……俺がリリに殺されかけたということ、信じるか? 」
「へ? 」
笑い疲れたヘンベルがきょとんとした顔で俺を見る。やはり、か。
「──さっき、トルトン大臣と同じく大臣だった人の娘さんがフォンゲルトを介抱したって聞いたけど、まさかねえ」
「はあ!? 何調べてんだよ! 」
「傷を抉ったのなら謝るけど。『わたし、幼なじみなのに。なのに忘れられていたようなんです』って泣いていたわよ~? ネリーちゃん」
「ネリーが……俺を……」
初恋の相手であるネリーは、トルトンが大臣になるまで優雅な暮らしをしていたらしいが、俺が10歳の時だろうか。ネリーはいなくなった。トルトンが大臣になったのもその頃だった。
屋敷にたどり着くと、ネリーは庭園にいた。俺を見て顔を明るくした。
「覚えていたの? 」
「もちろんだ」
「……私、待っていたわ。でも、まだ戦うんでしょう? だから、もう少し待つわ。待っているから」
「ネリー、寂しい思いをさせてすまないな」
ネリーをぎゅっと抱きしめた。




