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もう絶望する必要なんて・・・無い!・・・かも?

 side 008番(赤嶺黒兎あかみねこくと


(彼は頭のネジが飛んでいるのか・・・?)


 俺は唯ボンヤリと考えた。あのように犯行的な態度でいたら、どんな目に合わされるか分かったものではないというのに・・・。


(俺たちはこれから一生、ペット以下の家畜として生きていくのが定めなのに・・・)


 俺たちの前に立ち塞がった少年。黒髪と黒い瞳から見れば、彼も転生者なのだろう。だが、転生者は全員『牧場』で生まれる筈だ。『牧場』で生まれ、育てられ、売られていく。『羽根付き』としてこの世界に転生した人間の運命だ。変えることは出来ない。


(なのに、何故彼は絶望していないんだ・・・?何故彼の目は怒りに満ちているんだ・・・?)


 俺はこの世界に生まれてから数年で、抵抗する事の無意味さを嫌というほど味わった。元の世界では無かった、『羽根付き』としての超常の力も、彼らの操る魔術には手も足も出ないのだ。そもそも、あの少年は何故『隷従の首輪』を装着していないのかが分からない。一度装着したが最後、主人の命令を絶対遵守させる力を持ったこの首輪は、どんなことをしても外せない筈だが・・・。


「逃げて・・・。」


 ボソリと、俺の隣にいた女が言った。確か、<<017番>>だったか。俺たちに名前などという上等な物は与えられない。毎度、出荷されるときに一人一人に番号を付けるくらいだ。


(しかし、馬鹿な女だ。今の呟きを聞かれたらお前も拷問されるぞ・・・)


 幸いにして俺以外には聞かれなかったようだが、もし奴隷商人達に聞かれていたらと思うとゾッとする。腕や足ををもがれるか、全身を炎で炙られるか・・・そして、死なない程度に治癒魔術をかけてくるのだ。


 あの少年も、反抗などしないで、大人しく捕まればいいのだ。抵抗すればするだけ、後が苦しくなるだけなのに・・・。


 あの少年は、下を向いてブツブツ言っている。きっと、恐怖で頭が変になったのだろう・・・と、その時の俺は考えていた。だが・・・


「助けるさ。今度こそ、あいつを助けてやるよ!!このクソッタレな世界の神様とやらをぶっ殺して、全ての『羽根付き』を救い出す!」


 彼が突然顔を上げたかと思うと、恐ろしい程の殺気が叩きつけられた。


「俺は、この世界をぶっ壊す!!!」


「・・・く、は・・・っ。」


 それは、心臓が止まりそうになる程の恐怖。現に、何人もの人間が尻餅をついて冷や汗を流していた。


「な、何だ・・・あいつは・・・・・・?」


 『奴隷は主人から許可を与えられない限り、勝手に喋ってはいけない』というルールを忘れてしまう程の衝撃だった。あの殺気は俺たちに向けられているわけじゃないのに、この重圧プレッシャーは何だよ・・・?


 だが、俺は恐怖とは別の感情も抱いていた。


「あいつなら・・・。」


 彼なら、このどうしようも無い世界を、どうにかしてくれるんじゃないかという期待を、俺は抱いてしまった。この世界に生まれてから、初めて感じる希望に、俺は知らず知らずの内に涙を流していた・・・。



★side 翼



「何だこいつは!?糞、囲め!囲んで殺せ!」


 俺が叫んだ直後、リーダーらしき男が司令を出し、その声で我に返った男たちが俺を囲んで来た。


『多分、奴隷商人が雇った冒険者だね。』


(成程、商人は冒険者に守られている、あの太ったジジイってことか・・・)


『彼らは魔術も使ってくるよ。一撃でも当たると致命傷だ。』


 冒険者共は、前衛が俺を剣で牽制しながら、後衛が呪文らしきものを唱えている。


(どうすればいい?)


『今の君の身体能力は、この世界でもトップクラスだ。肉弾戦に持ち込めば勝てる筈だよ。』


(簡単に言ってくれるな・・・)


 思わず苦笑いしてしまう。そもそも俺はインドアなオタクで、喧嘩ですら数える程しかしたことがないのに、ぱっと見20人はいる冒険者を倒せだと・・・?


『でも、出来なければ彼女を助けることは・・・』


(分かってる。これは試練だ)


 こいつらを倒さなければ、俺に未来は無い。転生したばかりで死んでたまるかよ。


「あいつを助けるまで、死ぬ訳にはいかねえんだー!」


 俺は、前方で剣を構えて俺を牽制している男の方向へ走ろうとした。すると・・・


「・・・え?」


「お?」


 次の瞬間、ドガ・・・!という音がして、俺はその男に衝突していた。


「わああああああ!?」


「「「ぐえ・・・!?」」」


 そして、その男と、後方に控えていた数人は、数メートルも吹き飛んだ。


「いててて・・・。何でこんなにスピードが出るんだよ・・・。」


(本当は敵の寸前で止まってから殴る気だったのに、気がついたら衝突してたな・・・。しかし、あんな速度でぶつかったのにあんまり痛くない。怪我も無いみたいだし、本当に身体能力向上してんのな)


 このスピードに慣れるには、少し時間がかかりそうだ。


「お、おい、どうなってんだよ?何だ今の!?」


「分からねえ・・・。もしかして、身体能力を向上させる『羽根付き』か!?」


「はあ!?羽なんて見えなかったぞ・・・!?」


 今ので敵もかなり混乱してるな。今のうちに!


「オラァ!」


 また鈍い音がして、人間が吹き飛んだ。


「・・・ヒッ・・・・・・。」


「撤退するなら見逃してやる。・・・ただし、そこの人たちは置いて行け。」


「く・・・そ・・・・・・!覚えてろよ!」


 残った敵は仲間を担いで逃げ出した。見事な逃げっぷりだな・・・。 

切りどきが分からない

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