第一話 立ち上がろう、今!~25年3月23日~
ト・モルの大きな仕立屋でもそのニュースは駆け回っていた。大きな軍隊であちこちの土地をけちらせていったというデビジャアール帝国が滅亡。ト・モルは領主がいるものの、その上がいない状態になった。
「これは困りましたよ」
「で。領主さんはなぜここで落ち着いているのですか」
「家にいると子供たちがうるさいんだ。嫌なんだよ」
「そうですか」
「ハロイドなんか5歳だ、一番うるさい」
「ウエイトくんと同じ年ですから、リュメヒ公爵も同じくらい嫌だと思いますよ」
「そうかい? 」
「ええ、まあ」
公爵は最近このとおりだ。少し、真面目な話をしよう。
「帝国が滅びたのはなぜなんですか? 」
「よく知らないが、軍隊に裏切り者がいたらしい」
「なるほど」
「新しい国を誰かが作り直さないと危ないな……」
「……決めました、僕、王都に行きます」
「な、なんだと」
公爵は隣の国を恐れている。なら打ち勝とう!
「王都にはかなり時間かかるし、まだ情報もない。そんなところに小綺麗な君が行けばどうなる? 荒れ果てているのならきっとキツい視線しか送られないだろう」
公爵の一言に唖然とした。確かに、そのとおりかもしれない。
「それじゃあ、仲間集めます」
「そっちの方がいい」
僕は早速、荷物をまとめることにした。




