翼人奴隷開放戦争
side ファン王国国王ファン11世
・・・半年だ。最初の『牧場』が襲撃されてから半年で、世界の情勢はすっかり変わってしまった。
我が国を含めて5ヶ国の『牧場』11箇所が、『羽根付き』共に蹂躙された。
我々も、『牧場』の警備を今まで以上に厳しくした。時には、軍の一部隊を使用してまで警備したのだ。
・・・だが、敗北した。奴らは風のように現れて風のように消えていく。次にどの国の何処の『牧場』を襲うのかが分からないのだ。人数も膨れ上がっている筈なのに、奴らの本拠地すら掴めない。一体、何処に潜んでいるというのだ・・・・・・。
俺は頭を抱えるばかりだった。他の国でも状況は一緒だろう。今、俺たちは人間の国同士で戦争をしている場合では無くなってしまったのだ。
「どうにかして、奴らを殺さなければ・・・・・・!!」
そう思った瞬間だった。
バタバタと廊下で音が聞こえたと思うと、ノックもしないで兵士が走り込んできやがった。
「こ、国王陛下!」
「お前、俺の許しも無しに部屋に入るとは・・・余程死にたいらしいな?」
だが、その兵士は俺の脅しに屈するばかりか、謝罪もしないで窓を指さす。
「外を・・・外を見てください!」
そのあまりの必死さに、何事だと思いカーテンを開けた。・・・するとそこには
「・・・・・・何だこれは・・・!?」
誰も彼もが空を見上げている。街の住人も、城の兵士や文官も、全員がだ。そして、その原因は、空に映る一人の男だった。
『この世界の皆、聞いているか?』
黒髪に黒い瞳・・・間違いない。『羽根付き』だ。今、世界を脅かしている元凶。
『今日は、この世界で生きる全てに、報告することがある。』
そのガキは、まるで芝居でもやっているかのように大袈裟な動きで、両手を広げ叫んだ。
『俺たちは、俺たちの国を作った!!』
「な・・・っ!」
それは、俺を・・・いや、この世界の人間全てを驚愕させるのには十分なインパクトを持つ言葉だった。
「『羽根付き』が・・・国を作っただと・・・?『羽根付き』の分際で・・・!?」
怒りがフツフツと湧いてくるのを感じる。最近は、こいつらのせいで寝不足だし、しょうがないだろう?
『そして、もう一つ。・・・これからは、俺たちを『羽根付き』と呼ぶのを止めて貰いたい。俺たちは、これから『翼人』を名乗り、”翼人国家日本”を建国するのだから!!』
そいつは、そこで大きく深呼吸をして・・・
『我々の目的は、この世界で不当な扱いを受けている『翼人』全ての開放だ!・・・我々と争う気が無い国家は、今すぐ仲間を開放し、翼人奴隷制度事態を廃止することだ!一ヶ月後、仲間を開放していない国家に対し、無差別に攻撃を開始する!』
トンデモナイ事を宣言しやがった。
『我々は、仲間がどうなっているのかを知ることが出来る能力を持っている。・・・もし、この話を聞いた後で、『翼人』に不当な暴力などをしている人間が居れば、直ぐに分かる。そうなれば、一ヶ月の期限を待たずに、攻撃する。』
男は、広げていた両手を下ろし、笑いながら言った。
『さぁ・・・始めようか・・・・・・!”翼人奴隷開放戦争”を!!!』
やっと本編です